2022 Fiscal Year Annual Research Report
柔軟体幹を介した前後非対称な腕振りで生じる床反力中心の左右移動が生み出す歩行機能
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22H03673
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
田熊 隆史 大阪工業大学, 工学部, 教授 (40437372)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青井 伸也 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (60432366)
大畑 光司 北陸大学, 医療保健学部, 教授 (30300320)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ヒト上半身 / 腕振り運動 / 体幹捻り / 床反力中心 / 二脚歩行 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はヒト上半身の運動に着想を得て,能動的な腕振りと受動的な体幹の捻りが床反力中心を左右に揺動することを数理モデルおよびロボットを用いた実験により示し,ヒトの運動においてもそのような現象が発生するかを観察するものである.また床反力中心が左右に揺動することを用い,脚を前後に振り出すことで,上半身の運動により歩行を促進できることを示すものである.2022年度は研究の初年として,これまで開発してきたロボットを改修して床反力中心を正確に測定できるようにした.またシミュレーションを構築し,体幹関節の粘弾性などの条件を様々に変更し,運動を観察した.ロボットを用いた実験については数理モデルと同様体幹関節軌道と床反力中心の水平方向の軌道が逆位相の関係になっていること,また推定した粘弾性を数理モデルに代入した際の体幹および床反力中心の軌道とロボットの軌道がほぼ一致したことを確認した.シミュレーションモデルを用いた観測では,様々なパラメータ値において床反力中心および体幹関節の周期的な運動が数理モデルと一致することを確認した.ヒトの運動観察では,研究分担者が所有する測定装置を用いて,能動的な腕振りと受動的な体幹の捻りにより床反力中心がどのような軌道を描くか測定した.その結果,ロボットの実験と同様,床反力は左右に周期的に揺動することを確認した.ただしロボット実験やシミュレーションで見られたような,体幹関節軌道と床反力中心の水平方向の軌道の逆位相の関係は観察されなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は本研究の目標としていた,数理モデルで得られた知見をロボットにより検証することができた.ロボットによる実験により,数理モデルで予想したとおり直立姿勢における前後非対称な能動的腕振りと受動的な体幹捻りにより床反力中心の水平方向が揺動することを確認した.またシミュレーション上でモデルを構築することで,実ロボットでは難しい幅広い範囲の体幹関節弾性において体幹関節軌道および床反力中心の水平方向の軌道がどのように変わるかを観察することが出来た.観察の結果,こちらも数理モデルで予想したとおり体幹関節軌道と床反力水平方向の軌道が逆位相になっていること,弾性および腕振りの周期(周波数)を変更するとこれら二つの位相がシフトすることを確認することができ,数理モデルの妥当性を評価することができた.ヒトの運動計測においても数理モデルやロボット,シミュレーションと同様,能動的な腕振りにより床反力中心が左右に揺動することが確認された.ヒト,特に高齢者や下半身が麻痺したヒトにおいて,上半身の運動は歩行の促進に重要な役割を果たすと考えられる.ヒト対象の運動計測により,本研究で取り入れた能動的な腕振りと受動的な体幹捻りはヒトの歩行を促進する可能性が示唆された.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は予定通りの成果を上げたものの,次のステップに向けていくつかの問題も残している.実ロボットの実験については,床反力中心水平方向への揺動は確認できたが,数理モデルでは一定値となっている前後方向について周期的ではない増減が見られた.これについては体幹関節機構の設計が不十分であり,ガタツキの発生しない機構に変更する必要がある.また測定方法もスローカメラを使うなど大がかりで時間がかかるものとなっているため,体幹関節にエンコーダを取り付けるなど簡便な測定方法を考える必要がある.シミュレーションについては,直立姿勢における検証は概ね完了した.次のステップとしてその場足踏みと歩行の実現を目指す.ヒトの運動については現時点で研究協力者1名の測定データしか採っておらず,また腕振りの周期も限られた範囲でしか測定できていない.また数理モデルと異なり,体幹関節軌道と床反力水平方向の軌道が逆相の関係となっておらず,その原因が明らかになっていない.次年度は幅広い周期について,複数の被験者を対象に測定を行い,周期と体幹関節・床反力水平方向の軌道の関係を調査する.
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Research Products
(2 results)