2023 Fiscal Year Annual Research Report
関節運動に呼応した滑膜-軟骨連関から紐解く関節の恒常性維持機構
Project/Area Number |
23H03027
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 琢 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (30456107)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武冨 修治 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70570018)
石倉 久年 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80772904)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 滑膜 / 関節軟骨 / 関節運動 / メカノバイオロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
関節は、酷使すると過剰な力学的負荷によって軟骨が変性して変形性関節症に至るが、適度に動かすことによって関節は健康に保たれる。本研究では、トレッドミル走行負荷モデルと尾部懸垂・関節固定モデルを用いて、関節の運動負荷の程度を大きく変えたときに滑膜と軟骨にどのような変化が生じるかを、シングルセル解析技術も駆使して詳細に解明し、関節のメカノセンシング機構の解明と滑膜-軟骨連関の全貌解明に迫る。 2021年度は、マウスのトレッドミル走行モデルの解析を中心に実施した。単回の介入後早期のタイムポイントで滑膜のRNA-seq解析を行い、遺伝子発現の変化を調査した。滑膜では、運動後4時間、12時間で特徴的な遺伝子発現パターンを示し、24時間後では対象群と同様の発現パターンに収束した。運動後4時間の変化では、ストレス応答に関わる分子やサイトカインが上方制御されていた。12時間後では、血管の発達や血管新生に関わる分子が上方制御されていた。 さらに1日1回の介入を数日間継続した際の影響も検討した。最終運動後いくつかのタイムポイントで解析を行った。単回運動では遺伝子発現変化が24時間で収束していたが、長期的な介入では運動24時間後でも、遺伝子発現変化が継続しており、その変化は単回運動4時間後、12時間後の変化と類似していた。つまり、運動の継続によって運動によって誘導される変化が収束せず、遷延することが示唆された。 また、同様の実験系で軟骨の遺伝子発現変化を解析した。変動した遺伝子の上流をIngenuity Pathway Analysisを用いて解析した。予測された分子の多くは関節軟骨ではなく、滑膜に由来する結果が得られた。つまり、関節への力学的負荷の作用は、滑膜が部分的に担っていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トレッドミル走行モデルを用いた運動負荷の研究では、予定通りBUlkベースの解析から、滑膜-軟骨間相互作用を担うであろう分子の候補が抽出できている。尾部懸垂・関節固定モデルを用いた研究では、scRNA-seqの解析を行い、サブセットレベルの解像度で知見が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
scRNA-seqと上流解析から、モデル特有の滑膜変化が生じるメカニズムの解明を行う。また滑膜-軟骨相互作用に関しては、マウス・ヒトを対象にin vitroで候補分子の検証を行う。
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