2022 Fiscal Year Annual Research Report
Standardization of Halal standards and the dynamics of diversity in the global era
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22H03846
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu International University |
Principal Investigator |
大形 里美 九州国際大学, 現代ビジネス学部, 教授 (30330955)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澤井 充生 東京都立大学, 人文科学研究科, 助教 (20404957)
西 直美 同志社大学, 研究開発推進機構, 共同研究員 (50822889)
水野 祐地 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター東南アジアI研究グループ, 研究員 (80912063)
砂井 紫里 千葉工業大学, 社会システム科学部, 准教授 (90367152)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ハラール基準 / イスラム法学 / ハラール産業 / グローバル化 / ムスリム少数派国 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、6月にコアメンバーによる研究会を2回開催し、これまでの研究成果の共有を行うことで、基本的知識と問題意識の共有化を図った。また11月と1月に2回の国際ワークショップをハイブリッドで開催し、東南・東アジアにおけるハラール基準と認証制度のあり方について知見を深め、現代のハラール認証制度が抱える問題点について議論を行った。第1回は、インドネシア、マレーシア、タイの状況について、第2回は、日本、台湾の状況について、それぞれ専門家から報告をいただいた。これらの2回のワークショップの内容については、報告者から原稿を受け取り、報告書を作成した。 大形は国内のマスジドやハラール対応に積極的な地方自治体を訪問し、現状把握に努め、2023年度、ヨーロッパにおけるハラール基準・認証制度のあり方について現地視察を行った。 澤井は、主に文献研究およびSNSでの聞き取り調査にもとづき、中国北京市におけるハラール飲食店の歴史的変遷を整理し、毛沢東時代の社会主義改造および改革開放政策導入後のハラール認証制度がもたらした問題点について職業倫理の視点から考察した。 西はタイにおいて現地のハラール基準・認証に関わる実務者だけでなく、ムスリムの一般市民にインタビューを行い、認証基準の歴史・現状やムスリム市民の認識についての知見を得ることに努めた。 水野は、主に文献研究を通してインドネシアにおけるハラール認証制度構築の歴史的背景や経緯の整理を行い、また現地を訪れる機会などにハラール認証関係者への聞き取りを行い現状の把握に努めた。 砂井は、主に文献研究にもとづき、ハラール基準をめぐるグローバル動向、台湾におけるハラール認証および基準の通時的な展開と現状の把握に務めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、コロナの状況が落ち着き始め、海外渡航が可能になったことで、現地調査も可能となり、順調に研究を進める環境が整った。ヨーロッパにおける委託研究については、研究協力者の都合により委託研究が不能となり、研究代表者大形が2023年度に現地視察を実施することとなったが、全体としてはほぼ順調に進んでいる。大形はインドネシアから世界ハラール評議会元会長であるNadratuzzaman Hosen氏を国際ワークショップに招聘した際に、ハラール対応をしている複数の国内企業を視察していただき、日本国内基準を考える上で貴重な知見の供与を受けた。2023年度にヨーロッパにおける現地調査を実施した。 澤井は、海外渡航を実現することができなかったが、そのかわり、中国のハラール産業およびハラール認証制度に関する基本文献を収集・整理し、中華人民共和国において少数民族の伝統生業が直面した政治社会変動の影響、改革開放政策導入後に開始されたハラール認証制度の特徴と問題点を明らかにした。 西はタイにおける現地調査を実施するとともに、ハラール認証の実務を担うSmeet Esor氏からハラール認証プロセスの全体像や問題点に関する知見を得るとともに、次年度以降の調査についても話し合いを行った。 水野は現地を訪れる機会があったため、将来的な研究会へ招待する目的も兼ねてインドネシアの代表的なハラール認証研究者Syafiq Hasyimやその他認証関連企業の関係者とネットワーキングを行なった。 砂井は、台湾のハラール産業およびハラール認証制度に関する基本文献を収集・整理し、台湾における認証、基準、認証主体の多様化を明らかにした。また、台湾におけるムスリムをターゲットとした近年のサービス展開について、台湾国立政治大学の張中復氏と意見交換を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、日本国内ハラールの専門家を招きコアメンバーによる勉強会を開催する他、イスラム少数派法学を専門とする研究者と、ヨーロッパにおけるハラール基準・認証制度を専門とする研究者を招聘し、第3回国際ワークショップを開催する。東南・東アジアで起きている現象をグローバルな視野から相対化することで、この分野における諸問題を普遍的な課題として学術的議論の俎上にあげたい。そしてムスリム少数派国において生じている諸問題を念頭に、マイノリティの諸権利の問題を専門とするイスラム法学の研究者による議論も交え、現代世界におけるハラール基準と認証制度のあり方について再検討するための知見を集約することに努める。 大形は日本国内におけるハラールと畜の現状と課題を理解するためと畜場を視察する予定である。また日本と同じムスリム少数派地域であるヨーロッパにおけるハラール基準・認証制度について現状を把握するため、現地調査を行う予定である。 澤井は、中国本土および香港への短期フィールドワークを2回実施し、中国東北あるいは北京市において近代的屠畜場(精肉加工場)の見学、屠畜従事者(宗教職能者)に対する聞き取り調査を実施し、改革開放政策導入後のハラール産業の特徴と問題点をミクロな視点から考察する予定である。 砂井は、台湾におけるハラール基準について、資料の収集と整理、台湾在住ムスリムの実践と認識についての調査を引き続き行う。 西は引き続きタイにおいてムスリム市民のハラール基準に対する認識に関するインタビュー調査と次年度以降の質問票調査の準備に取り掛かるとともに、2022年度に得られた知見を学会発表や論文の形にまとめていく作業を行う。 水野は、インドネシアにおけるハラール認証の制度化や基準策定をめぐる動態について、現地調査による法学者団体への聞き取り調査や参与観察、法令の整理などを通して、政治経済分析を引き続き行う。
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Research Products
(29 results)