2015 Fiscal Year Annual Research Report
光合成・光化学系Ⅱ複合体の原子分解能における酸素発生機構の解明
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24227002
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
神谷 信夫 大阪市立大学, 複合先端研究機構, 教授 (60152865)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八ツ橋 知幸 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (70305613)
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Project Period (FY) |
2012-05-31 – 2017-03-31
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Keywords | 光化学系II / 光合成 / 水分解 / 酸素発生 / 人工光合成 / 金属クラスター / 酸化状態 / SPring-8 |
Outline of Annual Research Achievements |
光化学系II複合体(PSII)の水分解・酸素発生機構を解明するために、PSIIの酸素発生KokサイクルにおけるMn4Caクラスター(OEC)の中間体(Si状態、i = 0 - 4)の内、S0、S1、S2状態に関する構造情報を得ることを目指している。これまでに、2011年に報告したS1状態の構造を見直して(当初のPDB-ID:3ARCを一部修正し、3WU2で再登録)、Mn4Caクラスター内の原子間距離の精度をX線結晶学の立場から検証した。また構造解析に用いる回折強度データを可能な限り少ないX線量で収集し、Mn原子のX線還元を低減した構造解析を進めた。本研究では以下の5項目について研究を進めている。[1] 酸素発生機構に関与する塩素イオンをヨウ素イオンと入れ替えて化学的に還元されたOECをもつPSIIの構造解析、[2] 酸素発生に連動する電子移動を停止させる除草剤との複合体PSIIの構造解析、[3] 遺伝子操作によりPSIIの小分子量サブユニットのひとつPsbMを欠失して電子移動速度が低下した変異体PSIIの構造解析。[4]インタクトなPSIIの低X線量構造解析と、X線異常分散効果を利用したMn4Caクラスターの4個のMn原子の価数の同定。[5] フェムト秒レーザーの多光子吸収を利用したS2状態の実現とその構造解析。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」の項に記述したように、本研究の目標の内S1状態の構造の見直しは既に完了している。本年度は、昨年度までに確立した同型性の高い結晶を多数調製する技術に基づいて、[1]と[2]については、結晶に照射するX線量を従来から1桁以上低減させてX線還元問題を克服し、[1]は論文投稿中、[2]は論文準備中である。[3]については、PsbMを欠失した変異体PSIIを再度調製するのに時間を要するため、既に獲得した高いX線量における結晶構造として報告することを検討している。[4]については、Mn4Caクラスターの4個のMn原子の価数の同定に成功し(論文準備中)、入射X線量を3WU2より1桁以上小さい0.03、0.12 MGyまで低減させ、1.87、1.85オングストロームの分解能で構造解析することに成功した(論文投稿中)。 [5]についても、フェムト秒レーザーの多光子吸収を利用してPSIIのS2状態を実現させる技術の開発に成功し、多数のS2状態結晶を準備して低X線量での構造解析を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、Mn4Caクラスターを構成するMn原子のX線還元を低減させた構造解析技術が研究目標達成の鍵をにぎっている。研究目標の[1]から[4]については、目標としている結晶構造解析をほぼすべて完了しており、酸素発生活性測定、各種の分光学的測定などによる機能解析の結果を含めて論文発表を行う。なお[4]については、さらに低いX線照射量(0.01 MGy)の回折強度データを収集して、Mn原子の価数分布とOEC構造の再現性の確認を行う。[5]については、多数のS2状態の同型結晶を準備して結晶構造解析を完了させる。
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Research Products
(8 results)