2023 Fiscal Year Annual Research Report
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23H00749
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
川口 由彦 法政大学, 法学部, 教授 (30186077)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小石川 裕介 関西大学, 法学部, 准教授 (00622391)
出口 雄一 慶應義塾大学, 法学部(三田), 教授 (10387095)
兒玉 圭司 舞鶴工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (10564966)
坂井 大輔 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 准教授 (40805420)
宇野 文重 尚絅大学, 現代文化学部, 教授 (60346749)
岡崎 まゆみ 立正大学, 法学部, 准教授 (60724474)
林 真貴子 近畿大学, 法学部, 教授 (70294006)
宮平 真弥 流通経済大学, 法学部, 教授 (80337287)
山口 亮介 中央大学, 法学部, 教授 (80608919)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 行政村 / 大字 / 名誉職 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、村役場資料、中でも地券台帳と戦後改革期資料の撮影に注力した。また、東春近、富県地域の歴史について何点か論稿を発表している東春近在住の郷土史家北原昌弘氏と交流を持ち、何点かの資料の紹介を受けた。中でも、「春冨土地改良区誌」(1994年刊)は、古書店で入手した「春冨大井筋沿革史」(1941年)収録の資料を詳細に論じた貴重な書籍で、古書店でも見つからず、本研究に裨益すること大であった。また、先年なくなった伊那市助役の職を務め、富県地区の歴史について研究論文も残した富県出身の郷土史家埋橋粂人の著作をまとめた「郷土の歴史と人物」(1989年刊)を貸してもらい、研究会で検討した。「春冨土地改良区誌」と併せて検討すると、三峰川左岸の氾濫域にある富県は、地形的には、西隣する東春近と一体の関係にあり、とりわけ、江戸時代に開通した「鞠ヶ鼻溝」と呼ばれる用水路は、本来、東春近村内の原新田耕地の住民が、新山川よりひいた用水が富県地区を通った後原新田に来るため、水不足が生じこれを克服するために三峰川に取水する用水路を欲したということから作り出されたものであることがわかった。同時に、富県村が、三峰川の作り出す河岸段丘の重なりの中にあり、最も低い三峰川沿岸の地域から最も高い福地地域までに6段の段丘によって構成されていることが判明した。この村の「水」に由来する利害調整は、肥沃な土地を有しながら洪水と水不足に悩まされるという独特の状況下に生み出されていることが明確になった。 さらに、大字での動きを示す資料を探して、伊那市美篶にある伊那市誌編纂室を訪ね資料についてたずねたところ、富県上新山耕地の協議録等の資料が写真や複写の形式で残されていることがわかり、これらの資料の閲覧に進むことが可能となった。ほかにも、旧伊那町の耕地資料も残されており、富県地区の大字間の動きが解明できる可能性が広がった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
役場資料の量が膨大なため、撮影にかなり時間がかかると考えていたが、コロナ対策で撮影ができない期間が長く続いたにもかかわらず資料目録の撮影済み点数を見ると、さしたる停滞もなく、かなり順調に撮影が進んでいる。また、新たに所在が確認できた資料についても、撮影・コピーに向けての準備をしつつあり、これらの大字(耕地)関係の資料収集が進めば、村と大字の関わりを立体的に描き出すという本研究の目的達成への道程が具体的に見えてくる状態となっている。 研究内容においても、洪水対策に力点を置いた研究視角が明確になるとともに、三峰川に架かる橋(竜東橋、大島橋)の建築をめぐる利害調整、学校建築をめぐる利害調整、水の獲得配分をめぐる利害調整等この村が抱えた複雑な利害対立の構造が明らかになりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
村役場資料の撮影をさらに進めるとともに、伊那市誌編纂室を介して大字資料の収集・撮影を加速していく予定である。これら資料収集とともに、研究のとりまとめ作業も加速させ、今年度中に研究の全体像を全員で共有できるように研究会を行っていきたい。
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