2012 Fiscal Year Annual Research Report
炎症からの消化器発癌におけるゲノム・エピゲノム異常の統合的解析と生成機構の解明
Project/Area Number |
24229005
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (S)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
千葉 勉 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30188487)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸澤 宏之 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80324630)
渡邉 智裕 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40444468)
牛島 俊和 独立行政法人国立がん研究センター, その他部局等, 分野長 (90232818)
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Project Period (FY) |
2012-05-31 – 2015-03-31
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Keywords | 炎症発癌 / AID / ゲノム異常 / エピゲノム異常 / 癌幹細胞 / H.Pylori / HCV |
Research Abstract |
1.AIDにより炎症発癌過程で生じるゲノム異常の全体像の検討;マウス全exonをカバーするキャプチャーアレイを作成し、断片DNAからexonを抽出する系を構築し、AID-TGマウス肝癌のシーケンスキャプチャーを行い、全exome中のゲノム変化を同定した。 2.AIDによるエピゲノム変化の解析;消化器臓器特異的にAIDを発現させたマウスのメチル化DNAにMBD2を結合させメチル化遺伝子を抽出した後、AIDでメチル化変化が生じた遺伝子領域を絞り込んだ。 3.慢性炎症からの多段階発癌過程におけるヒト消化器臓器のゲノム・エピゲノム変化の解明;肝癌、胃癌臨床検体の全exome網羅的遺伝子解析を行ったところ、非癌部炎症部位でも遺伝子変異が蓄積していた。また染色体レベルのゲノム変化を包括的にとらえる目的で一塩基多型検出マイクロアレイによるコピー数変化の解析を進めている。 4.炎症発癌における癌細胞の発生起源としての組織幹細胞の役割の解明;消化器系幹細胞マーカーLgr5などのプロモーター依存性CreマウスとRosa26マウスを交配し、誘導性HCV-TG 、及びIL-10 KOマウスと交配することで、炎症による癌が幹細胞由来かどうかをlineage tracingで検討中である。 5.組織幹・前駆細胞への炎症刺激によりもたらされる遺伝子変化の解析;組織幹細胞をラベルしたSox9-GFPマウスを樹立し、炎症発癌過程における幹細胞の局在や増減を検討している。 6.AIDによる遺伝子異常生成の分子機構の解明;炎症でのAIDの遺伝子変化誘導機序、その際のDNA修復酵素の関与を明らかにするため、Villin -cre, ALB-creとconditional AID-TGを交配して消化器系にAIDを持続発現するマウスとconditional Msh2-KOを交配したマウスの解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目的の5項目について、1)AIDにより炎症発癌過程で生じるゲノム異常の全体像の検討:については、まずマウス全exonをカバーするキャプチャーアレイを作成し、断片DNAからexonを抽出する系を構築し、AID-TGマウスの肝癌組織のシーケンスキャプチャーを行った。2)AIDにより発癌過程に生じるエピゲノム変化の解析:では、AID発現マウスからDNAを抽出しMBD2を用いてメチル化DNAを結合させメチル化遺伝子領域を抽出し、AIDによって生じるメチル化遺伝子領域を絞り込んだ。3)染色体レベルのゲノム変化の包括的解析:では、肝癌、胃癌患者の臨床検体の全exomeの網羅的解析を行った。さらに一塩基多型検出用マイクロアレイによるコピー数変化の解析を進めている。4)炎症発癌における組織幹細胞の役割の解明:について、消化器系幹細胞マーカー依存性CreマウスにHCV-TG 、IL-10 KOマウスを交配して、炎症で発生した癌が幹細胞由来かどうかを検証中である。5)またSox9-GFPマウスを樹立し、炎症発癌過程における組織幹細胞の変化を検討している。6)AIDによる遺伝子異常生成の分子機構を解明する:についてVillin -cre, ALB-creとconditional AID-TGを交配したマウスとconditional Msh2-KOを交配したマウスによって、AIDと修復系の関係の検討を始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、上記1)2)3)については、現在の検討をさらに進めて、AIDによって生じるゲノム、エピゲノム変化の全容を解明できるようにしたい。4)炎症発癌における組織幹細胞の役割の解明、については、さらに消化器系の幹細胞マーカーを選んで、幹細胞lineage tracingが可能なマウスを作成し、そこにAIDを導入して、幹細胞の変化を可視化することによって詳細な検討をおこなう。また6)については、Cytosineがターゲットにはなっているものの、必ずしもC to T変異のみではないことから、特に修復系の関与について、AID-TGマウスに、種々の修復系遺伝子の欠損を追加して検討を始めている。今後はこれらに加えて、最近特に注目されている、AID以外のAPOGEC蛋白の影響も検討する。
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