2023 Fiscal Year Annual Research Report
Prevention of third party damages caused by peeling of building finishing materials of outer wall and exterior panels -Establishment of basic technology for preventive maintenance-
Project/Area Number |
23H01552
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大久保 孝昭 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (60185220)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 拓郎 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (00335225)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 建築外壁仕上げ材 / はく落 / 検査 / 予防保全 / モニタリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,「躯体保護と美観確保という重要な役割を有する建築外壁仕上げ材」について,「もし剥落が生じれば第三者被害を招いてしまう」という危険性に対する予防保全技術に的を絞り,「明確な目的を持った検査・診断」および「実構造物への適用性を優先した点検技術」の2点を確立することを目的として,要素技術の開発をおこなっている。具体的には,①RC造建築外壁の各種仕上げ材の剥落防止,②木造・鉄骨造建築物における各種外壁パネルの脱落防止を対象とした検討を行っている。 2023年度は,上記①に関しては,予防保全のための検査技術として「打診検査の高度化」および「光ファイバFBGによるはく離検知」に関して実験検討を行った。特に打診検査については,京都市内の実建築物外壁で打診検査を実施し,健全部を基準とする打診音解析が有効という知見を得た。また,実験室レベルの模擬試験体により,FBGにより,はく離発生の早期検知が可能であることを明らかにした。さらに近年,日本全国で発生している中規模地震に対して地震後の外壁のはく落防止は重要な課題であることを指摘し,3次元振動台を用いて,地震動による建築仕上げ材のはく離発生に関する基礎的な検討を行った。さらに,躯体コンクリートに生じるひび割れに誘発される仕上げ材のはく離を検知する技術についても予備的な実験を行った。 上記②に関しては,木質系材料のはく離・はく落の主要因である木材内部の含水率について,集成材の材料長さ・密度・樹種の違いによる内部含水率の変化と膨潤収縮の関係を検討した。その結果,吸湿時は材料長さが短いほど重量変化率の変化と内部含水率の変化速度は速く,放湿時は材料長さによる差はあまりみられないこと,密度が大きいほど内部含水率の変化速度は速くなったが,重量変化率や寸法変化に影響がないことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は最終的には建築外壁の予防保全技術の体系化を目指すものであるが,一度にすべての劣化事象を対象とすることは困難であるため,外壁仕上げ材の剥落および外壁パネルの脱落に関する予防保全技術に的を絞って研究開発を実施することとし,2023年度は,下記の2つの研究課題に取り組んだ。 課題Ⅰ:予防保全に関わる現状技術の整理と「目的指向」の対象の明確化 課題Ⅱ:予防保全システムを体系化するために必要な新規点検技術の開発と既存技術と併せた点検システムの確立 課題Ⅰに関しては中規模地震後のはく離検査の必要性を提案し,課題Ⅱについては打音検査の高度化に関して,実建築物での調査や三次元振動台での模擬試験体による実験を行い,次年度に繋がる成果を得ることができた。また,木質系材料についてもはく落に影響を与える材料内部の含水率計測手法を提案し,一定の成果を得た。この成果は当初予定した研究計画に沿っており,本課題は順調に進んでいると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度の研究成果から,今後検討すべき予防保全技術として,「打診検査の高度化」および「中規模地震後のはく離診断技術」の確立が急務であるという結論に達している。そこで本年度はRC造建築物に関しては,はく離・はく落による予防保全技術として,RC建築物に関しては「打音検査の高度化」と「地震による仕上げ材のはく離防止技術」を中心に実施する。 打音検査に関しては,従来,人の聴力に頼った診断が主流であったが,今後のロボットやAIによるはく離検知技術の確立には至っていないため,本年度は健全部に対する周波数,減衰率あるいは音圧などを検討し,どの物性値で評価することが最善かを検討する。中規模の地震後の外壁の剥落防止は重要な課題であるため,小型振動台を用いて,建築仕上げ材のはく離に及ぼす仕様の影響を検討する計画である。 また,木造建築物の腐朽などの劣化による外壁剥落のモニタリングとして,光ファイバ(FBG)ひずみセンサによる剥離検知技術に取り組む。特に含水率の影響について振動台を用いた実験により検討を行う計画である。 本課題では,最終的に外壁の剥落防止の予防保全を実施するための具体的な点検技術の整理と開発を実施する。研究成果を実務レベルまでに高めるためには,「実際の建築物に適用しやすい技術であること」を念頭において検討を行う。
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