2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24247001
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
森 郁恵 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90219999)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 感覚神経細胞 / 記憶・学習 / 温度走性 / Cエレガンス / 神経回路 |
Research Abstract |
線虫は体が透明なためオプトジェネティクスを適用し易い実験系であるが、青色光が行動に影響を与えることが知られているため、channelrhodopsin2を用いた行動実験は制限がある。これを解決するために、動作波長が長い、もしくは行動に影響を与えない新規のオプシンを用いて行動中の神経活動を制御することで、行動を制御する神経回路の解明を進めている。これまでに緑色光で動作する channelrhodopsin green receiver (ChRGR)とChR2(C1V1)、さらに短時間の青色光照射で作動するChR2(C128S)も導入し、それらを温度受容神経細胞であるAFDへ発現させることに成功した。これらのチャネルロドプシンの動作を神経活動レベルで確かめるために、遺伝的にコードされたカルシウムセンサーであるGCaMP3も同時にAFDへ発現させ、カルシウムイメージングを行いながら神経活動の制御を 試みた。ChRGRとChR2(C1V1)は有意な神経活動の上昇が見られなかったが、ChR2(C128S)は光刺激により有意な活動上昇が見られた。ChR2(C128S)は青色光でON、黄色光でOFFになるオプシンで、ONの状態は数時間以上続くことが論文で報告されている。カルシウムイメージングで神経活動の状態を測定すると、ChR2(C128S)はAFD神経細胞で発現させた場合、1秒程度の青色刺激に対してONの状態が続く時間は数分(5, 6分)程度であることが確認された。これらのことから、少なくともChR2(C128S)を使うことで、短い青色励起光によりAFD神経細胞をON状態に数分間保つことができ、これにより青色光の影響を与えずに行動実験を行えることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規オプシンタンパクを目的の神経細胞で発現させることに成功し、その動作確認を行うことができた。これまで青色光による忌避行動の影響避けることができなかったため、行動制御に関わる実験は難しかったが、本研究の結果により、忌避行動を引き起こす事なく行動中の神経活動制御も可能になることが期待できる。ChR2(C128S)がAFD神経細胞で少なくとも5分程度は活性化することを確認しているので、1秒程度の短い青色光を照射した後、刺激を与えない状態で5分程度の行動を観測することで、光による忌避行動の影響がほとんどない状態でAFDの活動による行動変化が計測できると考えられる。さらに、光による制御が確認できなかったオプシンについても、オプトジェネティクス研究を進める上で技術的に重要な点が明確になっており、遺伝子導入方法を工夫することで機能する可能性も示唆されてきた。 また、当研究室のカルシウムプローブを用いた神経活動計測から、これまで分かっていなかったRIA介在神経細胞の応答特性が明らかになってきた。介在神経細胞は接続関係が複雑であることが多く、活動のパターンも直感的に分かりにくいものであることが多いため、本研究による特異的な神経活動制御の有効性が活かせる実験系である。オプシンタンパクを用いた神経活動の光制御と合わせて、RIAに関する神経回路動態の知見を詳細に調べることで、これまで手付かずであった介在神経細胞の機能解明が進むことが期待できる。本研究では既にハロロドプシンと比べて抑制効果の高いArchやArchTを利用することで、自由に行動している線虫におけるRIA神経活動を抑制し、その行動への影響を計測する実験を 進めている。この実験系はカルシウムイメージングによる計測と、オプシンによる光活動制御によって初めてアプローチできる対象であり、本研究で進めてきた研究の大きな成果が得られると期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験により遺伝子導入による発現と、AFD神経細胞における動作も確認していChR2(C128S)について、行動中のAFD活動の制御実験を進める。AFD神経細胞は温度入力に対して活動することが知られているが、このAFDの活動とどんな行動要素が関係しているかは分かっていない。温度が一定の状況でAFDの活動を光制御することで、AFD神経細胞の活動自体が行動制御にどのように影響するかということを調べる。 さらに、これまでに導入を進めている新規のオプシンタンパクを線虫の個体内でも効率よく機能させるために、導入方法の改良を進める。線虫の遺伝子発現制御に関するスプライスリーダーサイトSL2を利用し、オプシンタンパクの発現を確認するための蛍光タンパクとオプシンタンパクと分けた状態で個体に導入することで、蛍光タンパクによる発現確認はそのまま行いながらも、オプシンへの機能阻害を防ぐ。すでにいくつかのDNAコンストラクションと線虫への遺伝子導入を進めており、これらの機能解析と遺伝子導入を進める。 また最近当研究室の実験結果から得られた知見に基づき、介在神経細胞であるRIAにArchもしくはArchTを発現させ、RIAの活動を光により抑制する実験系を構築する。RIA神経細胞は温度走性行動に重要な役割を担っていることがレーザー殺傷実験で示されているが、行動における作用機序は全く分かっていない。当研究室のカルシウムイメージング実験の結果から、温度刺激が介在神経細胞であるRIAの神経活動を抑えられることが示唆されているが、行動制御とRIAの活動の関係は分かっていない。RIAの活動をオプトジェネティクスにより制御する実験系で、刺激入力と神経活動の関係から、行動制御までの繋がりを検証する。
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Research Products
(20 results)
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[Presentation] Design of the microchip device to dissect the neural circuits based on thermotactic behavior in C. elegans.2013
Author(s)
Nishida, Y., Nakajima, M., Jaehoon, J., Takeuchi, M., Kobayashi, K., Fukuda, T. & Mori, I.
Organizer
19th International C. elegans Meeting
Place of Presentation
Los Angels, USA
Year and Date
20130626-20130630
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[Presentation] High-speed, high-magnification tracking system for calcium imaging of neurite during free moving.2013
Author(s)
Tsukada, Y., Min, C., Fei, X., Hashimito, K., & Mori, I.
Organizer
19th International C. elegans Meeting
Place of Presentation
Los Angels, USA
Year and Date
20130626-20130630
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[Presentation] System identification for thermosensory neuron encoding thermal environment.2013
Author(s)
Tsukada, Y., Honda, N., Murase, A., Shimowada, T., Onishi, N., Kuhara, A., Ishii, S. & Mori, I.
Organizer
19th International C. elegans Meeting
Place of Presentation
Los Angels, USA
Year and Date
20130626-20130630
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