2023 Fiscal Year Annual Research Report
モリソンコレクション形成過程の総合的分析による東アジアをめぐる知的体系の解明
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23H00679
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
箱田 恵子 京都女子大学, 文学部, 准教授 (50569233)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新居 洋子 大東文化大学, 文学部, 准教授 (10757280)
岡本 隆司 京都府立大学, 文学部, 教授 (70260742)
徐 小潔 公益財団法人東洋文庫, 研究部, 研究員 (20537865)
小沼 孝博 東北学院大学, 文学部, 教授 (30509378)
橘 誠 神戸大学, 国際文化学研究科, 准教授 (30647938)
小林 亮介 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (50730678)
渡辺 千尋 東洋大学, 経済学部, 講師 (50812731)
小風 尚樹 千葉大学, 人文社会科学系教育研究機構, 助教 (80880161)
斯波 義信 公益財団法人東洋文庫, 研究部, 研究員 (00039950)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | モリソンコレクション / 東洋文庫 / モリソン文書 / モリソン文庫 / 東アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
4年間の研究計画の1年目にあたる2023年度は、研究基盤を整えるため、国内外での史料や関連文献の調査、およびモリソン日記の自動翻刻作業の準備を中心とした。探検班・国際班を中心にオーストラリア・ミッチェル図書館で、モリソンの書簡などいわゆる「モリソン文書」を調査し、モリソンの新疆視察旅行や大総統顧問としての活動、モンゴルに関する情報収集とその人的ネットワークなどについて調査し、新たな発見があった。また、モリソン日記の自動翻刻については、文献班を中心にすでに翻刻されたテキストとミッチェル図書館が電子公開しているテキストを比較し、AI翻刻ソフトで用いる「教師用データ」を作成する作業を進めた。 このほか、各班では以下のような活動を行った。古書班では、モリソンコレクションの形成過程解明の一環として、19世紀のオークション用カタログ等をもとに、典礼問題に関する手稿本がモリソン文庫に入った来歴を探った。またモリソンコレクションを活用した研究として、民国初期の塩政改革や北京におけるジャーナリスト・出版人のネットワークについて調査を行った。古書班ではさらに、モリソン文庫が所蔵する19世紀在華ミッション・プレスおよび長崎で出版された文献の紙質調査結果を踏まえ、上海社会科学院、上海図書館および浙江大学で、主に美華書館などの出版物および資料を調査し、モリソンコレクションの特徴を物的側面からも追究した。 国際班では、モリソンコレクションのうち、時事問題を扱った「パンフレット」について、とくに日露戦争後のパンフレットの傾向を分析するとともに、中国人によって刊行されたパンフレットと中国外交との関係を検討した。また、対日班とともに、タイムズに掲載されたモリソンの記事や日本の新聞各紙に掲載された関連記事を調査・整理して、モリソンの言論活動を把握するなど、今後の研究の基礎となる情報の収集・整理を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4年間の研究計画の1年目にあたる2023年度は、①オーストラリア・ミッチェル図書館での「モリソン文書」の調査を中心とする史料の収集、②モリソン日記の自動翻刻の学習サンプルの作成を中心課題とし、あわせてタイムズや日本の新聞の関連記事の調査・整理など、研究の基盤を整えることを目指していた。 これに対し、とくにモリソン日記の自動翻刻について、海外の研究協力者の協力により、当初の計画よりも早く「教師用データ」作成に取り組むことができた。これにより、膨大で難解なモリソン日記の分析作業が想定していたよりも早く進められるようになっただけでなく、今後そのほかの手稿史料についても自動翻刻を進めることが可能となった。 オーストラリア・ミッチェル図書館での「モリソン文書」調査も順調に行われ、モリソンの活動や人的ネットワーク等に関し、新たな発見があった。また、このミッチェル図書館における調査では、モリソン自身が北京等で収集した漢文文書を調査した小沼が、モリソンの北京邸宅に関連する30件の家屋売買文書(房契)を見出した。これらは乾隆40年(1775)~光緒25年(1899)の期間にわたるもので、北京の不動産売買の実態を知る上でも貴重である。 このほか、各班の研究課題についても、モリソンコレクションの形成過程をうかがうことのできるカタログの発見など一定の成果が見られた。あわせて、タイムズに掲載されたモリソンの記事や日本の新聞各紙に掲載された関連記事の抽出・整理など、研究基盤を整える作業も進めることができた。 以上より、当初の計画における主要目標はおおむね達成できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度:国内外での史料調査や新聞記事の収集・整理を続ける。モリソン日記等の手稿文献の自動翻刻作業を本格化させる。東京か京都で研究会を実施し、自動翻刻の成果をはじめ、モリソンをとりまく知的・人的ネットワークなど各班で収集した情報を共有する。 2025年度:これまで収集した史料を分析しつつ、国内外での史料の補足調査を行い、研究会での発表などを通じて各自の研究を整理する。文献班は、「モリソン文書」などの自動翻刻を続け、データを各研究班に提供する。古書班は、他コレクションの研究者との交流を進めるとともに、アメリカや台湾で史料調査を行い、モリソンコレクションの特徴やその形成過程を探る。探検班は、「モリソン文書」など収集した史料の分析を進め、モリソンの新疆やモンゴルに対する調査活動と彼の情報源となった人的ネットワークを調べる。国際班では、インドでの史料調査や「モリソン文書」、パンフレットの分析を進め、モリソンの活動と国際政治への影響を、パンフレットとの関わりを軸に考察する。対日班は、収集・整理した新聞記事の分析を進め、日本の新聞記事に対するモリソンの記事の影響、日本の新聞におけるモリソン像などを調査する。研究会を2回ほど東京か京都で開催し、各自の研究報告を行って意見を交換するとともに、次年度の国際ワークショップ開催に向けた準備を始める。 2026年度:国際ワークショップの開催と研究成果の刊行。古書班を中心に、日本滞在中の外国人研究者らをまじえた国際ワークショップを東洋文庫で開催し、各班の研究成果を発表してモリソンコレクションの価値を示すとともに、他コレクションの研究者との意見交換により、モリソンコレクションの世界的な位置づけを検討する。また、各自の研究成果を論考にまとめ、年度内に東洋文庫から論文集を刊行する。
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