2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24221011
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (S)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
油谷 浩幸 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (10202657)
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Project Period (FY) |
2012-05-31 – 2017-03-31
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Keywords | ゲノム / がん / 幹細胞 / クロマチン / エクソーム |
Research Abstract |
本研究はがん細胞集団ゲノムに蓄積する状況を時系列で解析することにより、「癌細胞集団の進化(evolution)」にかかわるゲノム・エピゲノム変異を同定することを目的とする。第一に、癌細胞集団のゲノム不均一性の解析については、経過中に再発を生じた症例において、エクソーム解析およびDNAメチル化解析を実施した。グリオーマや膵がん、低分化型胃癌は腫瘍細胞含量が低い組織が多く、腫瘍含量を考慮したデータ解析パイプラインの開発を行い、検証をおこなった。悪性グリオーマは再発時にはより高グレードな腫瘍組織像を呈する。原発巣に認められるIDH変異に加えて新たなゲノムコピー数および塩基変異が加わっていた。また、最長8代まで継代したヒト胃癌ゼノグラフト7症例について原発巣及び正常組織ゲノムの全エクソン解析を実施した。組織像、遺伝子発現プロファイル、コピー数変異パターンは比較的よく保存されていた。原発腫瘍に認められた塩基変異の多くはゼノグラフトにも維持され、変異アレル頻度が高かった。一方、継代に従って新たな変異が蓄積する傾向が認められ、これら新たな変異の多くは変異アレル頻度が低く、サブ集団に存在する可能性が示唆された。第二にがん細胞のクロマチン動態の解析については、ヒト肝細胞がん腫瘍組織においてのヒストン修飾および転写因子の標的部位を特定すべくChIP-seq解析を行い、β-cateninの標的部位を腫瘍組織と正常組織で比較した。また、癌幹細胞をはじめとした腫瘍内の質的な不均一性を明らかにすべく、単一細胞のトランスクリプトーム解析法の確立をすすめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
エクソーム解析データ解析について腫瘍細胞含量を考慮した解析パイプラインの開発を行った。エクソーム解析データに基づくアレル別コピー数予測プログラムを作成し、従来の標準解析法であるSNPアレイによる予測結果と大変良好な相関が認められた。同様の解析ソフトウェアは国際的にも殆ど開発されておらず、国内研究者へのプロトタイプの提供も開始した。しかしながら、腫瘍含量が20%を下回るような検体については通常のリード深度である100X前後では腫瘍細胞由来のリードが平均20本程度しか存在しないことから、予測した腫瘍含量を考慮して変異検出を行うことで精度の向上が認められた。一方、低腫瘍含量の症例において解析の特異性、再現性を上げるためにはリード数の追加が必要と考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
エクソーム解析の検体処理およびデータ解析パイプラインの性能評価を行うためには、正解となるデータを高いリード深度で取得する必要がある。症例間での変異出現頻度が高い遺伝子について増幅するプライマーセットをデザインして、再度同一検体の変異解析を準備中である。 症例の経時的解析では、再発腫瘍を形成するクローンがどのように選択されたかを明らかにすべく、原発腫瘍が保有する不均一性を解析することが重要と考えられた。そのためにはパラフィン包埋組織の利用を積極的に行うことが必要である。 腫瘍細胞間のエピゲノムの不均一性を理解するためには、単一細胞のRNA-seq解析のセットアップを進めた。また、幹細胞マーカー陽性の細胞の分離手法の確立に着手した。
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Research Products
(25 results)