2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24243027
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉川 洋 東京大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (30158414)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
家富 洋 新潟大学, 自然科学系, 教授 (20168090)
青山 秀明 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40202501)
藤原 義久 兵庫県立大学, シミュレーション学研究科, 教授 (50358892)
相馬 亘 日本大学, 理工学部, 准教授 (50395117)
渡辺 努 東京大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (90313444)
|
Project Period (FY) |
2012-10-31 – 2015-03-31
|
Keywords | マクロ経済 / エコノフィジックス / 労働生産性 / エントロピー / 分布 / 新古典派 / 負の温度 / 実証分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)Credit Risk Databaseの大規模データを用いて,企業の労働生産性に関する新しいスケーリング則を発見して,その数理的な構造を明らかにした上で,労働生産性とそれに関連する分布の関数に制限が課されていることを見出した。同じデータを使い,大企業のみならず中小企業の全要素生産性を計測し,全要素生産性と企業成長の関係について分析した。また,労働生産性と知識の空間分布を把握するシステムを構築し,クラスター政策や第4期科学技術基本計画の検証を行った。 2)銀行・企業間の融資関係に関する年次データ(1980年から2012年まで)から構築される日本の信用ネットワークについて,ネットワーク解析の新手法である"DebtRank" を用いて,各銀行の重要性,脆弱性についての研究を行った。 3)世界の48カ国について通貨と株式市場の日ごとの推移を1999年から2012年まで解析し,その相関固有ベクトルの特性解析,協働ネットワークのコミュニティ解析などを行った。 4)時系列データのHilbert変換を利用した複素主成分分析を用いて物価ダイナミクスの解析を行った。企業物価指数,輸入物価指数および消費者物価指数の中で1980年から使われている830品目を選び出し,それらの月次データを得た。加えて,マクロ経済指標として賃金指数,所定外労働時間,失業率,マネタリーベース,マネーストックM2,為替:ドル・円,原油価格の7指標を収集し,総計837時系列の物価・マクロ変数データを用意した。回転乱数シャッフリング法を用いることにより,統計的に有意な固有モードを同定した。また,コミュニティ解析(位相が同期する物価をコミュニティとして抽出)を行うことにより,物価変動の集団的振る舞いについて新たな知見を得つつある。合わせて,構造方程式モデルを用いて物価とマクロ経済指標の変動間の因果関係について解析を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は,当初目的としていたマクロ経済学の再構築に留まらず,喫緊の日本経済の問題「長期デフレからの脱却」の議論にも大きなインパクトを与えている。2013年12月には,NHK-BSの番組Biz SUNDAY「景気はどこまで回復したか~データで読む日本経済~」の中でも,本研究の成果が取り上げられた。本研究は,日本経済において重要な価格変動を品目別に調べるという膨大な解析を行いつつあり、貨幣数量説に基づく黒田日銀,安倍政権の政策の妥当性を実証的な観点から明らかにできると期待される。また,研究成果を国際的に広く発信するための取り組みも予想以上に進んでいる。すでにCambridge University Pressの“Physics of Society: Econophysics & Sociophysics”シリーズから『Macro-Econophysics(仮題)』と題する英語単行本を出版することを計画し、すでに編集者(Bikas K. Chakrabarti 教授、Saha Institute, Kolkata, India)や出版社と打ち合わせを始めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
各テーマについて次のように力点を置いて研究を進める。 1)我が国におけるアベノミクスをはじめとして世界経済は急速に変化している。最新のデータを入手することにより,そのような世界経済の情勢を生産性の実証研究に取り込む。 2)日本の信用ネットワークについて,特に1997年付近の金融危機に焦点を当て,銀行の統廃合と,ネットワーク上での位置の推移などを調べることで,金融危機へのネットワーク視点を探る。日本と世界の物価の時系列と,諸マクロ経済指標について,ネットワーク解析を進め,その変動についての知見を得る。 3)物価ダイナミクスの研究においては,複素相関行列に含まれる位相情報を最大限に引き出すことにより,我が国における物価変動の集団的ダイナミクスの全貌を明らかにする。また,個別物価とその変動に関する頻度と同期性を明らかにしながら,個別物価の変動の伝搬ネットワークの構造を得た上で,生産ネットワークや産業連関との関係を解明していく。 4)知識の発展メカニズムと労働生産性の関係を解明するために,論文引用ネットワークとマクロ経済の関係を定量的に解析する。
|
Research Products
(20 results)