2015 Fiscal Year Annual Research Report
アラブ世界の都市部中流層文化とアラビアンナイト―エジプト系伝承形成の謎を解く
Project/Area Number |
24242013
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
西尾 哲夫 国立民族学博物館, 研究戦略センター, 教授 (90221473)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉田 英明 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (90179143)
小田 淳一 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (10177230)
青柳 悦子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (70195171)
鷲見 朗子 京都ノートルダム女子大学, 人間文化学部, 教授 (20340466)
永崎 研宣 一般財団法人人文情報学研究所, 人文情報学研究部門, 主席研究員 (30343429)
菅瀬 晶子 国立民族学博物館, 研究戦略センター, 准教授 (00444141)
岡本 尚子 国立民族学博物館, 研究戦略センター, 外来研究員 (90600817)
相島 葉月 国立民族学博物館, 先端人類科学研究部, 准教授 (40622171)
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Project Period (FY) |
2012-10-31 – 2017-03-31
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Keywords | アラビアンナイト / 千一夜物語 / 中東 / イスラーム / アラブ / 写本 / 国際研究者交流 / 多国籍 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではアラビアンナイト形成に関する以下の研究項目を実施した。 1 文学伝統の地域民衆化で形成された写本群の分類と系統の分析として、前年度の調査で新たに発見した、キリスト教徒によって書かれたシンドバード写本と、同じく失われたものを再発見した百一夜物語写本を分析し、刊行にむけた校訂作業をおこなった。またガラン訳以前に書かれたと推定される、いわゆる「黒檀の馬」物語の独立した写本を発見したが、これの分析によって百一夜物語とアラビアンナイト(千一夜物語)のミッシングリンクを解明するための知見を得ることができた。 2 地域民衆の口語が文字化された中間アラビア語の歴史的実態と民衆文学変容の分析として、(1)「カルカッタ第二版」の計量文献学的分析と民衆文化語彙索引の作成、(2)国民共通語としての中間アラビア語使用実態の分析、(3)国民共通文化形成における民衆文化の現代的変容の分析とそのための海外調査を実施した。とくにアラブ世界との比較分析のために、イランの民衆文化ならびにカナダ移民社会の民衆文化の状況に関する調査をおこなった。 3 アラビアンナイトをめぐるヨーロッパ的文学伝統の物語伝承への影響の比較分析として、(1)マルドリュス遺贈コレクションの調査とマルドリュス版形成過程の分析とそのための海外調査、(2)アラブ世界での再受容と文学伝統の関係の分析、(3)日本での受容と文学伝統の関係の分析を実施した。とくにフランスにてマルドリュス遺贈コレクションのカタログ刊行に向けた編集作業をおこなった。 研究成果をめぐる研究者との共有化の推進とその国際発信に関して特筆すべきこととして、カナダ及び中国の研究者と研究交流をおこなったこと、中東地域における民衆文化の研究者を英国等から招へいして国際ワークショップを開催したことがあげられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1 文学伝統の地域民衆化で形成された写本群の分類と系統の分析に関して言えば、アラビアンナイト成立に関する画期的な新仮説を提示して新発見のシンドバード写本を紹介・分析し、中東地域の民衆文学の社会的位相に関する新たな視点を開拓した。創発的な研究の方向性として、シンドバード航海記の成立過程と多元的価値共創文学の可能性に関する物語情報学的研究を実施する準備となった。 2 地域民衆の口語が文字化された中間アラビア語の歴史的実態と民衆文学変容の分析に関して言えば、「カルカッタ第二版」の計量文献学的分析については順調に進んでおり、民衆文化語彙索引については海外の出版社からの刊行に向けた編集作業の最終段階にある。国民共通語としての中間アラビア語使用実態の分析ならびに、国民共通文化形成における民衆文化の現代的変容の分析とそのための海外調査については、中東世界での政情不安定のために調査地を変更せざるを得ない状況にあるが、アラブ世界以外の地域での調査により比較分析するための重要な成果を得ることができた。 3 アラビアンナイトをめぐるヨーロッパ的文学伝統の物語伝承への影響の比較分析について言えば、マルドリュス遺贈コレクションのカタログをフランスの出版社から刊行する予定であり、これによって研究成果を国際的に発信できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も研究方法を継続して課題の解明を図るとともに、研究成果の発信につとめる。 1 文学伝統の地域民衆化で形成されたエジプト系写本群の分類と系統の分析として、(1)全エジプト系写本中の物語構成情報データベースの作成(西尾担当)、(2)新発見の非標準写本の校訂出版と系統の分析(西尾・鷲見担当)、(3)非標準伝承になる物語の系統分析(西尾・鷲見・小田担当)を実施する。 2 地域民衆の口語が文字化された中間アラビア語の歴史的実態と民衆文学変容の分析として、(1)「カルカッタ第二版」の計量文献学的分析と民衆文化語彙索引の作成(永崎・中道(研究協力者)担当)、(2)国民共通語としての中間アラビア語使用実態の分析(鷲見・西尾・中道(研究協力者)担当)、(3)国民共通文化形成における民衆文化の現代的変容の分析(菅瀬・相島担当)を実施する。 3 アラビアンナイトをめぐるヨーロッパ的文学伝統の物語伝承への影響の比較分析として、(1)マルドリュス遺贈コレクションの調査とマルドリュス版形成過程の分析とそのための海外調査(岡本・小田・西尾担当)、(2)アラブ世界での再受容と文学伝統の関係の分析(鷲見・青柳・杉田担当)、(3)日本での受容と文学伝統の関係の分析(杉田担当)を実施する。 得られた結果をもとにして、国際研究集会を開催し、国際発信をおこなう。また研究成果のとりまとめとして、とくに民衆文化語彙索引ならびにマルドリュス遺贈コレクション・カタログを海外の出版社から刊行するための準備作業をおこなう。※中間アラビア語研究者として中道静香を研究協力者として参加させる。※アラブ世界は現在、広域にわたって政情が不安定な状況にあるため、上記の海外調査は調査者の安全を考慮し、調査地域や日程を変更する可能性がある。
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Research Products
(35 results)