2013 Fiscal Year Annual Research Report
生体界面プラズマ流の極限時空間制御による標的遺伝子群発現誘導機構
Project/Area Number |
24246034
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 岳彦 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (10302225)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
城倉 浩平 信州大学, 医学部, 准教授 (30303473)
小原 拓 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (40211833)
金澤 誠司 大分大学, 工学部, 教授 (70224574)
宮原 高志 静岡大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70239432)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | バイオ流体力学 / 自己保存プラズマ流 / 極微小時空間解析 / 細胞応答 / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
本研究は,自己保存プラズマ流の極微小時空間制御により,細胞の標的遺伝子群の発現を誘導する手法の開発を目的とする. 平成25年度は,平成24年度に設計・製作した自己保存プラズマ流の生成制御装置を最適化することで,超純水中に直径10μm以下のプラズマ径で、1μs以下の極短時間で消滅する微細水中プラズマ流の生成法の開発に成功した.また,自己保存プラズマ流を主として構成する2 km/s程度の低速で進展する1次ストリーマのパルス状の放電電流波形に対し,20 km/s程度の高速で進展する2次ストリーマでは連続成分を有する放電電流が流れることを世界で初めて明らかにし,Europhysics letters (EPL)に掲載された.これにより,放電中の荷電粒子の輸送状態を電流波形から把握する手法を開発し,簡便かつ正確に自己保存プラズマ流の生成判定が可能になった.さらに,水中プラズマ流により,pHや導電率の変化を小さく抑えたまま水素濃度や酸化還元電位が変化することを明らかにし,AIP Advancesに掲載された.この成果は,自己保存プラズマ流の化学輸送機構の解明に大きく貢献した.さらに,平成24年度に実施した網羅的遺伝子解析の再現性を検証するためにRT-PCRにより抗酸化酵素を生成する時に発現するCATとSOD1について遺伝子発現量を定量分析し再現性を確認した.さらに,短時間(40 s)のプラズマ照射により,1.5倍以上の遺伝子発現強度の上昇を示した遺伝子プローブが457と同等の刺激の過酸化水素暴露における224プローブよりも大きく増加することを明らかにし,プラズマ特有の遺伝子発現効果があることを示した.また,培養液中の自己保存プラズマ流生成法の開発を進め,細胞への直接照射により細胞障害を引き起こすことを明らかにした.これらの成果は,自己保存プラズマ流の細胞制御技術の開発の基盤となるものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度では,微細自己保存プラズマ流生成のため購入した電源が故障し,細胞照射用自己保存プラズマ流生成法ならびに生成機構の解明が遅れていたが,平成25年度では,電極形状や電極の絶縁設計の最適化,電極配置構造の最適化,印加電圧の違いによる1次ストリーマ,2次ストリーマ,スパークの発生条件の把握などにより,スパークや2次ストリーマの発生を抑制することが可能な,直径10μm以下のプラズマ径で、1μs以下の極短時間で消滅する微細水中プラズマ流の生成法の開発に成功した.また,1次ストリーマと2次ストリーマにおける進展形態を放電電流波形から判別する手法の開発に成功し,異なる荷電粒子の輸送機構が存在することを明らかにした.さらに,水中プラズマ流による水の化学的性質の変化を明らかにした.遺伝子発現解析においては,RT-PCRによる特定遺伝子の発現を定量分析し再現性を確認し,網羅的遺伝子解析を進めプラズマ特有の遺伝子群発現応答があることを明らかにした.これらの成果は,当初の計画以上の進展である.平成26年度に当初予定していた細胞膜輸送の解析については,細胞膜中の熱輸送に関する理論・数値解析による考察を進め,外部環境の物理刺激がプラズマにより生成された化学種が細胞内に輸送されるために必要な条件などについて検討したが,詳細については検証ができていないため,この項目についてはやや遅れていると判断した.これより,総合的にはおおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度では,平成24,25年度に開発した自己保存プラズマ流生成技術を基盤に高導電率で不純物の多い培養液中の微細プラズマ発生法を確立し,細胞の生体応答検証に向けたプラズマ照射法や荷電粒子輸送制御法を開発する.また,同じく平成24,25年度に開発した手法を利用しイオン・化学的活性種の生成輸送についてより詳細に検証を行い,細胞とプラズマ発生位置やプラズマ発生条件の最適条件について検討し,反応性化学種と荷電粒子の輸送機構やそれぞれが細胞応答に与える影響を生存率や形態変化,標的遺伝子群の発現検証から明らかにする.さらに,荷電粒子移動時の細胞内や膜輸送に関する細胞応答の解析を行い,どのような条件で酸化ストレス応答が発現するのかについて検証する.また,微細水中プラズマ照射による細胞膜電位の変化と細胞内の物質輸送の相関を明らかにする.最後に,得られた成果を総合的に考察し標的遺伝子発現機構を明らかにする.
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Research Products
(18 results)