2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24240066
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡部 勝 大阪大学, 微生物病研究所, 特任研究員(常勤) (30089875)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
磯谷 綾子 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任准教授(常勤) (20444523)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | マウス / ラット / 異種キメラ / 発生工学 |
Research Abstract |
我々は、胚盤胞にES細胞を注入した後に偽妊娠の雌に移植することによりマウスとラットのキメラ動物が生まれることを示した。これまでの観察ではキメラ動物は外見上マウスとラットの中間ではなく胚盤胞を提供した種に類似し、あたかもES細胞が別の種の細胞や組織として振る舞っている様に見える。本研究では、マウス・ラットキメラの生物学的特性やエピジェネティックな変更の可能性を解析し、自己非自己の認識について研究を行う。また、妊娠は母体が非自己である子供を自分の体内に受け入れるという特殊な系であるが、その機構については不明である。そこでマウス・ラットキメラの系を用いて母体-胎児相互認識メカニズムについても解析を試みている。 平成25年度は、同種であれば非自己でも寛容性を示すが、異種では妊娠が成立しない母体-胎児相互認識について検討した。免疫応答の関与について、ヒトの細胞も拒絶せずに生着することが確かめられている重篤な免疫不全マウスの子宮にラット胚の移植を試み検証した。その結果、免疫不全マウスにおいてもラット胚はリジェクトされることがわかった。我々はマウスとラットの異種キメラの実験から、胎盤が母体と同じ種であれば、胎児に異種の細胞が混ざっていても個体として誕生することを見つけているので、マウスの2細胞期胚で胎盤にしか発生しないテトラプロイド胚を作製し、ラットのES細胞を打ち込みラット胚の個体発生について検討中である。これまでのところ個体としてマウスからラットを産ませることには成功していない。 これらの結果より、発生における母体-胎児相互認識には免疫応答による制御だけでなく、種に固有の細胞間相互認識機構が存在していることがわかってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H25年度には、重篤な免疫不全マウスを用いた異種胚移植や、ラットES細胞を用いたテトラプロイド・コンプリメンテーションにより、母体-胎児相互認識に同種・異種を識別する機構が存在している可能性を示唆した。すなわち、非自己でも寛容性を示すと考えられていた母体-胎児相互認識に、知られていない非自己認識メカニズムの存在を示唆する成果が得られ、当初の計画通り順調に研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
1.マウス・ラットキメラの生物学的特性 マウスとラットの異種キメラを作製し、各種臓器への寄与率の偏りや、細胞の分裂速度などの種に固有性を表す指標について広く検証し、昨年度に引き続き、ラットの細胞が集団としてマウスの様に振る舞っている可能性について、そのメカニズムと共に検討を加える。 2.異種細胞のエピジェネティックな変更の可能性への検証 マウスとラットの異種キメラ内において、周りの環境に影響されて発生・分化する生殖細胞がそれぞれの種でどのようにふるまうのかをエピジェネティックな変化も含め、詳細に解析する。 3.異種胚を用いた母体-胎児相互認識メカニズムの解析 マウス・ラットキメラ動物体内ではマウスとラットの細胞が共存しており、両種の細胞に対して免疫的に寛容になっている。このような異種キメラが母体である場合、この体内でマウスやラットの胚がどのように発生するのかを検討することにより種の隔壁がどのあたりに存在するのかを検証する。また、昨年度に引き続き胎盤には寄与するが胚胎には寄与しないテトラプロイド胚を用い、着床時の母体-胎児相互認識をバイパスさせた系でマウス母体内におけるラット胚の発生を検討する。
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Research Products
(3 results)