2012 Fiscal Year Annual Research Report
政権交代期における政治意識の全国的時系列的調査研究
Project/Area Number |
24000002
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Research Category |
Grant-in-Aid for Specially Promoted Research
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
小林 良彰 横浜国立大学, 都市イノベーション研究院, 教授 (40153655)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 真裕 関西学院大学, 法学部, 教授 (40260468)
飯田 健 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 講師 (50468873)
谷口 将紀 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (60251435)
名取 良太 関西大学, 総合情報学部, 教授 (60330172)
平野 浩 学習院大学, 法学部, 教授 (90222249)
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Project Period (FY) |
2012-05-29 – 2017-03-31
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Keywords | 政治学 / 選挙研究 / 投票行動 / 政治意識 / 選挙公約 / データベース |
Research Abstract |
本研究課題は、JESV(Japanese Election Study V)としての全国時系列調査を実施するとともに、選挙結果・選挙公約・議会議事録・予算配分など政治過程の諸データと接合し、政権交代期における民主主義を体系的に解明することを基本目的とする。加えて、調査データの完全公開により、国内外の学術及び社会に知的資産を還元することも目標とする。 平成24年度の研究活動は、衆議院総選挙に合わせ、郵送とインターネットにより衆院選事後調査を実施した。加えて、新政権誕生後の意識変容を明らかにするため、3月に衆院選事後調査(電話)も実施した。また、300小選挙区における全候補者計1294名の選挙公報を分析対象とし、コーディングと内容分析を行った。そこでは、当落別・政党別にその特徴を見出すだけでなく、選挙結果や意識調査データとの接合がなされ、その関連性が分析された。さらに収集された選挙公報ファイルは、XML化された後にデータベースに格納し、知的資産の社会的還元・国際的発信にむけた作業を進めた。 平成24年度の研究成果は、雑誌論文15件、学会発表15件(うち招待講演7件)、図書7件である。このうち、KobayashiとIidaによる2つの国際学会報告は、衆院選調査データおよび選挙結果データを用いた研究報告であり、Kobayashiは、中央集権的財政システム・多党制・議院内閣制である日本において、多くの死票を生むとともに多数派でもわずか23%の支持しか得られていない小選挙区比例代表並立制は、民主主義の機能を阻害することを明らかにし、ウェストミンスター・モデルをもたらす諸システムの改革を主張する。Iidaは、リスクや不確実性が高くとも、とにかく現状を変えたいと願う有権者のリスク受容的な態度が、投票行動の選択に有意な影響を及ぼすことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究進捗状況は、11月の衆議院解散により、当初計画を超えて下記の第1波~第3波の調査を実施した。 (1)有権者意識パネル調査データの構築:当初計画通り、衆院選事後調査(郵送:パネルサンプル及び補正用新規サンプル)および衆院選事後調査(インターネット)を実施、郵送調査については4000サンプルに対して回収数2736、回収率68.4%と高い回収率を得た。インターネット調査は総回収数4299と大規模なサンプルを得た。これらに加えて、新政権誕生後の意識の変容とその要因を明らかにするため、平成25年3月に衆院選事後調査(電話)も実施した。これにより当初計画以上の調査データを得ることとなった。 (2)選挙公約の収集と内容分析:300小選挙区における全候補者計1294名の選挙公報を分析対象とし、内容分析を行った。コーディングは、相互型チェック・階層型チェックを行って基準の統一化を図るとともに、特定争点の抜き出し作業、特定政策領域のリコーディングなどを進め、データセットを完成させた。 (3)国会議事録データの収集:衆議院・参議院の本会議及び全ての委員会における全議員の発言ならびに法案採決に関する議事録の収集作業を行っている。 (4)データベース構築:申請時の研究内容に加えて、上記のパネル意識調査データ、選挙公約、国会議事録及び市区町村別選挙結果を対象に、検索機能が付いたデータベースを構築・収納した。選挙公約分析を進めるにあたって収集された全候補者の選挙公報ファイルは、検索システム機能をもつデータベースに格納された。 (5)国際的研究ネットワークの構築:日本と同様に並立制を採用する韓国の社会科学データセンター及び台湾の国立政治大学選挙研究センターと協力し、米国の選挙研究者も交えてAESカンファレンスを平成25年3月に開催し、並立制下での有権者の政治意識や投票行動の比較分析を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
有権者パネル意識調査データの構築については、平成25年度は参院選前後調査、平成26年度は通常期調査、平成27年度は統一地方選後調査、平成28年度は参院選前後調査を実施する。また研究期間内に実施される衆院選調査についても適宜行う。さらに、選挙公約の内容分析及び国会議事録内容分析を進め、調査データと接合して代議制民主主義の体系的な解明を進めていく。そして、当初計画を超えてデータベースの構築と国際的研究ネットワークの構築を推進する。 これらの研究を通して、日本における多数決型代議制民主主義の機能について検証する。具体的には、1.競合する政策エリートが提示する公約に基づいて市民が政策エリートを選択しているかどうか、2.選出された政策エリートが公約に基づいて国会で議論して政策形成を行っているかどうか、3.市民が選択した政策エリートが形成する政策に対する評価に基づいて、次の政策エリートを選択しているかどうかについて分析を進め、日本における代議制民主主義がどのように機能しているかを明らかにする。 上記の研究の推進に際して、次のテーマに基づく方策である。1.選挙公報の認知と投票行動の関係:代議制民主主義の事前的側面を主観的調査データだけでなく、客観的内容分析データを用いて検証する。2.批判的投票者の形成要因と変容要因:政党や政治家に対しては批判的であっても民主主義そのものは高く評価する「批判的投票者」の形成要因及び変容要因を意識調査により解明する。3.選挙公報と議会行動の関係:代議制民主主義の代議的側面を検証する。民主主義の指標化について、従来の外形的変数によらず、選挙公報と国会議事録の内容分析を用いた「機能」に着目した新しい指標を構築する。4.政策パフォーマンスと次回投票行動の関係:代議制民主主義の事後的側面を主観的な調査データだけでなく、客観的内容分析データを用いて検証する。
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Research Products
(38 results)