2012 Fiscal Year Annual Research Report
事故・災害と安全基準構築に関する比較科学技術史的研究
Project/Area Number |
24240106
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋本 毅彦 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (90237941)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 拓司 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (30262421)
廣野 喜幸 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (90302819)
鈴木 淳 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (80242048)
梶 雅範 東京工業大学, 社会理工学研究科, 准教授 (00211839)
鈴木 晃仁 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (80296730)
柿原 泰 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 准教授 (60345402)
金 凡性 広島工業大学, 環境学部, 准教授 (30419337)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 科学史 / 技術史 / 安全基準 / 自然災害 |
Research Abstract |
平成24年度は、7月、9月、3月に研究会を開催した。 橋本毅彦は、9月に米国ワシントンDCの航空宇宙博物館と米国ケンブリッジのマサチューセッツ工科大学資料室を訪問し、初期の航空史における強度基準・安全基準制定の歴史に関して、基本的ならびに重要な知見を得ることができた。米国においては第一次世界大戦後、陸軍を中心に強度基準が作り出されたが、1920年代後半になり民間航空機にも適用されるようになった。それとともに民間の航空事業を成り立たせるための、さまざまな基準設定や資格制度が制定されていった。その制定の歴史には、航空機の大小の事故が関係していることも知ることができた。この調査の成果は9月の研究会において発表した。 3月の研究会においては、参加者の岡本拓司東京大学准教授、本プロジェクトの研究協力者で保険の歴史の専門家である神谷久覚氏に発表して頂いた。岡本氏は「原子力安全にかかわる学問の特徴」について報告。日本における戦後の電気事業再編の経緯と事業全体の構図を紹介したうえで、安全工学、とりわけ確率論的安全性評価の分野を原子力安全の問題が牽引してきたことを指摘し、その現状と問題群を考察した。神谷氏は「船舶保険における安全性評価と海難事故分析」について報告。海上保険制度の歴史とその仕組みを簡単に紹介したうえで、保険料率算定で考慮される要素を解説し、野島崎東方“魔の海域”における海難の事例をとりあげ、海難事故分析の具体的な過程を紹介した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度、研究会を3回開催し、最初と第二回の会合で、研究目的と参加者の作業内容について、だいたいの合意を得ることができた。第二回、第三回の会合では、それまでの研究の成果が発表され、目的に沿うテーマ内容について参加者の間で知識と情報の共有をすることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度9月に代表者が、航空機の安全性に関する初期の歴史を発表したが、それとともに、航空機とその運用をめぐる安全基準の制定の歴史を一つのモデルとして、各参加者の方々にもシステムを安全・安定に運行させていくための基準の制定を、通時的・共時的に描いていってもらうことを要請した。 今年度は、9月に2回、3月に1回、研究会を開催する予定である。9月には、日本規格協会会長田中正躬氏、東京大学生産技術研究所特任助教中村晋一郎氏、本プロジェクト参加者の鈴木晃仁氏に発表をして頂く予定になっている。田中氏は、規格協会の会長を務めるとともに、経産省(通産省)の経歴とともに、国際標準化機構の責任者を務めた経験ももっていらっしゃる。その経験から内外の標準化の諸活動と制度に関して知見を提供して頂く予定である。中村氏は、日本の戦後の治水技術の歴史的発展について研究を進めていらっしゃり、研究内容をご発表頂く予定である。本プロジェクトの研究協力者の中澤聡氏にもまた、内外の治水技術・管理の歴史をより広いタイムスパンから研究してもらっており、知見や情報の交換をしてもらうことになっている。鈴木氏には、労働者の疲労に関する研究の発展から安全基準制定の歴史を発表して頂く予定である。 今年度、安全基準や関連の規格を制定する現場や、工学研究の立場から関心をもっている方々に知見の提供をして頂く機会をもてることになったが、今後もそのような知見提供を可能な範囲で依頼していこうと思っているところである。
|