2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24242037
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
竹沢 尚一郎 国立民族学博物館, 民族文化研究部, 教授 (10183063)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂井 信三 南山大学, 人文学部, 教授 (00140012)
大稔 哲也 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (10261687)
杉村 和彦 福井県立大学, 学術教養センター, 教授 (40211982)
北川 勝彦 関西大学, 経済学部, 教授 (50132329)
鈴木 英明 長崎大学, 多文化社会学部, 准教授 (80626317)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アフリカ史 / 世界史 / 交易史 / 考古学 / 経済史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は国内で研究会を2回開催した。最初の研究会はアフリカ史研究者のみが出席したものであり、一般に歴史を持たないとされてきた森林地帯に住む採集民の歴史をどのように捉えていくかを、具体的な方法に沿って論議したものである。文字をもたなかった人びとの歴史であるので、農耕史、生態史、地理学等の知識を重層化して理解を深めていくことが不可欠であることが明らかになった。 もう一回の研究会は、アフリカ史研究者と東洋史研究者が合同で開催したものである。その中では、2つの領域をどう接続していくか、またヨーロッパ史との関係をどう理解していくかを中心に話し合われた。また、今後この種の合同の研究会を継続していくことが望まれることも確認された。 今年度は、西アフリカ・マリ共和国とフランスに海外出張し、マリで1回、フランスで1回、研究会を組織した。これらは西アフリカ史理解の深化のために考古学をどう活用するかに関するものであった。マリ大学で実施した研究会では、500人を超える教員、学生が集まり、マリにおける私たちの考古学発掘の成果に対する関心の高さが明らかになった。 フランスで実施した研究会は、アフリカ考古学者の集まりでおこなったものであり、主として文字資料に基づく歴史研究と、物質文化の変化を中心に実施する考古学学研究との間の差異と、両者の接続方法について検討した。 本年度中に、これまでの研究成果の一部である竹沢尚一郎著『西アフリカの王国を掘る』を臨川書店から出版し、新聞等の書評では公表をもって迎えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、3つの研究の柱があった。1.複数の研究会を実施することで、研究分担者や連携研究者を含めた班員各自の相互理解を深めること。 2.西アフリカで考古学の発掘調査を実施することで、相手国の考古学の発展に寄与すると同時に、アフリカ史記述のためのオリジナルなデータを入手すること。また、その成果を逐次発表していくこと。 3.これまでの研究の成果を、日本語及び外国語で出版し、学会と社会に広く伝えていくこと、である。 1は当初の計画通りに進んだ。一方、2については、西アフリカの研究予定地でエボラ出血熱が発生したために、11月から海外出張する予定が変更になり、ようやく2月に渡航して、これまでの研究成果の分析と、出版に向けての話し合いを実施した。そのため、海外の出版社からこれまでの成果を外国語で出版する予定であったが、半年ほど遅れている。 一方、日本語での研究成果の出版に関しては、研究組織のメンバーが執筆する論文集を現在準備中である一方、研究代表者の単著が出版されており、おおむね順調な進展であると考えることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度に向けて、現在、日本語とフランス語で論文集を準備中である。日本語の論文集は『世界の中のアフリカ史』と題する予定であり、北、西、東、中央、南部のアフリカの地域ごとに、世界の他地域との関係のもとで、どのような経済発展や政治組織の変革があったかをたどる予定である。また、従来個別に取り扱われてきた、生態史、農耕史、交易史、宗教史、等の知識を総合する方法についても、理解を深めていく予定である。 フランス語による論文集は、これまで十年にわたってマリ共和国で実施してきた考古学の発掘調査を総括するものであり、10篇の論文からなる予定である。マリ共和国にかぎらず、アフリカ諸国の考古学はエジプトを除いていちじるしく限定され、かつ遅れているため、この論文集が出版されたなら、アフリカや日本のみならず、世界の考古学界において大きな貢献となるはずである。 アフリカの社会の多くは、近代を除いて無文字社会であったので、アフリカ史記述は大きな困難をそのはじめから抱えている。そんため、考古学、環境史、農耕史、経済史、交易史などの知見を総合的に判断していくことが求められており、本研究はその課題に正面から答えることをめざして、斬新な方法論をつくり出していきたいと考えている。
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Research Products
(4 results)