2012 Fiscal Year Annual Research Report
知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築に関する基礎的研究
Project/Area Number |
24220013
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (S)
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
小川 義和 独立行政法人国立科学博物館, 事業推進部, 学習企画・調整課長 (60233433)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
芦谷 美奈子 滋賀県立琵琶湖博物館, その他部局等, 研究員 (50359270)
岡田 努 福島大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (50431648)
松浦 啓一 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 部長 (70141984)
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Project Period (FY) |
2012-05-31 – 2017-03-31
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Keywords | 博物館教育学 / 科学リテラシー / 生涯学習 / 科学系博物館 / サイエンスコミュニケーション |
Research Abstract |
(1)理論的な枠組みの検討:従来の研究で開発した「世代別枠組み」を再検討し、博物館利用者の世代等の区分からとらえた科学リテラシーの枠組みと評価の指針を策定した。先行する研究で調査した国際学会における科学コミュニケーション理論を踏まえ、博物館のコミュニケーションに関する理論等を検討した。 (2)海外先行事例調査:ヨーロッパの科学館ネットワークによるOSR(Open Science Resources)システムでは、探究活動の考え方に基づく教師向け教材をウェブ上で提供していることがわかった。米国科学館ネットワーク(ASTC)については、Informal CommonsやExhibit Files等における学習プログラムや展示のメタデータの構築方法等を参考にした。博物館資源と来館者をインターネットで双方向的に結び付ける本研究の独自性を明確にすることができた。 (3)「科学リテラシーパスポートβ」の開発:システム開発は従来の研究成果を活用し、集積された科学系博物館のプログラムをもとにデータベースの開発を行った。「世代別枠組み」に基づき、プログラムの対象・目標・内容・実施館等の情報をデータベースに登録、表示し、各博物館がそれを活用してプログラムの改善と開発を行い、新たなプログラムを追加できるシステムへと再構築した。 (4)「科学リテラシーパスポートβ」導入のための準備:今後、各地区の拠点博物館の学芸員が中心となり、データベースの活用とプログラムの改善・開発を行う。それに先立ち,データベースの活用方法およびプログラムの改善・開発に関して九州・北海道地区を中心に博物館職員等を対象に研修を行い、システム導入に向けた準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では館種の異なる博物館間や地域での連携を通じて、複数の博物館が有する学習プログラムや展示等の学習資源を、人々の科学リテラシーの向上を目的とした共通の枠組みで蓄積する。そして、博物館利用者がそれらを活用して学んだ成果を確認し、その学習方法や成果を社会に還元するシステムを研究開発することにより、知の循環型社会における科学リテラシーの向上に資する博物館活用のモデルを確立し、博物館の新しい機能としての対話型博物館生涯学習システムの構築を目的としている。 24年度は、まず理論的な枠組みの検討を行い、科学リテラシーの枠組みと評価の指針を策定できた。また海外先行事例調査を計画的に行い、その結果対話型学習モデルに基づき博物館資源と来館者をインターネットで双方向的に結び付ける本研究の独自性を明確にすることができた点は特筆できるところである。 システム開発は、最初に科学系博物館のプログラムをもとに、プロトタイプデータベースの開発を行い、そのシステムを各地の研究分担者等で検証し、システム上の課題を明確にした上で、本システムの開発を行うことができ、おおむね予定されたシステムの開発を行うことができた。なお25年度以降に予定していた利用者の個人情報や学習プログラムの著作権等について検証がすすみ、本システムが実装用化された場合を想定したシステムポリシーを策定することができた。 システムの導入のための準備については、やや予定より遅れている地域もあるものの、データベースの活用方法およびプログラムの改善・開発に関して九州・北海道地区を中心に博物館職員等を対象に研修を行った。またインドネシアの科学館との連携協力が進み、25年度以降に本システムへの参加が期待できる。 以上の点から、初年度としておおむね順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
九州地区に研究分担者を追加し、各地区が主体的に研究を進める体制を確立するとともに、24年度と同様にシステム開発等のソフト面に重点的に資源を投下する。その上で、 (1)「科学リテラシーパスポートβ」の改善:24年度開発した「科学リテラシーパスポートβ」システムの本格的な運用に向けて、利用者が学習履歴を確認して、個人から見た博物館の活用モデルが構築できるシステムに改善していく。(2)「科学リテラシーパスポートβ」の試行と科学リテラシーの予備的評価:北海道から北九州までの各地区の拠点博物館の学芸員が中心となり、学習プログラムのデータベースへの登録、システムの活用方法と学習プログラムの改善・開発に関して地域の博物館等の職員を対象に研修を行い、システム導入に向けた準備を行う。先行している地区では、複数の博物館等が連携し、モニターを募り、導入した「科学リテラシーパスポートβ」を試行する。システムの運用を検証するとともに、各世代の科学リテラシーの予備的評価を行う。 (3)活用事例の集積・分析と評価方法の検討:システムの本格実施時の利用実績やアンケート調査等を通じて、人々の科学への意識の変容や考え方・見方の拡張性を調査する。利用分析から、利用者が求める学習課題を抽出し、課題に基づく博物館活用事例を提示し、利用者の博物館活用を促すとともに、活用事例を集積する。各世代の科学リテラシーの暫定的な測定を行い、信頼性、妥当性のある評価方法の確立に資する。 (4)各地区での「科学リテラシーパスポートβ」の運用:北海道地区では動物園・科学館・歴史系博物館、東北地区においては科学館・自然系博物館、関東地区においては、自然系博物館・科学技術系博物館、関西地区においては総合博物館・歴史系博物館、北九州地区においては大学博物館・美術館・水族館を中心にしたネットワークの中で導入する。
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Research Products
(28 results)