2023 Fiscal Year Annual Research Report
創薬を見据えた革新的ヒトノロウイルスin vitro増殖法の確立
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23H02729
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
佐藤 慎太郎 和歌山県立医科大学, 薬学部, 教授 (80447333)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
左近 直美 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 主幹研究員 (50291216)
澤田 晋一 千葉大学, 未来粘膜ワクチン研究開発シナジー拠点, 特任准教授 (50444104)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ヒトノロウイルス / 腸管上皮細胞 / ワクチン開発 / 細胞外小胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、HuNoVの継代培養、持続感染の成立に必要なウイルス側要因を明らかにする足がかりとして、Progeny HuNoVが糞便懸濁液中の何らかの成分により性状変化を起こすことで、感染能の向上が認められるかどうかを検討した。細胞培地中に産生されたProgeny HuNoV(Passage 1)と、HuNoVを含まない糞便懸濁液(フィルトレーションにより腸内細菌を除去)を、1:9、1:4、1:1、1:0の割合で混和し、37℃で15分インキュベートした。その結果、1:0のものと比較し、糞便懸濁液と混和させたものでは、全ての割合でin vitroでの増殖が認められた。糞便懸濁液との混和後のインキュベーションをon iceで行うと、in vitroでの増殖が認められなくなったため、何らかの酵素活性が関与している可能性が示唆された。そこで、糞便懸濁液を100℃で10分 処理した後にProgeny HuNoVと混和してみたところ、HuNoV増殖割合は減少したものの、混和しなかったものと比較して明らかな増殖を認めた。以上の結果から、糞便懸濁液中のHuNoV粒子は、加熱によってその効果があまり変化しない何らかの物質によって「活性化」されている状態であることが予想された。 また、in vitro増殖系で十分にウイルスの複製が認められる糞便懸濁液中を、pull-down kitを用いて沈殿物と上清に分け、双方に含まれるウイルスゲノムコピー数を比較した。その結果、既報とは異なり、沈殿物中にはほとんどゲノムが検出されなかった。沈殿物を電子顕微鏡で観察したところ、ウイルス粒子を含んでいると考えられるエクソソームは数個しか確認できなかった。以上の結果から、少なくとも我々が使用している糞便懸濁液中にはエクソソームに包まれているウイルス粒子は希であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
少なくとも我々の実験系では、HuNoV粒子がエクソソームに包まれていることでin vitroで腸管上皮細胞に感染できているわけではないことが明らかになった。また、糞便懸濁液中には何らかのProgeny HuNoVを活性化させうる因子が存在することが明らかになったため。
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Strategy for Future Research Activity |
糞便懸濁液中のProgeny HuNoVを活性化させうる因子の同定を進める。我々の実験系ではエクソソームに包まれていない、フリーのHuNoV粒子が細胞に感染し、増殖していることが考えられる一方で、エクソソームに包まれている方がより感染しやすく、増殖しやすいという報告がある。そこで当初の計画通り、cCHPナノゲルを用いてウイルス粒子をクラスター化することで再感染効率やウイルス増殖効率か向上するかどうかを検討していく。
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Research Products
(8 results)