2014 Fiscal Year Annual Research Report
アラブ世界の都市部中流層文化とアラビアンナイト―エジプト系伝承形成の謎を解く
Project/Area Number |
24242013
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
西尾 哲夫 国立民族学博物館, 民族社会研究部, 教授 (90221473)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉田 英明 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (90179143)
小田 淳一 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (10177230)
青柳 悦子 筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 教授 (70195171)
鷲見 朗子 京都ノートルダム女子大学, 人間文化学部, 教授 (20340466)
永崎 研宣 一般財団法人人文情報学研究所, 人文情報学研究部門, 主任研究員 (30343429)
菅瀬 晶子 国立民族学博物館, 研究戦略センター, 助教 (00444141)
岡本 尚子 国立民族学博物館, 民族社会研究部, 外来研究員 (90600817)
相島 葉月 国立民族学博物館, 民族社会研究部, 外来研究員 (40622171)
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Project Period (FY) |
2012-10-31 – 2017-03-31
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Keywords | アラビアンナイト / 千一夜物語 / 中東 / イスラム / アラブ / 写本 / 国際研究者交流 / 多国籍 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではアラビアンナイト形成に関する以下の研究項目を実施した。 1 文学伝統の地域民衆化で形成された写本群の分類と系統の分析として、とくにシンドバード写本と百一夜物語写本の分析を継続するとともに、前者についてはキリスト教徒による中世写本を新たに発見し、後者についても失われたと従来考えられていた写本を再発見し、デジタル画像化するとともに校訂作業をおこなうこととした。また従来の写本についてもガラン訳以前の写本と推定される事実を発見し、本文形成に関する新たな知見を得ることができた。 2 地域民衆の口語が文字化された中間アラビア語の歴史的実態と民衆文学変容の分析として、(1)「カルカッタ第二版」の計量文献学的分析と民衆文化語彙索引の作成、(2)国民共通語としての中間アラビア語使用実態の分析とそのための海外調査、(3)国民共通文化形成における民衆文化の現代的変容の分析とそのための海外調査を実施した。とくにモロッコ、イスラエルで現地調査をおこなった。なお予定していたエジプトについては政情不安定のため調査を延期した。 3 アラビアンナイトをめぐるヨーロッパ的文学伝統の物語伝承への影響の比較分析として、(1)マルドリュス遺贈コレクションの調査とマルドリュス版形成過程の分析とそのための海外調査、(2)アラブ世界での再受容と文学伝統の関係の分析とそのための海外調査、(3)日本での受容と文学伝統の関係の分析を実施した。とくにフランスにてマルドリュス遺贈コレクションのカタログ編集作業を集中的におこなった。 国際会議等の発表による研究成果の国際発信に関して特筆すべきこととして、ワシントンで開催されたアメリカ人類学会(AAA)にて、相島葉月が国際的に著名な研究者と共同でセッションを持ち発表をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1 文学伝統の地域民衆化で形成された写本群の分類と系統の分析に関して言えば、昨年度に引き続きシンドバード写本についてキリスト教系の新たな系統に属する写本を発見したほか、百一夜物語に関してこれまでは失われたと考えられていた写本を再発見した。また、従来の研究ではガラン訳以降か以前か作成年代が不確定であった幾つかの写本について様々な情報をもとに作成年代を推定することができ、本文形成に関する新たな知見を得た。これらのことによって、アラビアンナイト写本研究を国際レベルでリードすることが可能となっている。 2 地域民衆の口語が文字化された中間アラビア語の歴史的実態と民衆文学変容の分析に関して言えば、(1)「カルカッタ第二版」の計量的分析は順調に進んでおり、民衆文化語彙索引の出版に向けて編集作業中である。(2)国民共通語としての中間アラビア語使用実態の分析とそのための海外調査、(3)国民共通文化形成における民衆文化の現代的変容の分析とそのための海外調査については、予定していたシリアやエジプト、リビアについて政情不安のために調査を延期しなかればならない状況にあるが、モロッコあるいはイスラエルで調査をおこなうことができ、現地研究者との情報交換をふくめて新たな知見をえることができている。 3 アラビアンナイトをめぐるヨーロッパ的文学伝統の物語伝承への影響の比較分析に関して言えば、とくにマルドリュス遺贈コレクションの調査については、ほとんどすべての文献を調査することができ、カタログを編集中であり、フランスと中東の関係についても研究が進展することが期待される。 上記のことを総合すると、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も研究方法を継続して課題の解明を図るとともに、研究成果の発信につとめる。 1 文学伝統の地域民衆化で形成されたエジプト系写本群の分類と系統の分析として、(1)全エジプト系写本中の物語構成情報データベースの作成(西尾担当)、(2)新発見の非標準写本の校訂出版と系統の分析(西尾・鷲見担当)、(3)非標準伝承になる物語の系統分析(西尾・鷲見・小田担当)を実施する。これらは全期間にわたる研究であり、順次他の写本を対象とする。 2 地域民衆の口語が文字化された中間アラビア語の歴史的実態と民衆文学変容の分析として、(1)「カルカッタ第二版」の計量文献学的分析と民衆文化語彙索引の作成(永崎・中道(研究協力者)担当)、(2)国民共通語としての中間アラビア語使用実態の分析とそのための海外調査(鷲見・西尾・中道(研究協力者)担当)、(3)国民共通文化形成における民衆文化の現代的変容とそのための海外調査(菅瀬・相島担当)を実施する。 3 アラビアンナイトをめぐるヨーロッパ的文学伝統の物語伝承への影響の比較分析として、(1)マルドリュス遺贈コレクションの調査とマルドリュス版形成過程の分析とそのための海外調査(岡本・小田・西尾担当)、(2)アラブ世界での再受容と文学伝統の関係の分析とそのための海外調査(鷲見・青柳・杉田担当)、(3)日本での受容と文学伝統の関係の分析(杉田担当)を実施する。 得られた結果をもとにして国際研究集会をフランスで開催し、国際発信をおこなう。また研究成果のとりまとめとして、とくに民衆文化語彙索引編集ならびにマルドリュス遺贈コレクションのカタログ編集を集中的におこなう。※中間アラビア語研究者として中道静香を研究協力者として参加させる。※アラブ世界は現在、広域にわたって政情が不安定な状況にあるため、上記の海外調査は調査者の安全を考慮し、調査地域や日程を変更する可能性がある。
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Research Products
(41 results)