2023 Fiscal Year Annual Research Report
Toxicity assessment and identification of contributing chemicals by simultaneous determination of oxidative and electrophilic stress derived from airborne particulate matters
Project/Area Number |
22H03761
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
鳥羽 陽 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 教授 (50313680)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
畑 光彦 金沢大学, 地球社会基盤学系, 教授 (00334756)
長谷井 友尋 大阪医科薬科大学, 薬学部, 准教授 (10388027)
唐 寧 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 教授 (90372490)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 大気粒子 / 活性酸素 / 酸化ストレス / 付加体生成 / 求電子ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
微小粒子状物質(PM2.5)と各種疾患との関係が疫学研究により確認され,様々な毒性を有する物質が測定されているが,複合的な健康影響を特定成分から評価することは困難である。大気粒子(PM)の健康リスク指標として用いられている活性酸素(ROS)産生能(酸化能)に関する現行手法は原理的に「ROS産生(酸化ストレス)」と「求電子的な不可逆的反応による付加体生成(親電子性ストレス)」を区別せずに評価している。本研究では,PMの健康リスク指標として,ROS産生(酸化ストレス)と求電子的な不可逆的反応による付加体生成(親電子性ストレス)とを区別して評価できる簡便で高感度な新規アッセイ法を開発し,PM試料の両活性の変動評価を行い,代謝により生体内で起こり得る毒性の増強評価や活性寄与物質の同定を行うことを目的とする。 令和5年度は,タンパク質を基質とする酸化能(ROS産生能)測定法の開発を実施した。ヒト血清アルブミン(HSA)を基質とし,34番目のシステイン残基のチオール(SH)基をターゲットとして,モデル化合物やPM2.5試料と反応させた後,遊離のSH基について発色,蛍光物質の生成,酵素反応へシグナルを誘導して検出し,総活性を算出することを立案した。市販のHSAの還元・精製条件を見出し,まず液相法にてアッセイが成立しているか確認するために,モデル化合物を用いてSH基の消費を発色および蛍光シグナルに変換して検出した。その結果,NADPHの存在下,モデル化合物のROS産生によりSH基の減少が観察されたことから,アッセイが成立していることが分かった。さらに,試験物質等の除去が容易になる基質HSAの固定化を試み,アルブミンを結合するアフィゲルブルーのゲル担体にHSAを固定化することで反応後の試料を含む低分子化合物を容易に洗浄除去することのできる汎用性の高いアッセイ系を確立することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画どおりにタンパク質を基質とする酸化能(ROS産生能)測定法の開発を測定するための新規アッセイを開発することに成功した。ヒトの生体内に存在するHSAを基質とし,試験物質等の洗浄が容易となるタンパク質のゲル担体への固定化を行い,アッセイに十分な量であり,かつ担体の吸着容量に近いHSAの吸着を確認できた。モデル化合物を用いてHSAのチオール消費速度を算出した結果濃度依存的に増大した。このことから,アフィゲルブルーに吸着したHSAを基質として用いた,ROS産生物質によるチオール基の減少を指標とするアッセイが成立していることが分かった。タンパク質を固定化してアッセイを行うことのできる担体を見いだせたことは,今後の本研究の進展に大きく寄与すると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
HSAの反応基質としての有用性を確認できたものの,アッセイの各条件について十分に検討できていないため,プロトコルの最適化を行って完成させる。HSAを固定化したアッセイでは発色の原理を用いた残存SH基の測定を行ったが,実試料では感度が不十分であることが予想されるため,高感度化が期待できる蛍光検出とアビジン-ビオチンの増幅を利用した酵素活性によるシグナル化を検討する。また,ROS産生能と付加体生成能を持った化合物とを区別して測定できていないため,酸化されたSH基(スルフェン酸)を検出することでROS産生能のみ測定する方法を検討し,全活性との差分を付加体生成能とするアッセイの最終形を完成させ,多くのモデル化合物や実際のPM2.5試料について測定し,開発した手法の有用性を評価すると同時に従来法であるDTTアッセイの結果との比較検証を行う予定である。また,生体内に存在する低分子チオールを基質とするアッセイの開発も並行して実施する予定である。
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