2023 Fiscal Year Annual Research Report
樹木の根および葉からの水輸送の双方向ネットワーク解析
Project/Area Number |
23H02278
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
内海 泰弘 九州大学, 農学研究院, 准教授 (50346839)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永井 智 兵庫県立農林水産技術総合センター, 森林林業技術センター, 課長 (30463417)
香川 聡 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (40353635)
工藤 佳世 秋田県立大学, 木材高度加工研究所, 助教 (10757983)
安田 悠子 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 助教 (70837400)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
Keywords | 重水 / ヤナギ属 / トレーサー / 当年根 |
Outline of Annual Research Achievements |
樹木は葉の蒸散に伴う水ポテンシャルの低下を水で満たされた道管あるいは仮道管に引き起こすことで,非常に強い張力を発生させ,時には100mを超える樹高を持つ樹木においても,水の上昇経路を維持している。この水移動経路は複雑であり,様々な手法で水移動ネットワークが研究されてきた。なかでも染料注入法は木部の水移動経路を明らかにするために多くの樹種で長年用いられてきた。しかし従来の染料注入法では染料を木部に導入するためには幹サンプルの切断を必要とするため,樹幹の切断処理による圧力変化が生じる可能性があり,実際の通水経路を厳密に把握できていない可能性があると考えた。一方で,温帯に生育する樹木では年輪境界の組織が水平方向での大きな水移動の抵抗となると考えられてるものの,樹木の内部の年輪数を把握することが極めて困難であった。
そこで本研究では切断枝から容易に当年根を発生させるヤナギ属の種を用いて複数年輪を含む幹切断処理個体に加えて当年根のみを含む個体を作成し,それぞれの処理個体での通水経路に違いが生じるかを検討した。その結果,ヤナギの樹幹を切断して染料を導入した個体は複数年輪の道管が通水すること,一方で当年根からのみ染料を導入した個体では主に最外年輪のみが通水経路になることを明らかにし,学術論文として国際誌に掲載された。
この結果は従来様々な研究者が実施してきた幹切断による通水経路の把握方法が,実際の水移動経路とは異なり樹幹の外側が主な通導経路になることを明らかにすることができた。この結果は同時に樹木の通水性を把握するために行われている通水特性試験の妥当性に大きな疑問を提起することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
樹木の根から葉までの通水ネットワークの研究はこれまで様々なトレーサーを用いて行われてきたが,肉眼では識別できないものの,水と同じ性質を持つ重水を用いることで,樹木の水移動を水ではない物質をトレーサーとして用いることな解析することができ,その成果が樹木生理学の論文を掲載する国際誌TreeePhysiologyに掲載された。
|
Strategy for Future Research Activity |
樹木の水移動は主に葉の蒸散に伴い通水要素で生じた負圧により,根か葉まで水を移動させていると考えられている。一方で,根ではなく葉から水を吸収する興味深い現象も報告されている。樹木の生存戦略として葉から吸収された水がどのように移動するのかは厳密には明らかにされていない。そこで根と葉の両方から水を取り込むことができる樹種を探索し,樹木内部での上下両方向での木部内水移動様式を明らかにする。
|
Research Products
(2 results)