2014 Fiscal Year Annual Research Report
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24000008
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
山崎 泰規 国立研究開発法人理化学研究所, 山崎原子物理研究室, 上席研究員 (30114903)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ULMER Stefan 国立研究開発法人理化学研究所, Ulmer国際主幹研究ユニット, 国際主幹研究員 (50624813)
松田 恭幸 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (70321817)
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Project Period (FY) |
2012-05-29 – 2017-03-31
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Keywords | CPT対称性 / 反水素 / 反陽子 / 陽電子 / 磁気モーメント / マイクロ波分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
反水素ビーム生成装置の大幅高度化 : 昨年度報告した反水素ビーム生成成功を高精度分光に繋げるため、反水素合成部の高度化を昨年度から進めて来たが、それがほぼ完成した。すなわちカスプ磁場発生超伝導磁石の導入、それに伴う、多重リング電極の更新、3D反陽子消滅位置トラッカーの導入、反陽子蓄積部から反水素合成部への断熱的反陽子輸送法の開発、反水素ビーム中に含まれる高励起状態除去のため、電場イオン化装置の導入、反水素ビーム検出器の高度化を進め、新たに導入したすべての装置が設計通り、あるいは、それ以上の性能を持って稼働させることに成功した。特に、二重カスプ磁場発生超伝導磁石と新たに設計した多重リング電極の組み合わせは、陽電子、反陽子非中性プラズマのこれまでにない安定的捕捉を可能にした。3D反陽子消滅位置トラッカーは電極表面での反水素消滅と反陽子の残留ガスとの消滅を明確に区別した。さらに、反水素ビーム検出器にはこれまで同様GBO単結晶板を用いたが、荷電粒子通過に伴う蛍光光量ばかりでなく、発光位置情報を取り込み、主なバックグラウンドである宇宙線と反陽子捕捉部からのパイ中間子の寄与をほぼ無視できる程度まで減少させることができた。反陽子輸送法を改善し、反水素ビームが増強され、また、基底状態反水素がほぼ確認された。 単一反陽子操作の成功と質量電荷比の超高精度測定 : 第二のテーマである反陽子磁気モーメント測定に向けた準備を進め、手始めに質量電荷比を測定した。数週間の実験で既にこれまでの記録を越える精度を達成することに成功した。測定時間の大幅短縮に成功したことから、測定値の日周変化にも言及できるようになった。出版準備を進めている。 CERNの反陽子減速器不調 : 2013年はLHCの更新のため、CERNの加速器コンプレックスがすべてシャットダウンされていた。このため、加速器群の整備は大幅に遅れ、反水素実験は11月に入ってから5週間とビームタイムが大幅に削減され、しかも、供給された反陽子ビームもこれまでになく不安定で大変厳しい実験となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 一昨年度を利用して、実験装置の高度化を大幅に進め、準備も万端であった。検出器など、当初予定より優れた性能を示すことを明らかにした。 2. 高度化を進めたすべての実験装置が予定の性能を予定の期日までに達成した。反水素ビーム検出器など、当初予定より優れた性能を示すことを明らかにした。 3. CERNの反陽子減速器(AD : Antiproton Decelerator)からの反陽子ビームの安定性が悪く(ビーム位置の揺らぎ、空打ち等)強度が通常の70%程度になり、ビームタイムが大幅に削減されるなど、外的要因が非常に厳しい状況にあったが、反水素ビーム生成を直ちに再現し、さらに、その一部がほぼ基底状態にあることを確認した。 4. 単一反陽子の捕捉・操作に成功した。反陽子磁気モーメントの直接測定への道を拓いた。 5. 反陽子の質量電荷比をこれまでにない短時間、高精度で測定することに成功した。 6. 反水素生成過程の理論的考察を進め、最適化条件考察への道を拓いた。 7. 反水素ビームの効率的生成法を明らかにするため、カスプ磁場のレンズ効果を詳細に考察し、解析的考察が可能であることを示した。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 反陽子蓄積器から反水素合成装置への反陽子の断熱的輸送法を確立する。 2. 陽電子プラズマを効率的に冷却する方法を開発する。 3. 反水素ビーム生成効率の最適化を進める。 4. 反水素ビームのマイクロ波分光を開始する。
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Research Products
(26 results)