2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24244051
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
齊藤 英治 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 教授 (80338251)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前川 禎通 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 先端基礎研究センター, センター長 (60005973)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | スピントロニクス |
Research Abstract |
絶縁体スピントロニクスの物理の基礎を形成し、環境負荷の小さな新しいスピン利用技術の基盤を築くことを目指した研究を行った。スピン波のモード分解及び空間依存性データからスピン波伝播方程式を逆に解くことでスピン圧の生成効率を異なる物質間で定量的に比較した。既にパラメータが多くの方法によって確立しているYIG/Ptを用いてこの測定を規格化し、スピン波スピン流の伝播を定量化する方法を確立した。金属に接した絶縁体中のスピン波は、各種交換相互作用、磁気弾性相互作用、電場によるスピン軌道相互作用を受ける。従って、スピン波スピン流と、各種素励起(フォノン・プラズモン)との相互作用の素過程の理解が重要である。絶縁体中のスピン波と相互作用のある電磁波を用いたマイクロ波分光、光散乱分光を中心にした分光学的測定・解析を行うことで、スピン流とマグノン(スピン流に寄与しない成分)、フォノン、表面プラズモンとの相互作用を調べた。既に我々がスピン流測定法を確立させている鉄系ガーネット酸化物系及びフェライト酸化物系は鉄サイト及び希土類サイト置換により物性を系統的に変化させることが可能であるので、元素置換により組成変化させた薄膜及び結晶試料を作製し、マイクロ波スピン波吸収スペクトル、スピンゼーベック効果、プラズモン励起スペクトルの測定を行った。その結果、スピンゼーベック効果において基板及び磁性層のフォノンとスピン波が広範囲に相互作用しその結果スピン有効温度の変調を受けていること、これらのスピン波の表面ブランチには特異的に熱を輸送するモードが存在しこのモードが試料端で消失すること、プラズモンの吸収にリンクしたマグノン励起が存在することがわかった。これらの結果を複数の論文にまとめ、Nature Materials、Physical Review Letters誌等に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初期の目標は十分に達成されたのみならず、次年度予定していたプラズモン吸収の測定も開始することができ、研究をやや前倒しで行っている状況である。また、表面に特有なスピン波輸送モードの発見(Nature Materials誌に論文掲載)や、スピンゼーベック効果の決定因子の絞込み(Physical Review B誌、Physical Review Letters誌に論文掲載)、スピン波の簡便な空間マップ法の発見など、想定していなかった新しい発見も相次いだ。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度作製開始した試料系列について、スピン流伝導による逆スピンホール電圧の磁場依存性、温度依存性を測定する。低温においてこれらの物質群のスピン緩和が複雑な振る舞いをすることが知られており、磁場・周波数依存性を全て測定することで不均一幅と緩和幅をスペクトル上で分離しながら解析を行う。同一試料に対してマイクロ波吸収、音波吸収、逆スピンホール電圧スペクトル、熱伝導度、界面ラフネス(表面プラズモンとの結合を支配する)の測定を系統的に行う。これらのデータにより、スピン回路理論(e.g. Phys.Rev.B(2010))中のパラメータを決定することができ、絶縁体中のスピン流伝導を現象論レベルで確実に体系化することができる。金属ナノ構造と磁性絶縁体界面には表面プラズモンによる強い電場を誘起することができる。表面プラズモンは縦波であるにもかかわらず光と共鳴的な強い相互作用をし、固体界面に表面モード特有の強い局所近接電場を作り出す。この電場は、磁性体のスピン軌道相互作用、或いは反対称交換相互作用によってスピン励起と結合する。これによって、スピン系と格子系の有効温度差が作り出されるとインコヒーレントスピンポンプが駆動され(Nature Mat.(2010))スピン流が生成される。この機構によって、光と磁性絶縁体中のスピン流を結合させることができる。測定においては、応募者らのグループで開発したSTMマイクロ波プローブを用いた局所励起法も駆使する。この効果と逆スピンホール効果とを組み合わせれば、スピンダイナミクスを経由して光からスピン流、起電力を生成する新しい原理を作り出すことができる。これは、従来の半導体接合型太陽電池と異なり物質の吸収端波長に関わりなく広い光波長範囲において駆動できるため、太陽電池とは相補的に利用できる可能性のある光-電力変換技術の礎をつくることができる。
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Research Products
(39 results)