2012 Fiscal Year Annual Research Report
医療・介護・福祉の融合―現場発ヘルスサービスリサーチによる地域包括ケアの実現
Project/Area Number |
24249031
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田宮 菜奈子 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20236748)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柏木 聖代 筑波大学, 医学医療系, 講師 (80328088)
高橋 秀人 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (80261808)
武田 文 筑波大学, 体育系, 教授 (80216902)
山本 秀樹 帝京大学, 大学院公衆衛生学研究科, 教授 (50243457)
松井 邦彦 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80314201)
山崎 健太郎 山形大学, 医学部, 教授 (80220309)
野口 晴子 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (90329318)
宮石 智 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (90239343)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 社会福祉関係 / 医療・福祉 / 現場・地域と大学の協同 / PDCAサイクル / ショートステイのあり方 / 施設ケア / 主治医意見書、主治医2人体制 / 医療・介護の連携 |
Research Abstract |
大学(ヘルスサービスリサーチ)と医療・介護現場を両輪としたPDCAサイクルの実現を目的に、各現場・地域と協同による研究を推進した。具体的研究目的として掲げた5課題について成果を述べる。①つくば市高齢福祉課との協同で行ったニーズ調査の分析から、ショートステイのニーズの高さとその特徴、介護保険サービス申請者および利用者の特徴、高齢者の生活場所による状態像の違いを明らかにし、学会発表、論文作成を行った。②老人保健施設協会の協力のもと、施設ケアにおけるスッタフの数や取り組み態度とケアの質に関わるアウトカム評価との関連を明らかにし、論文投稿した。また、施設ケアにおける終末期のスッタフの取り組みとその効果に関わる調査・分析を行った。③⑤つくば市医師会の事例検討会への定期的に継続参加、および地域の在宅診療医師との研究会を開催し、現場の実情と大学での研究を情報交換することで、医師のカンファランス参加が少ない実態・理由や、主治医2人体制の実現に向けた課題、医療介護連携に有用な地域連携ノートの活用方法を協議した。また、これまでに行われてきた事例検討会の8年分の記録をデータベース化し、問題点の類型化と解決率を算出し、学会発表を行い、論文投稿準備中である④文京区医師会との連携のもと、主治医意見書を閲覧し実態調査を行った。かかりつけ医機能を担う地域の医師に比べ、大病院の医師が書く主治医意見書の記載内容が十分ではないことを明らかにし、学会発表および論文作成を行った。また、この結果を文京区医師会所属の現場の医師にフィードバックする講演会を行い、意見交換の中から、医師、行政、患者相互の意思疎通の不足を各立場から認識した。法医学との共同研究では、日本公衆衛生学会において自由集会を開催し、地域在宅医療と異状死届け出のあり方について議論した。また、高齢者の孤独死と家族の関係を示した論文を国際誌に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当研究の申請期間1年目である今年は、大学と現場との協同をはかる上で、つくば市医師会、つくば市の在宅診療医師、つくば市高齢福祉課、文京区医師会、老人保健施設協会等、各現場の団体と共に調査・研究を進め、より密な関係性を築くことができた。具体的研究課題として掲げた5課題においては、①ショートステイのニーズについて、詳細なニーズ分析を行い、ショートステイ希望者の実態を明らかにした。学会発表を行い、論文執筆中である。②施設ケアにおけるスタッフの態度と利用者のアウトカムとの関連について明らかにし、学会発表および論文投稿した。また、施設における終末期ケアに関わるスタッフの仕事満足度や仕事への意欲について実態調査を行った。③医師のカンファランス参加の促進④かかりつけ医師と病院医師の2人主治医制の実現⑤地域連携ノートの活用については、つくば市医師会や文京区医師会、またつくば市の在宅診療医師らと連携し、現場の意見を情報共有することで、それぞれの実態を把握し、改善に向けた方策を検討した。④については、文京区協力のもと、主治医意見書を閲覧、データベース化し、実態を明らかにした。学会発表を行い、論文執筆中である。上記の5課題以外にも、地域包括ケアの要でもある在宅ケアや介護保険の評価について、これまでの実績をもとに国際誌に論文発表を実現し、法医学との連携でも高齢者孤独死について国際誌に発表することができた。これらの内容を学会の自由集会や現場との意見交換の場で共有できたことは、大学としての大きな成果であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、密となった現場との関係の中で、各研究における現場の実態をさらに深掘りしていく。①つくば市において高いニーズが明らかとなったショートステイに対し、行政によるショートステイ事業導入に向けた政策提言を行うため、他行政の先行的取り組み実態を調査する。②引き続き老人保健施設協会の協力を得て、施設におけるサービス評価を行う。また施設における終末期ケアのスタッフの態度について分析を進める。③つくば市医師会による事例検討会の記録を、大学のノウハウにより、他職種が検索可能なデータベースを作成し、現場へ還元する。また、つくば市の在宅診療医師との研究会を定期的に行い、現場および研究双方に取り入れていく。その中で、医師のカンファランス参加の実態を把握し、参加促進の要因を提言する。④引き続き文京区医師会の協力を得て、明らかにした主治医意見書の実態から、今後のかかりつけ医・主治医意見書を記載する医師の望まれる姿を示す。⑤地域連携ノートの活用を含め、医療・介護の連携がうまくいかない理由と連携に向けた希望をケアマネージャーへ実態調査を行う。これら、初年度に明らかにした課題を引き続き論文に発展させるとともに、これらの知見をより一般化できるよう全国データの分析をも加えて行う予定である。具体的には、これまで、一部しか活用できていなかった介護レセプトの全国データ、国民生活基礎調査の大規模データの目的外使用を申請することとした。このため、データ工学の専門家を研究分担者に追加し、大規模データの効率的な利用を図る。介護レセプトの給付実績から、サービス種類別利用の男女差、サービス利用における生活保護者の実態、ケアマネージャー所属法人とサービス提供法人の関連等を明らかにする。国民生活基礎調査からは、腰痛に関する高齢者受療の実態等、地域包括ケアが対応するべき課題を広くを明らかにする予定である。
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Research Products
(21 results)