2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24247005
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
矢原 徹一 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90158048)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
手島 康介 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20447593)
陶山 佳久 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60282315)
三村 真紀子 玉川大学, 農学部, 助教 (60451689)
舘田 英典 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70216985)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 花色 / アントシアニン / 進化 / 交雑 / 葉の寿命 / 外来種 / 無性生殖 / 耐病性遺伝子 |
Research Abstract |
ハマカンゾウ(赤花・アゲハチョウ媒)とキスゲ(黄花・スズメガ媒)の花色の違いを決めているアントシアニン合成系遺伝子の特定に取り組んだ。次世代シークエンサーを使ったRNA-seq解析により、R2R3 MYB familyである転写因子(調節遺伝子)Anthocyanin 2がキスゲの花の発生過程で抑制されることを確かめた。また,ハマカンゾウの送粉者であるアゲハチョウについて,花粉一粒ジェノタイピング技術を用いて花粉の移動を実測した。その結果,短い雌蕊をもち上向きの花の方が花粉を受け取る確率が高く,浅い花冠を持つ花でより多くの花粉が運ばれていた。花粉持ち越しの減衰率はマルハナバチやハチドリよりも高かった。送粉者の花粉付着部位が翅であり,翅上の付着場所にバラツキが大きいことが理由として考えられる。 ゲノム情報を用いて、温帯性キイチゴ(屋久島に分布の南限をもつモミジイチゴ)と亜熱帯性キイチゴ(屋久島に分布の北限をもつリュウキュウイチゴ)の関係を調べた。両者は姉妹関係にあり、おおよそ100万年前に種分化したと推定された。モミジイチゴは分布の南限を最終氷期にも維持したが、リュウキュウイチゴは最終氷期以後に分布を北上させ、屋久島においてモミジイチゴの分布と接触し、異なる環境に適応した近縁種との遺伝的な交流が確認された。 在来種ニホンタンポポ、外来種セイヨウタンポポ、およびその雑種(無性的に種子を生産し日本各地に分布)について、耐病性遺伝子R-geneの多様性を調べ、732個の配列を得た。ニホンタンポポでは、地域特有のクラスターは認められず、地域を超えて多様な遺伝子が維持されていた。一方雑種には、計11個の特有のクラスターが認められた。雑種では、日本の病原体と共進化してきたニホンタンポポのR-geneを持たない方が有利なのかもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ハマカンゾウとキスゲを材料に進めているプロジェクトでは、(1)花色・花香の種差を決めている遺伝子を決定する、(2)雑種F2世代を含む実験集団を使って、アゲハチョウとスズメガが花色・花香に与える淘汰を一花粉粒PCR法によって実測する、という2つの主目標がある。後者については、昨年度までに研究目標をほぼ達成しており、今年度はさらに、花の向きという形質に新たに着目し、ハマカンゾウ的な上向きの花がアゲハチョウによって淘汰されることを示す証拠を得た。前者については、赤い蜜標の有無を決めるアントシアニン合成系の種差が、調節遺伝子(R2R3 MYB)の単一の変化で生じていることを支持する証拠を得ており、予定どおりの達成度である。 温帯性キイチゴと亜熱帯性キイチゴを材料に進めているプロジェクトでは、(1)常緑性と落葉性などの種差を決めている候補遺伝子を探索する、(2)2種間の遺伝的交流(遺伝子浸透)が生じていることを検証する、という2つの主目標がある。前者については、花色・花香と異なり、生合成系から候補遺伝子を選ぶことができないので、ゲノム配列を決め、発現量を比較することで、候補遺伝子を探索している。ゲノム配列決定が順調に進んでおり、予定どおりの達成度である。後者については、分析をほぼ完了し、2種の分化・移住の歴史と、遺伝子浸透の歴史を推定できた。 在来種ニホンタンポポ、外来種セイヨウタンポポ、およびその雑種を材料に進めているプロジェクトでは、耐病性遺伝子に着目し、在来種と外来種の違いを明らかにし、雑種がどちらの遺伝子をどの程度取り込んでいるかを評価することを目標としている。ニホンタンポポでは、耐病性遺伝子の多様性が地域を超えて維持されており。一方雑種では、雑種特有のクラスターが多いことが明らかとなり、研究は予定どおりの達成度である。
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Strategy for Future Research Activity |
ハマカンゾウとキスゲを材料に進めているプロジェクトでは、アントシアニン合成系についての論文をまとめる。これに続いて、カロテノイド合成系および花香成分合成系についての解析を進める。 温帯性キイチゴと亜熱帯性キイチゴについては、種分化・移住・交雑の歴史に関する論文をまとめる。また、発現量比較により、若い葉で種特異的に発現している遺伝子を探索する。 タンポポについては、データ数が少ないセイヨウタンポポについてのサンプルを補い、成果を論文にまとめる。 全体として研究は順調に進行しており、研究を遂行するうえでのとくに大きな問題点はなく、研究計画の大きな変更は必要ない。
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Research Products
(6 results)