2012 Fiscal Year Annual Research Report
個別化医療をめざした加齢黄斑変性に対するゲノム疫学研究
Project/Area Number |
24249083
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
石橋 達朗 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30150428)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 康博 九州大学, 大学病院, 助教 (20380389)
久保 充明 独立行政法人理化学研究所, その他部局等, 研究員 (30442958)
吉田 茂生 九州大学, 大学病院, 講師 (50363370)
江内田 寛 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00363333)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 加齢黄斑変性 / 危険因子 / 遺伝子多型 / 環境要因 |
Research Abstract |
・疾患感受性遺伝子多型と環境要因の交互作用のスコア化による発症前予測の定量化 我々が過去に報告した日本人滲出型加齢黄斑変性患者のゲノムワイド関連解析(Arakawa S. Nat Genet,2011)に参加した対象者から、65歳以上の患者群 716名、対照群 706名を本研究の対象とした。また、解析に用いる疾患感受性遺伝子多型のマーカーとして、2011年度までに加齢黄斑変性発症との関連が報告され再現性が確認された11個の一塩基多型(以下SNP)を評価の対象とした。過去に報告したゲノムワイド関連解析で遺伝子型の判定に使用したillumina社HumanHap610-Quad BeadChipには11個のSNPのうち5個のSNPが搭載されておらず、これらのSNPについてはMultiplexPCRを併用したインベーダー法にて個人の遺伝子型を新たに同定した。このうち、3個のSNPは今回の対象者では有意な関連は示されなかったため、それらを除いた8個のSNPを最終的に評価の対象に用いることとした。 疾患感受性遺伝子多型のマーカーである8個のSNPと、環境要因において危険因子として知られている年齢、性別、喫煙情報を加えた計11個の危険因子について、ロジスティック回帰分析を行いそれぞれの回帰係数を算出した。さらに、得られた回帰係数により各因子の発症における重みをスコア化し、それらを加算することにより遺伝要因と環境要因を包括した個人におけるリスクスコアの算出を終了した。 ・TNFRSF10B誘導性脈絡膜血管新生の分子機序の解析 heterozygousのTNFRSF10B遺伝子欠損マウス(KO)に対し胚移植による清浄化を行った後、九州大学医学研究院附属ヒト疾患モデル研究センター医学研究院動物実験施設のSPFマウス飼育室に搬入した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
・疾患感受性遺伝子多型と環境要因の交互作用のスコア化による発症前予測の定量化 過去に報告したゲノムワイド関連解析で遺伝子型の判定に使用したillumina社HumanHap610-Quad BeadChipには、今回の評価の対象とした加齢黄斑変性の疾患感受性遺伝子多型のマーカー11個のSNPのうち5個のSNPが搭載されていなかったため、新たに遺伝子型を同定する必要があり時間を要した。久山町住民の追跡データを用いた解析は既に開始しており、現在結果をまとめている段階である。 ・TNFRSF10B誘導性脈絡膜血管新生の分子機序の解析 heterozygousのTNFRSF10B遺伝子欠損マウス(KO)の清浄化を行った後、九州大学医学研究院附属ヒト疾患モデル研究センター医学研究院動物実験施設のSPFマウス飼育室に搬入するための事務的手続きが予想外に時間を要した。KOを確認するためにマウスtailからDNA抽出を行い、PCRにてgenotypingを行ったところheterozygousのKOマウスは得ており、homozygousのKOマウスの作成は予定通り可能であると思われる。 疾患感受性遺伝子多型と環境要因の交互作用の研究はほぼ予定通りに進行したが、TNFRSF10B誘導性脈絡膜血管新生の分子機序解析はモデル作成にいたっておらず、予想より遅延した。したがって全体として達成度はやや遅れているとした。
|
Strategy for Future Research Activity |
・疾患感受性遺伝子多型と環境要因の交互作用のスコア化による発症前予測の定量化については、現時点で、疾患感受性遺伝子多型と環境要因を包括したリスクスコアの算出が終了しており、久山町住民の追跡データを用いて、一般住民におけるスコアモデルの再現性と妥当性の評価を現在行っている。これらの評価の後、本研究の成果は英文誌への投稿を予定している。あわせて国内および国際学会においても報告する予定である。また、我々が以前同定した2つの疾患感受性領域(Arakawa S. Nat Genet,2011)の検証も行う。加齢黄斑変性の各病型における遺伝子多型の影響について明らかにするため、日本人典型加齢黄斑変性とポリープ状脈絡膜血管症の二つの病型についてそれぞれゲノムワイド関連解析を行う。前回のゲノムワイド関連解析に用いた約50万個のSNP情報が得られている827人の滲出型加齢黄斑変性患者のうち、すでに病型診断が得られている典型加齢黄斑変性296人とポリープ状脈絡膜血管症約476人を選別する。またそれぞれ約3,000人の健常者を対照群に用いる。予備的な結果では、過去に加齢黄斑変性との関連が示されている領域においては、二つの病型で同様な関連を示すことが示唆されている。さらに、それぞれの病型に特異的な関連を有するSNPを同定することを目的に、これまでに加齢黄斑変性との関連の報告がなく、今回のゲノムワイド関連解析で強い関連がみられたSNPについて再現性を確認するため、滲出型加齢黄斑変性患者約2,000例を臨床情報からそれぞれの病型に分け、各病型のゲノムワイド関連解析の追試研究を行う予定である。 ・TNFRSF10B誘導性脈絡膜血管新生の分子機序の解析 homozygousのKOマウスを繁殖後、レーザー照射により脈絡膜新生血管を誘導し、研究実施計画に沿って解析を進める予定である。
|