2012 Fiscal Year Annual Research Report
上皮細胞シートシステムの構築における細胞間接着装置・アピカル膜複合体の役割
Project/Area Number |
24247037
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
月田 早智子 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (00188517)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | シグナル伝達 / 細胞・組織 / 生理学 / 生体分子 |
Research Abstract |
多細胞生物において、上皮細胞はシート構造を形成して、体内のコンパートメントを構築するが、単にホメオスターシスの維持のみにはとどまらない。個々の上皮細胞の研究が進む一方で、上皮細胞シートの統合システムの分子基盤の研究は限られた範囲にとどまる。本研究はこの課題に、細胞間接着装置・細胞骨格・アピカル膜複合体の観点から取り組んでいる。 (課題1)細胞間接着装置・アピカル膜がいかにシステムとして統合されるか:「細胞間接着装置側からの解析」1)細胞間接着分子や細胞骨格の構築を制御するシグナル分子の解析:私どもがTJ(Tight junction)に各々存在する蛋白質として見出したARHGEF11は、ZO-1に結合に依存してTJに局在し、perijunctional actomyosin ring (PJAR)のリモデリングを介して接着機構の集合とバリアー形成制御に関わることを示した(Itoh et al., ProNAS, 2012)。また、現在探索中のTJ局在蛋白質Aの、キナーゼBによるリン酸化制御と、細胞骨格との関連について、解析が進行中である。蛋白質Aをノックダウンすると、細胞骨格の規則性の一部が失われ、ゲル内での上皮細胞シートの3次元構造に変化を生じる。現在、結果を投稿準備中である。2)TJの接着分子クローディンの解析:クローディンCノックアウトマウスは、腸炎を生じる。興味深いことは、小さな透過性亢進でも、炎症を生じることである。これまでに、腸炎に先行して上皮細胞シートの透過については示唆されてきたが、その特性については、十分な解析がない。現在、論文としてまとめつつある。 (課題2)細胞間接着装置・アピカル膜がいかにシステムとして統合されるか:「アピカル膜構築の解析」 課題1-1)との関連で、細胞間接着装置に局在する蛋白質と、細胞骨格制御との関連について、解析を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(課題1)細胞間接着装置・アピカル膜がいかにシステムとして統合されるか:「細胞間接着装置側からの解析」では、私どもがTJに各々存在する蛋白質として見出したARHGEF11が、ZO-1に結合に依存してTJに局在し、perijunctional actomyosin ring (PJAR)のリモデリングを介して接着機構の集合とバリアー形成制御に関わることを示し、ProNAS誌に発表された。細胞間接着に関わるシグナル解析では、特にTJに関わるシグナルの解析は少なく、意義あるものである。また、キナーゼの制御下にある蛋白質Aの機能解析といったin vitro解析が進む一方で、クローディンEノックアウトマウスの病態解析も進んでおり、基礎にとどまらず臨床への展開も進んでいるため。 (課題2)細胞間接着装置・アピカル膜がいかにシステムとして統合されるか:「アピカル膜構築の解析」では、既に同定はされているものの機能未知であったクローディンFの機能解析を進めている。本クローディンは、クローディンのサブタイプの中でも、イオンの透過性を亢進させる性質を持つクローディンで、その透過性の大きさが、サブタイプの中でも代表的なクローディン2や15と比べて遜色ないが、生体において、その発現量は少なく、また、発生のある時期に、特定の臓器での発現が上昇している可能性を見出している。解析は進行中であるが、管系臓器の組織構築上の必要性も考えられ、細胞骨格の挙動との関連も興味が持たれる。また、クローディンGノックアウトマウスについては、腸管を主とした解析を進めている。通常のイオンの透過性制御ではなく、やや大きな分子サイズの透過性を制御し、その結果として、炎症等の病態に関わっている可能性が示唆されている。本マウスでも、細胞骨格との関連が示唆される。以上のように、培養細胞・マウス個体両面からの解析が進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の解析をさらに進める。特に、1 細胞間接着分子や細胞骨格の構築を制御するシグナル分子の解析として、TJ/AJの新規Rho-GEF関連蛋白質2種TaraとARHGEF11は、各々、AJ,TJに局在するものとして報告したが、両者ともノックダウン(KD)で、TJの細胞間バリアー機能が下がることがTER (transepithelial resistance) 測定により現在見いだされている。そのメカニズムを明らかにするために、27種類のクローディンの発現に変化が あるか否かの検討を進めている。また、これらの関連因子について、その同定や機能解析を進める。2 TJの接着分子クローディンの解析: in vitroでの解析として、共沈実験などから、クローディンに結合する蛋白質の探索を進める。HEK細胞での過剰発現や融合蛋白質による検討を行なう。また、in vivoでの解析として、 (1) Barrier型/leaky型claudinのうち、leaky型の代表である2/15KOマウスでは、細胞間のNa+フローがない条件下にお いてはNa+が腸内腔側へ補給されず、グルコーストランスポーターが働かない。一方、グルコース濃度が低くトランスポーターの働かないとき、2/15の発現が減ることが報告されている。こうした種々の状態も含め、水のフローや摂食との関連性などについて検討する。2.クローディン-E KO:クローディンEのKOマウスは肝臓の毛細胆管部TJ細胞間バリアーを介する水フローの亢進により、胆石形成を促進するというデーターも得られている。3 タイトジャンクションを起点としたアピカル細胞骨格ネットワークの構築原理について、分子レベルでの解析を進める。
|
Research Products
(22 results)