2023 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanism of action of cancer chemopreventive agents and its application to neurodegenerative diseases: Focus on inflammation
Project/Area Number |
22H03331
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
村田 真理子 三重大学, 医学系研究科, 教授 (10171141)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
及川 伸二 三重大学, 医学系研究科, 准教授 (10277006)
翠川 薫 鈴鹿大学, こども教育学部, 教授 (20393366)
有馬 寧 鈴鹿医療科学大学, 医療科学研究科, 教授 (30263015)
小林 果 三重大学, 医学系研究科, 講師 (70542091)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | がん / 炎症 / 神経変性疾患 / 化学予防剤 / タウリン |
Outline of Annual Research Achievements |
悪性新生物(がん)は1981年から40年にわたり、わが国の死因の第一位を占め、また、神経変性疾患、特にアルツハイマー病を含む認知症は、超高齢社会の進展に伴い、重大な社会問題である。がんや神経変性疾患などの生活習慣病の様々な病態は慢性炎症を共通の基盤としている。我々はがん化学予防剤が炎症関連発がん動物モデルにおいて、がんを抑制することを見出している。炎症性大腸炎-大腸がんモデルであるアゾキシメタン (AOM)およびデキストラン硫酸ナトリウム (DSS)をC57BL/6マウスに投与し、大腸がんの発生をアミノ酸の一種であるタウリンや生薬甘草の主成分であるグリチルリチンの投与で抑制することを見出している。興味深いことに、この炎症関連発癌モデルにおいて、脾腫を伴うことを我々は見出している。グリチルリチンはこの現象とともに免疫細胞の挙動にも影響した。現在、この研究成果を国際学術雑誌に投稿中である。我々はタウリンが炎症抑制を介してがん化学予防剤として作用することを大腸がんに加え、上咽頭癌でも示してきた。老化細胞は「細胞老化関連分泌形質(SASP)」を帯びて炎症反応が亢進することが明らかになりつつある。老化促進マウスSAMP8を用い、アルツハイマー病様の神経変性疾患病態がタウリンにより抑制されることを見出し、TREM2を介したマイクログリア機能の改善が作用機構である可能性を示し、国際学術雑誌にて報告した(Scientific Reports, 14, 7427, 2024)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々はタウリンが上咽頭癌を抑制し、がん抑制遺伝子p53はBeclin1と相まってアポトーシス細胞死あるいはオートファジーに影響を与えることを見出した。がんと神経変性疾患は加齢や環境要因により惹起される炎症を共通の基盤として細胞傷害・DNA損傷という共通経路を有する。我々は、老化促進マウスSAMP8を用い、高齢マウスでの海馬および側頭皮質におけるマイクログリア数や炎症性サイトカイン発現、病的老化の指標となるリン酸化タウやアミロイドβなどについて検討した。その結果、対照群と比べ、タウリン投与群では、これらの指標が優位に低下し、改善が認められた。一方、神経細胞マーカーであるNeuNは対照群で低かったものが、タウリン投与により増加し、タウリンの細胞死抑制効果が示された。がん化学予防剤が神経変性疾患にも応用できるかを、脳神経系機能と神経細胞傷害に対し化学予防剤が有効であるとの成果をしており、概ね順調に研究は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
1) ヒト培養細胞を用いた がん化学予防剤効果の検出:ヒトがん由来細胞株およびヒト不死化正常細胞株を化学予防剤で処理し、また、オートファジーの誘導剤・阻害剤やアポトーシスの誘導剤・阻害剤を用い、MTTアッセイにより細胞増殖能を測定する。培養上清および細胞中のDAMPs 、炎症性サイトカイン等を測定する。オートファゴゾーム検出プローブを用いてオートファジーを蛍光顕微鏡にて検出する。 2) 炎症関連組織の免疫組織化学的解析: 動物実験により得た炎症関連がんの組織標本を得てパラフィン切片を作製する。免疫組織化学染色法にて、炎症マーカーおよびDNA損傷マーカー8-ニトログアニンや8-oxodGの生成部位を解析する。 RAGEおよびDAMPsの抗体を用いて炎症とDAMPs-RAGE経路との関係を検討する。オートファゴゾーム関連タンパク (p63, LC3)によりオートファジー、 caspases、BAX、Bcl-2などによりアポトーシスを評価する。 3) 老化促進モデルマウスを用いた化学予防剤の老化抑制効果の検討:老化促進マウス(SAMP8)に化学予防剤を投与し、一定期間観察する。ローターロッドテストなどにより、運動機能障害を評価し、化学予防剤の有効性を評価する。血液試料を用いて、サイトカインプロフィールについて測定する。筋組織を摘出し、免疫組織染色法を用いて各種分子を検討する。
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