2012 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノミクスとセロミクスを用いた小児腫瘍の分子標的探索―がん幹細胞を標的として―
Project/Area Number |
24249084
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
檜山 英三 広島大学, 自然科学研究支援開発センター, 教授 (00218744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金輪 真佐美(福永真佐美) 広島大学, 自然科学研究支援開発センター, 助教 (00284208)
升島 努 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 教授 (10136054)
小倉 薫 広島大学, 病院, 講師 (10346653)
外丸 祐介 広島大学, 自然科学研究支援開発センター, 教授 (90309352)
上松瀬 新 広島大学, 病院, 病院助教 (90569881)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 癌 / 遺伝子 / ゲノム / マイクロアレイ / トランスレーショナルリサーチ |
Research Abstract |
既に病理分類と予後調査が完了した神経芽腫と、肝芽腫、腎芽腫を含む約1000例余のうち、治療前の初代培養にて腫瘍細胞のみ選別されている140検体と樹立株23株とし、本年度は神経芽腫と肝芽腫を中心に解析した。 神経芽腫、肝芽腫の初代培養細胞12検体、細胞株12株を用いて、ヒトテロメラーゼの触媒部分であるTERTと表面抗原CD133、CD44、CD34、UVのSP(side population)分画を指標に現有のセルソーターにて幹細胞分画を濃縮した。細胞株によっては、SP分画とCD44, CD134の発現が異なる細胞株と一致する株があり、必ずしもSP分画が同一の性質ではなかった。初代培養細胞の12検体中10検体はSP分画の採取が困難であった。分離したSP分画細胞を再度培養し、ソーティングを繰り返した。得られた細胞のin vitroのコロニー形成能、免疫不全マウスでの腫瘍形成能を確認したところ、細胞株7株から濃縮したSP分画は100個の細胞でも腫瘍を形成し、癌幹細胞分画と考えられた。そこで、一細胞解析(セロミクス解析)でSP分画のないがん細胞と濃縮SP分画のがん幹細胞の間で、細胞内液を直接吸引して直接試料分析にかけて網羅的に蛋白発現を解析したところ、がん幹細胞と通常初代培養がん細胞に特異的に発現する蛋白をそれぞれ130、約200近く抽出した。さらに、アレイを用いたゲノム解析にて、幹細胞、がん幹細胞分画の解析を追加し、変異や異常の集積領域を抽出した。また、全エクソン用プローブを用いて次世代シークエンサーでがん幹細胞に特異的な遺伝子変化について検討して特異的な遺伝子変化の検索を行ったが、7株に共通した遺伝子変化領域を19番染色体に見出した。さらに、現在、miRNAを含めた非翻訳RNA、遺伝子発現変化、メチル化をについて、次世代シークエンサーで検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小児固形がんのうち、治療前の初代培養にて腫瘍細胞のみ選別されている140検体と樹立株23株を対象に検討を3年間で行う計画であり、初年度はすでに病理分類と予後調査が完了している神経芽腫と肝芽腫を中心に解析し、セルソーティングにてがん幹細胞分画の抽出がほぼ安定的に分離回収でき、さらに、予後良好である症例の初代培養細胞では幹細胞分画がほとんど存在しないことも明らかになった。これらは、分離した分画のコロニー形成能、免疫不全マウスでの腫瘍形成能から、明らかにがん幹細胞と考えられる分画であり、期待された成果と考えられる。さらに、予定したゲノミクスとセロミクスから、がん幹細胞分画の遺伝子変化や特異的蛋白の発現を見出すところまで達することができている。次世代シークエンサーによるmiRNAを含めた非翻訳RNA、splicing variantなどの遺伝子発現変化、メチル化のデータ解析の結果をまとめるところまで至っていないが、これらは次年度以降に継続して行う予定であったためほぼ予定通りに遂行できていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に確立したがん幹細胞分画技術を用いて、腎芽腫や横紋筋肉腫などの腫瘍についても検討を行い、必要に応じて腫瘍バンクからの供給を依頼する。昨年度に引き続き、次世代シークエンサーによるmiRNAを含めた非翻訳RNA、splicing variantなどの遺伝子発現変化、メチル化のデータ解析から、癌化や進展に関わるシグナルパスウェイを明らかにし、診断・悪性度の層別化あるいは治療に応用できるがん幹細胞の分子標的候補を選別する。これらを候補分子標的について、臨床検体を用いて定量RT-PCRや免疫染色で検討し、各症例の年齢、臨床経過、予後との相関を検討する。さらに、これらの分子標的の抗体や阻害剤投与あるいはsiRNAを培養細胞に投与して、セロミクス(一細胞解析)による解析システム(セルテスティング)を構築する。このシステムでは、分子標的への治療薬(抗体、阻害剤)を細胞株に濃度依存性に投与し、その継時的な細胞内代謝の変化を一細胞解析にて検討して、薬剤の有効血中濃度を決定し、正常細胞への反応から同時に副作用について検証し、この薬剤スクリーニングのセルテスティングのシステムを確立する。また、アニマルテスティングシステムとして、免疫不全マウスに作成した腫瘍に対して、抗体、阻害剤、siRNAの全身あるいは局所投与による効果判定と安全性の評価を開始する。これらの検討において、個々の腫瘍に有効な薬剤が選別できる前臨床試験システムとしてのセロミクス、ゲノミクスシステムの確立をめざす。さらに、診断時、治療経過中に保存した血清、尿を用いて、分子標的遺伝子の産物あるいはCellomics解析からえられた特異的な代謝産物を測定し、その中から診断、治療効果判定、さらに再発への有効なバイオマーカー探索を開始する。これらから、新たな分子診断法と分子標的療法への応用の基盤を確立に向けて検討する。
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Research Products
(69 results)