2012 Fiscal Year Annual Research Report
次世代シークエンサー・包括的エピゲノム解析による肝癌多段階発癌責任遺伝子の同定
Project/Area Number |
24249068
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
高山 忠利 日本大学, 医学部, 教授 (30280944)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
緑川 泰 日本大学, 医学部, 助教 (10292905)
堤 修一 東京大学, 先端科学技術研究センター, 准教授 (30345152)
辻 真吾 東京大学, 学内共同利用施設等, 助教 (80431823)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 肝細胞癌 / 次世代シークエンサー / 包括的メチル化解析 / 統合解析 / 発癌メカニズム |
Research Abstract |
発癌は遺伝子異常の蓄積により進行する多段階発癌であり、肝細胞癌は慢性肝疾患に発生して早期肝癌から進行肝癌へと進展する。 早期肝癌40例、進行肝癌100例及びそれぞれの背景肝に対してエクソームシークエンスを行い、各段階で変化する発現異常、遺伝子配列変化について解析して発癌メカニズムの検討を行った。 リード数、腫瘍含有率及び塩基の変化で早期肝癌と進行肝癌の間で差はなかった。塩基配列の変化ではβカテニンとp53の経路で高頻度に突然変異があり、早期肝癌と進行肝癌で有意な差は認められなかった (βカテニン: 25.7 vs 41.7%、p53: 32.8 vs 43.7%)。一方で、ARID1A+ARID2では早期肝癌で5.4%、進行肝癌で21.9%と進行肝癌で塩基配列の変化が有意に高頻度で認められた。 βカテニンとp53の経路では早期肝癌の段階からすでに変異が認められる一方で、進行肝癌と比較して早期肝癌では遺伝子変化が少な遺伝子群も存在し、肝癌多段階発癌における遺伝子異常を反映していた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに当初予定していた早期肝癌40例、進行肝癌100例についてエクソームシークエンスを施行することができ、バイオインフォマティクス技術によりシークエンスデータを解析可能とするパイプラインを構築することにより肝発癌時および肝癌進展において生じる塩基配列の変異を明らかにすることができた。結果としてはβカテニン及びp53の経路など予想されたパスウェイの変化については早期肝癌でも生じていることが確認された。一方でクロマチンリモデリングであるARIDについては早期肝癌では変異が生じず、進行肝癌のみに起きている変異であることが明らかとなり、従来の知見の確認に加え新しい知見を得られることができた。これらの結果については平成25年度以降でおこなわれるRNAシークエンスおよびメチル化解析と合わせて肝発癌メカニズムを明らかにする上で有機的に統合解析してゆく基礎データとなるものであり、その土台を1年間で構築できたことで平成24年度の研究目的をおおむね達成できたと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
エクソーム解析で得られた塩基配列の変異に加えて、エクソームシークエンスで用いたのと同一の検体を用いてRNAシークエンスにより発現値の変化・転座についてのデータを解析する。これらのデータの統合解析についてはiCluster及びNetHikeによる解析が有用であり、実際にゲノム変化を伴う遺伝子に加えて、次世代シークエンサーによる解析では変化を捉えられなかった遺伝子が発癌のパスウェイの中心に位置している可能性がある。これらの遺伝子についてはSNPアレイによるコピー数解析やメチル化アレイによるプロモーター解析を行う予定である。また、繰り返し生じる転座についてはその遺伝子が新規分子標的治療薬のターゲット遺伝子となる可能性があり、このような遺伝子の転座の頻度を解析するために上記の140サンプルとは別の肝細胞癌サンプルを用いてサンガー法によるシークエンス、PCRなどによりさらに多数のサンプルで検索を行う予定である。以上のように分子生物学的な実験に加えてバイオインフォマティクスによる解析が次年度の解析の中心となる。
|