2012 Fiscal Year Annual Research Report
免疫グロブリン様受容体の炎症性疾患における病理学的意義の解明
Project/Area Number |
24249021
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
渋谷 彰 筑波大学, 医学医療系, 教授 (80216027)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 免疫グロブリン様受容体 / 炎症 / 自己免疫病 / 発がん / 感染 |
Research Abstract |
申請者らが最近同定したAllergin-1はマスト細胞上のFcεRIからのシグナルを抑制する分子である。申請者らはHouse Dust Mite (HDM)を免疫することにより誘導した喘息モデルにおいて、Allergin-1遺伝子欠損マウスは野生型と比較して、血清IgEの高値、肺胞浸潤好酸球数、気道抵抗が亢進することを見出し、Allergin-1が骨髄球系細胞が関与するアレルギー性炎症も抑制する分子であることを示唆した。さらに、MAIR-I遺伝子欠損マウスにおいても、同様な表現系を示すことを明らかにした。 一方、クローン病と潰瘍性大腸炎は炎症性腸疾患の代表的疾患である。MAIR-I遺伝子欠損マウスでは、大腸炎を誘導する経口投与のDextran sodium sulfate (DSS)に抵抗性を示した。DSSによる大腸炎誘導モデルは、粘膜バリアの傷害により惹起される炎症をトリガーとするが、MAIR-Iはこの炎症病態に関与していることが示唆される。 さらに申請者らはMAIR-Iの遺伝子欠損マウスでは、盲腸結紮後穿孔(Cecum ligation and puncture; CLP)により腹膜炎から敗血症を誘導すると、野生型マウスと比較し、有意に生存期間が延長し、反対にMAIR-IIの遺伝子欠損マウスでは有意に短縮することを見いだした。この病態においてマスト細胞上のMAIR-I、マクロファージ情に発現するMAIR-IIが重要な役割を担っていることを明らかにした。 対象とする遺伝子のコンデイショナルターゲッテイングベクターの作製を終了しており、ES細胞も作製したが、キメラマウスの作製を試みたが、germ line transmissionが得られず、ES細胞の再作製を行っている。 ALlergin-1とMAIR-IIのリガンドの候補を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IgLR遺伝子欠損マウスを用いた疾患モデル解析については、予定通り、進展している。コンデイショナル遺伝子欠損マウスの作製がやや遅れているが、時間の問題と考えている。ALlergin-1とMAIR-IIのリガンドについては、候補分子が同定されたことから、概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
炎症病態に関与する責任細胞の同定と病態分子メカニズムの解析 1)本研究で対象としているIgLRは多様な細胞に発現することから、どの細胞に発現するIgLRが炎症病態に関与するかを明らかにする必要がある。コンディショナル遺伝子欠損マウスを用いて、平成24年度までの研究で明らかになったIgLRの関与が明らかになった炎症モデルを誘導し、その炎症病態に関与するIgLRの発現細胞を同定する。 2)同定した炎症病態に関与するIgLRの発現細胞を用いて、IgLRとそれぞれのリガンドとの結合により細胞がどのような挙動を示すかについて、増殖反応、遊走能、サイトカイン産生能、貪食能などを指標に解析し、炎症病態に関与するIgLRの機能の分子メカニズムを解析する。 IgLRとリガンドとの結合の炎症病態における時空間的局在の同定とその病理学的意義の解明:マクロファージ、樹状細胞、マスト細胞を欠損するマウスに、CFSEで蛍光標識した野生型またはIgLR遺伝子欠損細胞を移入し免疫系を再構築し、炎症モデルを誘導する。時間経過を追って、リンパ節、脾臓などの免疫組織と炎症局所の組織、臓器における標識細胞の集積、移動、局在、ならびに他の免疫細胞、非免疫細胞との空間的関連を免疫染色と二光子顕微鏡で観察する。野生型細胞を移入したマウスとIgLR遺伝子欠損細胞を移入したマウスとを比較することによって、炎症に関与するIgLR発現細胞の時空間的局在の病理学的意義を明らかにする。 分子標的療法の基盤開発:IgLRの関与が明らかになった炎症モデルを野生型マウスで誘導し、当該IgLRに対する中和抗体、あるいはアゴニスティックモノクローナル抗体を投与し、病態に対する影響を観察する。
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Research Products
(41 results)