2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23H03554
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
宮宗 秀伸 国際医療福祉大学, 医学部, 講師 (80422252)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 正裕 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (00232471)
松野 義晴 国際医療福祉大学, 成田保健医療学部, 教授 (00376378)
吉岡 広陽 国際医療福祉大学, 医学部, 講師 (50523411)
横田 理 国立医薬品食品衛生研究所, 毒性部, 主任研究官 (70706605)
江口 哲史 千葉大学, 予防医学センター, 講師 (70595826)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | Early life stress / 雄性生殖器系 / 精子 / エピジェネティクス制御 / 乏精子症 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでに、発達早期のストレス(Early life stress)が精子数減少や乏精子症を引き起こすことを明らかにしたが、その詳細な病態は明らかになっていない。情報量の不足から現時点では、Early life stressによって精子の量や質が減少した場合の内科的治療法や外科的治療法のストラテジー構築が困難な状態である。本研究課題はEarly life stressが生じる乏精子症について、その症状と発症機序の詳細な評価と解析を目指す。2023年度は精子の性状について評価を行った。Early life stress誘導のためのプロトコールの一つである新生児期母児分離によりICR児マウスにEarly life stressを誘導し、12週齢時において精巣上体尾部より成熟精子を抽出した。新生児期母児分離マウスでは対照マウスと比較して成熟精子数の減少が認められた。加えて精子の形状について評価したところ、現時点ではEarly life stressの影響を見出すには至っていない。一方で、Early life stressが児の精子のエピゲノム状態におよぼす影響について評価するため、成熟精子よりゲノムDNAを抽出し、バイサルファイト処理後Reduced representation of bisulfite sequencing解析を行った。ヒートマップおよび主成分分析による評価は、ストレス群と対照群から得られた精子が異なるメチル化状態を保持していることを明らかにした。その他詳細な結果については現在解析中であるが、現在いくつかのインプリント遺伝子におけるメチル化状態の変動を見出しつつある。興味深いことに、その中には男性不妊症と関連する遺伝子が含まれる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は研究計画通り、Early life stressを受けた児マウスから得られた成熟精子について、その性状評価を行った。その上でReduced representation of bisulfite sequencing解析により、Early life stressが精子ゲノムDNAにおけるエピゲノム状態に変動を引き起こす可能性を見出した。これまでの解析結果は、Early life stressが男性不妊症に関連するインプリント遺伝子のメチル化を変動させる可能性を示している。一般的にインプリント遺伝子のメチル化は次世代に引き継がれるとされていることから、検出されたインプリント遺伝子のメチル化の変動は次世代の個体の妊孕性に影響を引き起こす可能性を示唆している。すなわち、2023年度はEarly life stressが精子を通じて経世代的に健康被害をもたらす可能性を示唆する知見を得ることが出来た。その他現在、Early life stressが雄性生殖器系におよぼす影響評価の一環として、モデルマウスにおけるメタボローム解析の予備検討が行われている。これらのことから、現在までの進捗状況は「(2)おおむね順調に進展している」に当てはまると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況は「(2)おおむね順調に進展している」に当てはまると判断した。次年度以降も計画に従い研究を進捗させる。2024年度はモデルマウスにおけるメタボローム解析を推進する。次に2023年度に解析を行った、精子ゲノムDNAメチル化状態にEarly life stressがおよぼす影響について、サンプル数を増やした上でさらに解析を進める。特に男性不妊症に関連するとされる遺伝子群に着目する。ここで、Early life stressを誘導する方法として2023年度は新生児期母児分離を採用した。これに対して疑似的にEarly life stressの影響を誘導することを目的として作成する新生児期コルチゾール投与マウスについても、精子ゲノムDNAメチル化状態の変動に関する解析を試みる。予備検討では新生児期コルチゾール投与マウスでは新生児期母児分離マウスと比較して形態異常を有する精子数が増加することが確認されており、メチル化状態についても大きな変動を見出す可能性がある。その他計画に従い、セルトリ細胞と精子形成細胞の間に存在する精巣内特殊接合装置にEarly life stressがおよぼす影響についての評価を進めるものとする。
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Research Products
(5 results)