2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24226002
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (S)
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川崎 雅司 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90211862)
|
Project Period (FY) |
2012-05-31 – 2017-03-31
|
Keywords | 表面・界面物性 / 量子伝導 / 強誘電体 / 超伝導材料 |
Research Abstract |
本研究では、酸化物界面に二次元電子を蓄積させ、強誘電体をチャネルとして用いたトランジスタおよび酸化亜鉛(ZnO)分極界面における量子物性の研究を行うことを目的としている。 (1)強誘電体としてBaTiO3単結晶および、分子線エピタキシー法により作製したBaTiO3薄膜を用いた。キャリア蓄積のためのゲートとしてイオン液体を用い、温度220Kにおいてゲートに電圧を印加すると、いずれの試料においても伝導率は増加し、トランジスタ動作を確認した。温度を下げていくと、BaTiO3単結晶は180K付近の構造相転移以下で抵抗が急激に増大した。一方、BaTiO3薄膜は抵抗にほぼ温度依存が無かった。これは、薄膜の格子が基板に固定されているために構造相転移が抑えられ、より金属に近い状態が低温まで実現できたことを示している。 (2)現在までZnO薄膜成長技術の向上を追求することにより、最大で80万cm2/Vsの高移動度を示す二次元電子ガスを作製可能である。本研究提案で導入した希釈冷凍機を用いて、この試料の低温磁気伝導特性を測定した。20mKほどの低温において磁場を印加していくと、縦抵抗はゼロを示し、ホール抵抗が量子化値を取る量子ホール効果が観測された。特に、電子相関に基づく分数量子ホール効果が顕著に現れたが、量子化を示す指数が通常の奇数分母だけでなく、偶数分母の状態が観測された。この現象はこれまで非常に清浄なGaAsの二次元電子系でのみ観測されてきたが、ZnOもこの水準に達していることを示している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は(1)強誘電体(Sr,Ba)TiO3薄膜チャネルトランジスタ動作の実証、(2)酸化亜鉛二次元電子系の移動度を80万cm2/Vsから100万cm2/Vsに向上させる、(3)希釈冷凍機立ち上げと低温測定を行うことを計画としていた。 (1)テスト試料としてBaTiO3単結晶を用い強誘電体チャネルトランジスタの動作確認を行うことに成功した。また、Sc酸化物基板を用いて、BaTiO3薄膜を分子線エピタキシーによって作製し、強誘電体チャネルトランジスタが動作することを実証できたため、十分な成果が得られた。 (2)酸化亜鉛二次元電子系においては、分子線エピタキシー装置の排気システムの改良や金属原料の蒸発を制御するシャッターなどの改良を行った。そのような様々な試行錯誤をしたものの、移動度向上は得られなかったため、次年度への課題とする。 (3)一方で、希釈冷凍機立ち上げは一部仕様の問題で予算を繰り越し予定が多少後ろ倒しになったものの、非常に順調に立ち上がり、最低温度20mKを達成した。また、酸化亜鉛二次元電子系を測定したところ今までに観測されたことのない量子状態が観測され、予想以上の進展があった。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)現在まで、強誘電体チャネルトランジスタにいては、キャリアの蓄積が確認できた。今後は分極反転による、スイッチング動作実証を目指す。そのために、リーク電流の極めて少ない下部電極/強誘電体/上部電極の構造を作製法を確立する。下部電極には(Sr,Ba)TiO3薄膜と格子マッチングのよい金属SrRuO3薄膜を堆積させる。上部電極は強誘電体層のオーミック電極にもなるようTi金属薄膜の堆積を行う。この構造において、強誘電体ヒステリシスカーブの確認、キャリアを蓄積した状態で強誘電体反転に対応する伝導度の変化観測を狙い研究を進めていく。 (2)希釈冷凍機立ち上げが完了したため、今後は高移動度酸化亜鉛二次元電子系の量子輸送特性の測定を進めていく。特に、回転ステージを用いて試料の磁場に対する角度を変えながら詳細に磁気抵抗およびホール抵抗を調べることにより、新たに見つかった量子状態を明らかにしていく。また、引き続き、ヒーター部材の変更などを視野に入れ、酸化亜鉛薄膜品質向上に努め、移動度向上を狙う。
|