2013 Fiscal Year Annual Research Report
磁気分離を活用した生物学的水処理技術の新領域の創成
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24241021
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
酒井 保蔵 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70186998)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩渕 和則 北海道大学, 学内共同利用施設等, 教授 (00193764)
前田 勇 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (10252701)
小原 健司 金沢工業大学, 工学部, 教授 (20354318)
井原 一高 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (50396256)
渡辺 恒雄 首都大学東京, 理工学研究科, 研究員 (90240499)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 磁化活性汚泥 / 磁気分離 / 生物学的水処理法 / 標準実験装置 / 酪農廃水処理 / 食品廃水処理 / 硝化脱窒 / 汚泥削減 |
Research Abstract |
(1) 磁気分離を利用した生物学的水処理実験装置の標準化と普及:5Lの標準装置を試作し改良を進めた。畜産草地研究所や水処理企業との共同研究に、この成果が活用され、硝化脱窒プロセスや高濃度食品廃水処理の応用研究に発展した。 (2) 先進的な研究の推進:高濃度SSを含む酪農廃水への適用を、酪農家および水処理企業の協力を得て検討し、磁気分離によるSS成分の除去について実証研究につながる知見を得た。SS成分除去後、従来の1/3以下の時間で水処理できることも分かった。難分解性廃水処理では、界面活性剤含有排水等への適用を検討した。これらの成果はインドネシアで進められた工場廃水の磁化活性汚泥による直接処理の実証研究に活用された。放射性汚泥の除染では、汚泥に磁気シーディングし、磁化活性汚泥とした後、磁気分離で汚泥中の非磁性粘土物質を脱離させられることを明らかにした。一方、放射性粘土物質が弱磁性を有する場合、脱離が難しいこともわかった。磁気分離装置開発では、ネオジム磁石を用いた市販の強磁性クーラントセパレータが磁化活性汚泥の分離装置として有望であることを明らかにした。 (3) 国内外における研究者ネットワークの構築:電気学会「医療・バイオ・環境分野における磁気力制御技術」協同研究委員会の委員長、「超電導磁気分離システムを利用した除染技術」調査研究委員として活動し(委員会8回)、25年度秋季電気学会でシンポジウムセッションを開いた。磁気力制御・磁場応用夏の学校の開催に協力し、「磁気シーディング」を講義した。国外ではバングラデシュで開催された国際会議で基調講演・座長、磁気力制御国際フォーラムで座長、国際フェライト会議で招待講演を引き受けるなど国内外で研究交流・ネットワーク構築に努めた。ダッカ大のサハ教授を招聘し国際共同研究を行ない、また、インドネシア企業と本研究成果による共同研究も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究が掲げた目的は3つある。まず、磁気分離と生物学的水処理法の複合分野が未開拓で、研究に必要な実験装置が入手できないだけでなく、異分野のため自作も困難ということから、磁気分離を利用した生物学的水処理装置をこれまでの研究成果を基に標準化し、磁化活性汚泥法による水処理の研究を簡単に実施できるようにすることで当該研究分野の開拓の基盤を創成することである。5Lの反応槽と回転ドラム型磁気分離装置をもつ、磁化活性汚泥の標準装置がほぼ完成し、耐久性や使い勝手の点で完成度を上げる段階に到達した。既に、畜産草地研究所の研究者や、水処理企業の研究者に同型の装置を提供したところ、磁気分離と生物処理の複合技術の意外な進歩性を理解してもらい、共同研究が開始された。畜産草地研究所では生物処理装置として応用的に活用しており、更に拡大した用途への活用も期待される。この点では当初の達成度をも上回っていると思われる。 同時に、磁化活性汚泥法のパイオニアとして先行的に技術開発を進める第2の目的について、酪農廃水処理の実証研究に向けた大きな進展、食品廃水処理に関する磁化活性汚泥法の適用研究、実用規模の磁化活性汚泥分離装置のベースになる高性能磁気分離装置の認知があった。工学分野であるため、技術の実用化は非常に重要であるが、それにつながる大きな発展があったと言える。一方で、菌叢解析や嫌気処理への応用など、基礎研究で課題が残された。 磁気分離の応用技術を啓発・発展させてゆくために研究者ネットワークを構築、育成してゆく第3の目的については、電気学会の共同研究委員長を務め、シンポジウムを開催、国際会議に参加するだけでなく、座長などを務め、磁気分離技術の啓発を進めることができた。国際共同研究や、海外教員の2カ月間の招聘など、国際的な活動も展開できた。 これらの点を総合して2年目としては計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は本課題研究の最終年度に当たる。本研究で磁気分離を利用した生物学的水処理実験のための標準装置を完成させることが第一目的である。すでに、プロトタイプの提供が開始されているが、水処理研究者や企業に広く声をかけて、磁気分離による水処理技術の革新に興味をもつ研究者に提供して、共同研究を模索してゆく予定である。 パイオニアとしての先進的な研究については、水処理の新技術として実用装置がなければ、本格的な学術分野の開拓もないと考えており、磁化活性汚泥法の実用プラントの開発につながる技術課題を基礎研究の面で解決する手法を検討してゆく。また、原理的には、メタン発酵法のような嫌気処理の方が省エネな水処理であることから、メタン発酵と磁化活性汚泥法の組合せについても先行的な研究として進めて行く予定である。菌叢解析についても、学術的には基礎的な研究分野であり、引き続き、検討を進めて行きたいと考えている。放射性汚泥の除染については、汚泥を磁化活性汚泥として除染する手法に限界があることが分かった、一方で、単純に、弱磁性粘土物質を強磁場で分離することである程度の除染が見込めることから、本研究と切り離し、除染への磁気分離応用として別の研究課題で挑戦することとした。 研究者ネットワークの構築については、複合分野にまたがる新技術であることから、水環境学会だけでなく、電気学会、超電導・低温工学会、磁気科学会、畜産学会、農業施設学会など幅広い分野の学会活動に参加し、磁気分離を活用する研究者ネットワークを構築してゆきたい。磁気力制御、磁場応用夏の学校は宇都宮開催が決まっており、主催者として磁化活性汚泥研究の裾野の拡大に活用したい。国際的な共同研究も継続し、バングラデシュやインドネシアでの磁化活性汚泥法の研究立ち上げだけでなく実用化も将来的には目指したい。
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Research Products
(37 results)