2012 Fiscal Year Annual Research Report
光学プランクトン観測システムによる動物プランクトン生産力の定量評価
Project/Area Number |
24248032
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山口 篤 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 准教授 (50344495)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤森 康澄 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 教授 (40261341)
LINDSAY Dhugal 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏研究領域, 技術研究副主幹 (80344282)
今井 一郎 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 教授 (80271013)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生物海洋学 / プランクトン / 自動計測 / 生産量 / バイオマス / 物質循環 / イメージング技法 / ビデオプランクトンレコーダー |
Research Abstract |
本年度(平成24年度)は、野外における3つの航海:(1)北大おしょろ丸による北太平洋亜寒帯域、(2)JAMSTECみらいによる北極海、(3)オーストラリア観測船による南太平洋の航海に乗船し、サンプル採集とLOPCおよびVPRデータ取得を行った。 LOPCは大型水槽を用いて、船上にて実際の動物プランクトンの計測を行い、キャリブレーションデータを取得した。キャリブレーションデータを用いて、優占分類群についてLOPCによるESD (等価粒径) サイズ-体長の関係式を求めた。 VPRについても大型水槽を用いて、船上にて実際の動物プランクトンの計測を行い、キャリブレーションデータを取得した。VPRデータも前述のLOPCと同様に分類群毎にESD (等価粒径) サイズ-体長の関係式を求めることが出来、相関係数は0.9といずれの分類群でも正確なサイズ評価が出来るようになった。 成果報告として、本年度は2報の学術論文発表と11件の学会発表を行った。このうち1報の学術論文では、身体が脆弱かつ透明なため、LOPCやVPR測定の困難な分類群(クラゲ類)について、北太平洋および北極海に及ぶ体サイズとバイオマスを明らかにした。もう1報の学術論文では、北海道近海の親潮域におけるマイクロネクトン甲殻類について、生活史と生産量を明らかにした。これはLOPCやVPRによる測定データから、該当分類群の生産量を推定する際に必要不可欠な知見である。 年度末には、日本プランクトン学会シンポジウム「イメージング技法によるプランクトン研究」を開催した(平成25年3月25日, 東京海洋大)。シンポジウムでは全部で12件の口頭発表と、機器展示があり、約100名の参加があった。このシンポジウムプロシーディングスは平成26年2月に「日本プランクトン学会報」にて出版される予定で、現在、編集作業を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度(平成24年度)は、当初予定していた野外での3航海に乗船し、試料採集を行い、LOPCとVPRともに、各計測機器ごとに動物プランクトン計測を行い、ESDサイズ-体長の関係式を得ることが出来た。これは次年度以降に各機器の計測データからバイオマス推定を行う際に必要不可欠な知見であり、その足がかりが出来たものである。 本年度の達成度合いを象徴するものとして、関連研究テーマを行っている大学院生の各種表彰の受賞が挙げられる。北海道大学大学院水産科学院では、平成23年度から各専攻より修士1名、博士1名の表彰(修士は佐々茂雄賞、博士は伊藤一隆賞)が行われているが、本年度は修士課程・博士課程いずれも、研究代表者の指導する、本研究課題に沿った研究テーマの大学院生(修士は「外洋性大型カイアシ類の同化効率に関する研究」、博士は「北極海におけるプランクトン群集の時空間変動に関する研究」)が受賞した。これは本研究課題の達成度の高さを表すものとして挙げることが出来る。 また年度末には、研究代表者と研究分担者がコンビーナーを務めた、日本プランクトン学会シンポジウム「イメージング技法によるプランクトン研究」を開催した(平成25年3月25日, 東京海洋大)。シンポジウムでは全部で12件の口頭発表と、機器展示があり、約100名の参加があった。このシンポジウムプロシーディングスは平成26年2月に「日本プランクトン学会報」に出版される予定である。このシンポジウムによって、各種イメージング技法を用いている研究者間のネットワークが出来、シンポジウムでの議論に基づく、インターキャリブレーション航海の申請も計画されており、いずれも今後に繋がる展開となっている。 これら本研究課題に沿った研究テーマ大学院生の各種表彰や、シンポジウムによる学際的ネットワークの構築は、本研究課題の高い達成度を表しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究目的を達成するために、本研究課題では以下の4サブテーマを実施する。すなわち (1) 北大おしょろ丸、JAMSTECみらいによる北太平洋亜寒帯域におけるLOPC観測、(2) 同航海におけるVPR観測、(3) 海外(北極海、地中海と南太平洋)におけるVPR観測、(4) 次世代型生態系観測システムの構築に向けた成果発表である。 4つのサブテーマのうち、(1)ではLOPCによる計測と動物プランクトンのサイズに関する関係式を得ることが出来たが、まだその関係式は主要な分類群に留まっているので、今後より多くの分類群に関するデータ取得を行う必要がある。(2)ではVPRについて、サイズ-体長の関係式を求めることが出来、相関係数は0.9といずれの分類群でも正確なサイズ評価が出来るようになっているが、この関係式は海域によって異なる事も予想される。そのため、サブテーマ(3)の海外(北極海、地中海と南太平洋)における計測データを併せて解析することにより、さらなる精度向上を目指す予定である。とくに、貧栄養な地中海と南太平洋、また季節的に生物生産が大きく異なる北極海では、海域差や季節差の評価が重要な課題で、それらの変動要因を組み込んだアルゴリズムの構築を目指す。サブテーマ(4)の次世代型生態系観測システムの構築に向けた成果発表では、平成24年度に行った国内学会でのシンポジウム開催とそのプロシーディングス出版を足がかりとして、今後は国際学会でのシンポジウム(ないしはワークショップ)開催と国際学術雑誌でのプロシーディングス出版を目指す予定である。 本研究課題の将来展望として、本研究課題により確立される動物プランクトン生産量マッピング技術は様々な海域や季節に応用することが可能なため、大洋~全球スケールの動物プランクトン生産量推定ネットワークの展開が期待される。今後も、この最終目標を見据えて研究を進める。
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Research Products
(14 results)