2014 Fiscal Year Annual Research Report
戦後アジアにおける欧米諸国の開発援助戦略とアジアの自立化に関する総合的研究
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24242023
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
渡辺 昭一 東北学院大学, 文学部, 教授 (70182920)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
都丸 潤子 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (00252750)
木畑 洋一 成城大学, 法学部, 教授 (10012501)
秋田 茂 大阪大学, 文学研究科, 教授 (10175789)
横井 勝彦 明治大学, 商学部, 教授 (10201849)
前川 一郎 創価大学, 教養学部, 教授 (10401431)
山口 育人 奈良大学, 文学部, 准教授 (20378491)
宮城 大蔵 上智大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (50350294)
菅 英輝 京都外国語大学, 外国語学部, 教授 (60047727)
宮田 敏之 東京外国語大学, その他部局等, 教授 (70309516)
佐藤 滋 東北学院大学, 経済学部, 准教授 (90616492)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 戦後アジア国際秩序 / グローバル化 / コモンウェルス / 開発援助 / アジアの自立 / 冷戦 / 開かれた地域主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の課題は、冷戦秩序体制を究明する一環として、戦後アジアの政治経済秩序形成において欧米諸国の開発援助戦略がいかなる役割を果たしたのかについて究明することにある。すなわち、イギリス帝国の終焉(脱植民地化)過程においてイギリスがめざしたコモンウェルス体制の再編による世界戦略を基礎に据えながら、国連、世界銀行、アメリカ合衆国、日本、ヨーロッパ諸国そして共産圏諸国も加わった開発援助競争のもとで、これら欧米諸国がアジア諸国への実行支配を温存・拡大させようとする一方で、被援助国のアジア諸国が、その動きを逆手にとって、その援助を最大限利用しつつ政治経済的に自立し、「開かれた」地域主義の担い手として登場してくる構造を一次史料に基づいて明らかにすることを目的としている。 この研究課題を追及するに当り、プロジェクト実施の3年目に当る当該年度は、①前年度に引き続き、イギリス、アメリカ合衆国の公文書館、世界銀行の関連図書館をはじめ、インド、オーストラリア、タイなどアジア諸国の公文書館での一次史料の調査・収集に努めつつ、その史料分析に力点を置いた。また、②オーストラリア、台湾、アメリカ、スイスから関連分野の研究者を迎え国際ワークショップを開催するとともに、東京及び仙台において国内研究会を開催し、各分担研究者の研究成果と今後の課題を確認した。 これまで収集した一次史料の分析から、援助国側の開発戦略の多様性と同時に受け手側の受容戦略の多様性を確認できた。特に南アジア地域に対する世界銀行を中心としたインドコンソーシアムの活動及び最大の援助国であったアメリカの援助の実態、更には、インドに対する技術援助とそれに伴うインドの周辺国家に対するハブとしての新たな機能などを明らかにした。この成果を同志社大学で開催された社会経済史学会のパネルにおいて発表し、南アジア地域における地域的特性を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究計画に示した目的は、ほぼ順調に達成できた。 ①各分担研究者による対象地域に関する一次史料の調査・収集とその資料分析が一定の成果を上げつつあること、②2014年度の社会経済史学会全国大会でのパネルデスカッション報告を行い、その成果を投稿中であること、そして、③海外研究者との連携により、国際ワークショップを開催して、2015年8月京都で開催予定の第17回国際経済史学会のセッション報告を準備中であること、さらには、④2015年11月に仙台で開催予定の日本国際政治学会での部会及び分科会での報告申請が採択され、東アジア及び東南アジアにおける開発援助戦略の研究成果を報告する準備をしていることなどの理由による。 国内学会や国際学会での発表に向けて、特に3月に東京で開催した海外研究者との国際ワークショップでは、研究課題の目的や意義さらには研究方法などについて、率直な意見交換ができたことは非常に大きな成果があった。分担研究者とともに研究課題達成のための最良の視座や方法を共有できた。また、個別研究に関する研究会についても、予定通り実施でき、分担研究者の進捗状況と達成度を共有しつつ、最終的課題を確認することができた。すなわち、1960年代の冷戦体制の緊迫化の中で、南アジア、東南アジア、東アジアにおいて繰り広げられた欧米諸国の開発援助戦略の動向とその特質について概要を確認することができた。 ただ対象領域・国によっては、史料収集・閲覧に制限があるために、今後更なる調査・収集を継続していくことにした。また、研究領域の広がりからも、新たな史料調査をしなければならないことも確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年8月に京都で開催予定の第17回世界経済史学会でのセッション報告に向けて、より充実した発表にするためより課題の精査を行う予定でいる。また、10月末から11月初旬にかけて仙台で開催される日本国際政治学会での部会及び分科会報告についても同様である。 こうした発表にむけて、次のことを準備している。すなわち、①世界経済史学会の報告予定者であるオーストラリア、台湾、アメリカの研究者との間で、報告内容に関する相互連関について最終確認をする。②日本国際政治学会での報告担当者間での報告内容を精査する。③各分担研究者の最終的成果についての見通しを確認しつつ、プロジェクト全体の課題との関連性を追及していく。④研究成果の一部について、東北学院大学において一般を対象とした公開講座を開催し、研究課題の意義を広く周知するとともに、新たな見解を知る機会を設ける。なお、テーマの広がりが想定されるために、引き続き史料収集に努める。 以上の方法をとりながら、最終的成果の公開手段として、著書出版に向けて準備をする。そのため、より一層の内容精査のための研究会を開催する予定でいる。同時に各分担者にあっては、個別論文等での成果報告にも努めていく。さらには、今回のプロジェクトの研究対象外にあった1973年のオイルショック以降における国際開発援助戦略とアジア諸国の自立的発展過程について、今回の成果を踏まえながら新たなプロジェクトとして追求していく予定でいる。
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Research Products
(3 results)