2013 Fiscal Year Annual Research Report
光合成・光化学系II複合体の原子分解能における酸素発生機構の解明
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24227002
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
神谷 信夫 大阪市立大学, 複合先端研究機構, 教授 (60152865)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八ツ橋 知幸 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70305613)
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Project Period (FY) |
2012-05-31 – 2017-03-31
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Keywords | 光化学系II / 光合成 / 水分解 / 酸素発生 / 人工光合成 / 金属クラスター / 酸化状態 / SPring-8 |
Research Abstract |
本研究では、光化学系II複合体(PSII)の水分解・酸素発生機構を解明するために、PSIIの酸素発生サイクルにおけるMn4CaO5クラスターの中間体(KokサイクルのSi状態、i = 0 - 4)に関する構造情報を得る。まずS0状態を実現している可能性のある(1)PSIIのヨウ素または臭素置換体、(2)4種類の除草剤複合体、(3) PsbMサブユニット欠失変異体の、合計7種類のX線結晶構造解析を行うとともに、複数の測定法により酸素発生の構造・機能の相関を研究する。また(4)同型性の高い結晶を多数準備してMn原子のX線還元を低減しインタクトなクラスターの酸化状態を明らかにするとともに、(5) フェムト秒レーザーの2光子吸収を利用してPSIIのS2状態を実現する技術を開発し、(4)と同様の方法によりその結晶構造を明らかにする。本年度は、 (1)についてヨウ素置換体の構造解析を完了させ、ヨウ素の還元力によりS0状態に近づいたクラスター構造を明らかにした(論文準備中)。(2)では1.9~2.1オングストロームの分解能を達成している阻害剤複合体3種類について結晶構造解析を完了させ、阻害剤がプラストキノンと入れ替わる際の認識機構を解明した。またNative結晶を含めて、PSIIのMn4CaO5クラスターやそれを取り巻く水のネットワーク構造を詳細に比較・検討した(論文準備中)。(3)では、PsbMの欠失によりプラストキノ ンとの結合性が低下する機構が明らかにされた。(4) では17個の結晶から回折強度データを収集し、従来の1割以下までX線還元を低減して構造解析を行った。(5)では昨年度に作成したレーザー照射装置を用いて、まず溶液試料に大強度フェムト秒レーザーを照射しS2状態が実現されていることをESR法により確認し、結晶試料に対するレーザー照射実験に目処をたてた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」の項に記述した5つの目標の内、(1)から(3)については、合計6種類のPSII試料に対して既にX線結晶構造解析を既に完了させており(分解能の低い阻害剤複合体1種類については構造解析を継続中)、その達成度は85%に到達している。(4)については、同型性の高い結晶を多数確保することに成功して構造解析を進め、現状の達成度は60%程度と考えている。(5)については、これを担当するために採用している博士研究員が半年間にわたって病気休業したため進行が遅れており30%程度である。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の5つの目標の内、(1)から(3)については、7種類のPSII試料全てに対して結晶構造解析を完了させるとともに、酸素発生活性測定、各種の分光学的測定を行って酸素発生機能に関する情報を含めて論文発表を行う。(4)については、さらに低いX線照射量の回折強度データを収集して、構造の再現性の確認を含めて目標の達成を目指す。(5)については、懸案の結晶試料に対してS2状態を確認した上で、(4)と同様に多数の同型結晶を準備して結晶構造解析を行う。研究期間終了までには、5つの目標をすべて達成し、PSIIの水分解・酸素発生機構の全容解明を目指す。
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Research Products
(21 results)