2012 Fiscal Year Annual Research Report
分子科学的アプローチによる遺伝子発現の制御と機構の解明
Project/Area Number |
24225005
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (S)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉山 弘 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50183843)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
板東 俊和 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20345284)
遠藤 政幸 京都大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (70335389)
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Project Period (FY) |
2012-05-31 – 2017-03-31
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Keywords | 遺伝子発現 / エピジェネティックス / 初期化 / DNAナノ構造体 |
Research Abstract |
本研究では、エピジェネティックな遺伝子発現の制御に関する分子科学的な総合研究を進めるために、DNAの配列特異的な結合分子にエピジェネティックな遺伝子発現の活性化機能を付与することによって、細胞の初期化や分化の制御を行うことや、遺伝子制御に関連する酵素や反応を直接可視化し解析する方法の開発を行うことを目的としている。 2012年度の主な研究成果: (1)Fmoc固相合成の反応条件の改善を進めながら、SAHA (suberoylanilide hydroxamic acid)をPy-Imポリアミドに連結させた誘導体を合成し、MEF細胞中のOct4/Nanog遺伝子を特異的に活性化することに成功した。(2)高速原子間力顕微鏡(AFM)により、鋳型DNAを2か所で結合したDNAナノ構造体上での基本転写因子との複合体構造及びRNAポリメラーゼIIによる転写を動的に観察する系の構築に成功した。(3) DNA折り紙上でDNAモーターの挙動をAFMによって観察することに成功した。また、特定の波長の光により構造を異性化させる置換基を導入したDNAナノ構造体を構築し、光による構造と機能を制御する技術の開発も進めた。現在、マイクロアレイを用いる遺伝子活性化能の評価結果から、様々な遺伝子群、特に細胞の初期化に関連する遺伝子群を活性化するSAHA Py-Imポリアミドを見出している。また、非常に微細なDNAナノ構造の変化を観測可能にするAFM測定技術の改善も進めている。 今年度も申請者らの有する合成、解析技術を駆使して、目的とする構造依存的な遺伝子発現の制御と可視化を実現していく。これらの化学的アプローチによって、分子レベルでの遺伝子発現制御の動的な挙動を解明し、細胞内での汎用的な特定遺伝子制御に関する技術応用への方法論を確立する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していたDNAの高次構造を認識する新しい機能分子設計に関する研究の進展がやや遅れているものの、配列特異的な結合分子によるエピジェネティックな遺伝子発現の活性化研究と、AFMによってDNAナノ構造を直接可視化し解析する方法論の開発はほぼ計画通りに進展しており、論文として報告している。従って、研究全体としては、核となる研究の基盤知見は見出されており、本研究を推進していくために必要な初年度の実績目標は達成することができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子発現の制御機構の解明は、生命科学に対する理解の根幹を成し、その制御技術の開発は極めて重要な研究課題である。中でも、細胞内のエピジェネティックな遺伝子発現をどのように制御するか、ヒストンの化学修飾やシトシンの脱メチル化を制御する方法論に対する学問的な関心は高まっている。それらに対する方法論を確立できれば、より簡便で安全な培養細胞の初期化や分化誘導の技術に対しても応用可能になると考える。 申請者は、特に、DNA配列特異的な結合分子であるSAHA Py-Imポリアミドによるエピジェネティックな特定遺伝子発現の活性化を確立するために精力的に研究を進めている。今後、SAHA Py-Imポリアミド合成ライブラリーの更なる充実のためには、Fmoc固相合成における縮合反応の効率化、反応条件の最適化が要求される。また、遺伝子発現を網羅的に評価するために必要な次世代シークエンサーも導入したことで、ゲノムレベルでのハイスループットな特定遺伝子発現の解析も可能になっている。これまでのRT-PCRやマイクロアレイによる解析に加え、一層の遺伝子発現評価の進展が期待される。加えて、DNAのナノ構造変化を誘起するヌクレオソーム構造や転写開始領域で存在するG-四重鎖構造に対して、高速原子間力顕微鏡(AFM)を活用することで、高次構造の変化やタンパク質との相互作用を直接可視化する方法論、技術の確立は本研究を円滑に推進していくために必要不可欠である。 申請者らの複合的な化学的アプローチによって、特定遺伝子発現の制御法の開発を推進していくために、機能分子の化学合成、遺伝子機能評価、AFM観測に関する技術、それぞれの研究を相互に補完しつつ、展開していくことが重要であると考える。
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Research Products
(23 results)