2014 Fiscal Year Annual Research Report
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24243066
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
森岡 正芳 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (60166387)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 茂起 甲南大学, 文学部, 教授 (00174368)
山口 智子 日本福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (00335019)
丸橋 裕 兵庫県立大学, 看護学部, 教授 (10202334)
紙野 雪香(今井雪香) 大阪府立大学, 看護学部, 准教授 (10294240)
廣瀬 幸市 愛知教育大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (10351256)
真栄城 輝明 奈良女子大学, その他部局等, 教授 (10555692)
村久保 雅孝 佐賀大学, 医学部, 准教授 (20241151)
野村 晴夫 大阪大学, その他の研究科, 准教授 (20361595)
山本 智子 近畿大学, 公私立大学の部局等, 講師 (50598886)
末本 誠 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (80162840)
野村 直樹 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 教授 (80264745)
佐藤 達哉 立命館大学, 文学部, 教授 (90215806)
田代 順 山梨英和大学, 人間文化学部, 教授 (90279737)
松本 佳久子 武庫川女子大学, 音楽学部, 講師 (90550765)
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Project Period (FY) |
2012-10-31 – 2017-03-31
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Keywords | 生活史 / ナラティヴ / 心理教育的支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の全体構想のなかで、平成26年度は、以下のような課題を中心に遂行した。個人の体験の現実に接近するナラティヴ(物語;語り)という視点を活かし、生活史を自己物語(self-narrative)の観点から基礎づけ、医学や教育学にまたがる領域における生活史の方法論を統合し、心理教育的方法として洗練させる。ナラティヴ知の特徴は個人のライフヒストリーにおいて病を抱えることの意味、可能性の領域として解釈し直すことができる。この観点の妥当性を問い、資料収集と分析を拡大し、深めるため国内と国外にてシンポジウムを企画し、成果発表と討論を行った。生活史法の実践的位置づけを明らかにすることを試みた。以下の発表が中心である。 1Creating the clinical narrative knowledge:Listen into the life history not yet enough being lived, Narrative Matters 2014 conference, Univ. Paris Diderot Juin, 26 この発表は、電子ジャーナルHal CNRSに掲載された。2014年12月/2遊びとパフォーマンス:可能性を実演(実現)する日本遊戯療法学会第20回大会 2014.7.19 星陵会館/3Ma: where spontaneous living responsiveness occurs;シンポジウムTheimaginative area created in the psychotherapeutic dialogue;およびTopic Groupの企画,The 8th International Conference on Dialogical Self, Haag University of AppliedScience, Netherlands 19-21 August 2014/4第6回ライフヒストリー研究日仏国際シンポジウム企画遂行2014年12月4日リール第3大学 以上を通して、ライフヒストリーの反復されるテーマに焦点をあてる聴取法の妥当性を臨床ナラティヴアプローチの観点から明確にできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は本研究の後半、研究Ⅱ「生活史法による臨床物語論の公共化」にかかわるものである。研究Ⅱは人生の物語の多水準性と統合イメージのプロセスを中心に、方法としての生活史を心理臨床の多様な局面に適用する。心理療法の面接場面でクライエントの症状や困難のなかに、その人が人生のどういうテーマに取り組んでいるのかが含まれているとする見方は、心理臨床に固有の視点である。症状には個人の未達成の課題が潜んでいる。この固有の視点は生活史法を背景におくことでさらに洗練させるという課題が中心である。この点について平成26年度は定例の臨床ナラティヴセミナーを6回、そして国内外の学会にてシンポジウムを企画し、この課題に関する情報交流を積極的に行った。 その結果以下の点について研究はおおむね順調に進展している。 研究Ⅰで得られた基礎データを臨床心理学、医学、医学人間学、人類学の視点から解釈を行う。生活史法を通じて得られたストーリーのなかに、物語とイメージの重なりが素材として与えられことが予想される。その解析を経験豊かなセラピストの集団討議による事例検討を重ねる。それを通じて、個人の内的テーマ、家族の物語、社会にドミナントな物語を重層的に読み取る。クライエントが抱える症状や困難が生活史のストーリーや内的なテーマとつながっている。このように従来から経験的に述べられてきた心理臨床の重要な知見を、生活史法という社会的に共有されやすい形で方法論化する。 とくに、ライフヒストリーにおけるイメージと無意志的想起にかかわる課題を探求できたことは大きな成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方向性は、ライフヒストリーの多様な場面における収集データを、心理臨床場面で明確な立場を持つ関係性の視点を導入し、データの読解と方法論の定式化を目指す。心理療法の面接場面でクライエントの症状や困難のなかに、その人が人生のどういうテーマに取り組んでいるのかが含まれているとする見方は、心理臨床に固有の視点である。症状には個人の未達成の課題が潜んでいる。この固有の視点をもとに、生活史法を専門的な聴取記述法としてさらに洗練させることができる。以下の3つの観点から、生活史法をナラティヴアプローチの実践方法の一つとして確立する。 1)統合イメージ:生活史法は、事実関係を時間系列上に編成したクロノロジーを記述することではない。生活史的知覚というべき固有の生のイメージが、生活史法の実践を通じて抽出される。このイメージは回想をもとにするという意味で過去でありながら、未来を予期する働きをもつ(Weizsäcker1956)。ヴァイツゼカーはこれを生活史のプロレプシス構造と呼ぶ。このイメージは主体の回復を支えるものである。 2)物語の多水準性:個人の物語は社会文化のよりマクロな物語に包含されている。物語はつねに多水準のものの合成物である。個人の内的テーマに関わる生活史知覚:統合イメージを抽出する。イメージ水準の物語が、社会文化の中でどのように働くのか。臨床物語論の公共化のために欠かせぬ視点である。 3)公共的視点:ナラティヴは「例外的なもの(unusual)と通常のものをつなぐ」という特徴がある(Bruner1990)。この例外的なものの極は戦争、災害といった社会歴史的な出来事である。そのような体験を個人レベルから社会的なレベルにつなぐときに、語りの構造的な移行が生じる。聞き手は語りの「証人」となる。 以上の観点について、すでにセミナーとシンポジウムを平成27年度に企画準備中である。
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Research Products
(10 results)