2013 Fiscal Year Annual Research Report
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24243066
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
森岡 正芳 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (60166387)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 茂起 甲南大学, 文学部, 教授 (00174368)
山口 智子 日本福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (00335019)
丸橋 裕 兵庫県立大学, 看護学部, 教授 (10202334)
紙野 雪香 (今井 雪香) 大阪府立大学, 看護学部, 准教授 (10294240)
真栄城 輝明 奈良女子大学, その他部局等, 教授 (10555692)
野村 晴夫 大阪大学, その他の研究科, 准教授 (20361595)
末本 誠 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (80162840)
野村 直樹 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 教授 (80264745)
佐藤 達哉 立命館大学, 文学部, 教授 (90215806)
松本 佳久子 武庫川女子大学, 音楽学部, 講師 (90550765)
山本 智子 近畿大学, 公私立大学の部局等, 講師 (50598886)
村久保 雅孝 佐賀大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (20241151)
廣瀬 幸市 愛知教育大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (10351256)
田代 順 山梨英和大学, 人間文化学部, 教授 (90279737)
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Project Period (FY) |
2012-10-31 – 2017-03-31
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Keywords | 生活史 / ナラティヴ / 心理社会支援 / 当事者研究 |
Research Abstract |
本研究は生活史をナラティヴアプローチの観点から基礎づけ、臨床心理学だけでなく、医学、社会学、教育学にまたがる領域における生活史の方法論を統合し、心理教育的方法として洗練させる。そして心理臨床、医療看護、障害者の自立支援、コミュニティ教育・成人教育などの心理社会的支援に活用する。この実践を通じて、生活史法を人間科学に定位し、臨床ナラティヴアプローチの公共的な展開を目指すものである。 本研究はこれまでに、以下の5領域に分かれて、それぞれの現場に即した生活史聴取の作業を行った。 1)医療看護者の生活史2)障害者自立支援施設での当事者研究 3)司法機関でのグループセラピー 4)地域コミュニティ(沖縄)のなかでの生活史聴取 5)戦争体験を語り継ぐ実践(広島・神戸・沖縄) さらに、各グループが集まる合同研究会を行った。合同研究会では理論を実践場面で照合し、生活史の理論的基礎づけを行った。とくに、生活史聴取の実践は、支配的固定的な言説に対抗する個別の語りの力を支える点に特徴がある。それまで明らかでなかった社会文化的な文脈を掘り起こすことに留意した。以上について、『記憶とアイデンティティの深層へ-ライフヒストリーの知-』(神戸大学学術WEEKS2013.11)『語り‐風土と生活史 心のケア』(石垣市民会館2014.2)にて、成果の一端を報告した。 また、第5回日仏ライフヒストリーシンポジウムを企画し、成果を国際的に発表し、研究交流を行った(2014.1.31)。これらの共同研究を通じて、ライフヒストリー聴取における多様な水準のナラティヴの相互連関性が明らかにすることが、今後の課題として取り上げられることとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はこれまでの2年間で、以下の5領域に分かれて、それぞれの現場に即した生活史聴取の作業を行った。 1)医療看護者の生活史2)障害者自立支援施設での当事者研究 3)司法機関でのグループセラピー 4)地域コミュニティ(沖縄)のなかでの生活史聴取 5)戦争体験を語り継ぐ実践(広島・神戸・沖縄) さらに、各グループが集まる合同研究会を隔月に1回のペースで行った。合同研究会では理論を実践場面で照合し、生活史の理論的基礎づけを行った。これらは申請時の計画通り順調に推移している。 また、成果の発信に関して、国内シンポジウムを2回、国際シンポジウムを1回開催している。さらに、『臨床ナラティヴアプローチ-協働報告』を逐次刊行物として刊行を始めている。以上より、本研究は当初の予定通り、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの生活史聴取の作業をふまえ、さらに資料を収集し分析を継続するとともに、今後の研究として、第2研究「生活史法による臨床物語論の公共化」に向けて、以下のような観点を検討していく。第2研究は人生の物語の多水準性と統合イメージのプロセスを中心に、方法としての生活史を心理臨床の多様な局面に適用する。心理療法の面接場面でクライエントの症状や困難のなかに、その人が人生のどういうテーマに取り組んでいるのかが含まれているとする見方は、心理臨床に固有の視点である。症状には個人の未達成の課題が潜んでいる。この固有の視点は生活史法を背景におくことでさらに洗練させることができる。26年度は以下の3つの観点から、生活史法をナラティヴアプローチの実践方法として定位していく道筋を探る。1)統合イメージ:生活史法は、事実関係を時間系列上に編成したクロノロジーを記述することではない。生活史的知覚というべき固有の生のイメージが、生活史法の実践を通じて抽出される。このイメージは回想をもとにするという意味で過去でありながら、未来を予期する働きをもつ。このイメージは主体の回復を支えるものである。2)物語の多水準性:物語はつねに多水準のものの合成物である。個人の内的テーマに関わる生活史知覚:統合イメージを抽出する。イメージ水準の物語が、社会文化の中でどのように働くのか。臨床物語論の公共化のために欠かせぬ視点である。 3)ナラティヴにおけるパフォーマンス、行為、ドラマという次元:イメージとパフォーマンスは語るという人の自然な営みにともなうもので、コミュニケーションとしてのライフヒストリーを支える。臨床や心理社会支援において、ライフヒストリーの聴取が意味をもつのも、この次元について解明することが手がかりになる。
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Research Products
(9 results)