2013 Fiscal Year Annual Research Report
自然史系博物館等の広域連携による「瀬戸内海の自然探究」事業の実践と連携効果の実証
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24240113
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Research Institution | Osaka Museum of Natural History |
Principal Investigator |
波戸岡 清峰 大阪市立自然史博物館, その他部局等, 研究員 (70250256)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 惣 大阪市立自然史博物館, その他部局等, 研究員 (50435880)
山西 良平 大阪市立自然史博物館, その他部局等, 研究員 (70132925)
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Project Period (FY) |
2012-05-31 – 2017-03-31
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Keywords | 連携 / 瀬戸内海 / 市民参加 / 標本 / 生物目録 / 特別展 |
Outline of Annual Research Achievements |
大阪市立自然史博物館や協力機関の収蔵標本、資料、情報をもとに大阪湾に関する特別展を開催し(7月~10月)、大阪湾の自然について広く市民に紹介した。今回の特別展を、大阪湾を囲む博物館・水族館7施設の連携による事業の一つとし、展示物の一部を終了後、連携施設で展示するとともに、講演会、観察会、実習等を行い、それらの普及教育効果の有用性を検討した。特別展解説書の制作にあたっては、その研究成果の一つとして、瀬戸内海東部に位置する大阪湾の生き物の目録を作成した。 また、西日本自然史系博物館ネットワークの研究会において、連携の有効性の検証を含む大阪湾の特別展の報告を行うとともに、愛媛県の魚類標本目録や標本資料の現状について研究協力者が発表した。 瀬戸内海全体の生物相調査を行うにあたって、連携機関の協力者とともに今後の方針を検討し、各地域の標本や資料に関する情報交換を行った。地域によりその研究成果や資料の量にかなりの違いのあることが分かった。さらに情報交換を進めるため、メーリングリストを立ち上げた。 現地の調査としては、瀬戸内海の生物相研究の端緒となる「瀬戸内海の生物相」を出版した広島大学理学部付属(現在は大学院理学研究科附属)向島臨海実験所を訪れ、標本を含む資料の調査を行った。また、福山大学内海生物資源研究所を訪れるとともに、福山市周辺の備後灘の魚類の調査・採集を行った。その他、ロンドン自然史博物館を訪問し、イギリス調査船チャレンジャー号収集(1875年)の瀬戸内海産魚類・ベントスの標本収蔵状況を調査し、それらのリスト作成と同定をおこなった。 他館と連携した観察会形式による市民参加型の資料採集・生物相調査のケーススタディとして平成25年に計画していたが、台風などの悪天候で中止した大阪湾の底引き網漁の生き物観察会(平成25年度繰越分)を平成26年度(10月)に実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回の大阪湾の特別展は大阪湾を囲む博物館・水族館7施設の連携による事業の一つとして位置づけたが、連携機関を通しての個人や団体からの展示物(例えば漁網)、標本などの提供もあり、非常に充実した展示となった。また、学芸員の調査研究をベースに地域自然史をテーマにすえた特別展としては比較的多くの観覧者があったこともこれを裏付ける。さらに、特別展終了後に展示物の一部を連携施設で展示することにより、将来予定されている巡回型展示の試行と効果の検証を行うことができた。 大阪湾展における大阪湾周辺以外の機関の連携という点では、今回の研究のベースにもなっている西日本自然史系博物館ネットワークの1機関として以前より連携のある博物館からの常設展展示物の借用があったが、借用は問題はなくスムーズに行われ、連携の重要性が確認された。 平成26年度(10月)に実施した大阪湾の底引き網漁の生き物の観察会では参加者へのアンケート調査も含めてその効果を検証したが、このような観察会は資料採集・生物相調査にとって有効であることがわかった。また、地域の人々が周りの自然を理解する上でも、連携により可能となる多分野の講師の指導による現地での観察会は有効であることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
調査研究の内容が特別展へと展開するよう、引き続き瀬戸内海の生物相解明を中心とした調査研究を推し進める。そのために、これまでの予備調査および連携機関・研究者からの情報に基づき、生物各分類群についての文献収集およびそのデータベース化、瀬戸内海のベースマップの作成、既存の標本類の収蔵状況調査、また、各博物館が所蔵している将来の特別展における展示可能な展示リソースの調査などをより一層推進させる。現地調査については、魚類や海産無脊椎動物について、未調査の箇所を中心に行い、連携研究者の協力のもと水鳥類や海浜性の植物や昆虫の調査も行う。 博物館などの連携による市民参加型の観察会や採集・調査の例として漁船によるすべての漁獲生物を対象とした観察会を山口県で、可能であればもう一カ所(笠岡市もしくは今治市)で行い、大都市近郊である大阪湾での観察会との比較を行うとともに、連携の有効性についての検討を推し進める 年度末には、調査をもとに、瀬戸内海の自然に関する特別展の内容などの予備的な検討を行う。
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Research Products
(7 results)