2012 Fiscal Year Annual Research Report
変革期のイスラーム社会における宗教の新たな課題と役割に関する調査・研究
Project/Area Number |
24251008
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Tokyo International University |
Principal Investigator |
塩尻 和子 東京国際大学, 国際交流研究所, 教授 (40312780)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柏木 健一 筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 助教 (00447236)
吉田 京子 東京大学, 人文社会系研究科, 助教 (00503872)
岩崎 真紀 筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 助教 (10529845)
青柳 かおる 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (20422496)
辻上 奈美江 東京大学, 総合文化研究科, 特任准教授 (30584031)
臼杵 陽 日本女子大学, 文学部, 教授 (40203525)
宮治 美江子 東京国際大学, 国際交流研究所, 名誉教授 (40239405)
菊地 達也 神田外語大学, 外国語学部, 准教授 (40383385)
根本 和幸 東京国際大学, 国際関係学部, 講師 (40453617)
泉 淳 東京国際大学, 経済学部, 准教授 (70337476)
池田 美佐子 名古屋商科大学, コミュニケーション学部, 教授 (80321024)
四戸 潤弥 同志社大学, 神学部, 教授 (80367961)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | イスラーム / 宗教と社会 / 民衆蜂起 / 宗教法と現代 / イスラーム倫理 / 国際関係 / 宗教間対話 / 欧米のイスラーム |
Research Abstract |
本科研プロジェクトは、社会変革期を迎えているイスラーム世界における宗教の課題と役割を検討し、市民宗教としての社会の統合理念となる新たな役割を検討する目標を実施するために、研究代表者および分担者はそれぞれの専門とする国・地域を実地調査するとともに、イスラームだけでなくマイノリティの宗教状況についても調査を実施する。 その目的のために、本年度は代表者はエジプト、分担者の菊地はヨルダン、トルコへ、四戸は中国へ、辻上はエジプト、宮治はアルジェリア、根本はオランダ、ポルトガル、泉はアメリカ、吉田と青柳はイギリス、岩崎はエジプト、フランスへ出張した。これらの成果は科研のウェブサイトでも公表している。 初年度の24年度には2回の公開講演会を開催し、ロンドンからレオ・ベック大学前学長ジョナサン・マゴネット先生を招聘して、東京大学・立教大学との共催で講演会を実施した。第2回目の講演会には二人の若手研究者、リビアのアヘット・ナイリ博士とタジキスタンのズバイドゥロ・ウバイドゥロエフ博士を招へいし、リビアと中央アジアのイスラーム社会の変化について講演していただいた。12月はじめの土曜日であったが、50名を超える参加者があり、熱心な質疑応答が続き4時間を超える盛会となった。 また研究者相互の研究会を2回、東京国際大学国際交流研究所で開催し、四戸、青柳、宮治の3名の分担者が研究発表と出張報告をおこなった。2013年2月の研究会にはフランス国立科学研究所のアイーダ・ザハル博士をお招きして、レバノンの結婚事情について専門知識を披露していただき、知られざる地域の社会的宗教的慣習を学ぶことができた。研究期間内に少なくとも2 冊の研究成果を刊行する予定であるが、24年度は研究拠点である国際交流研究所の報告書『IIET通信46号』(A4判90頁、100部)に科研研究者の研究論文と出張報告を掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(理由)海外調査・研究の科学研究費であり、海外調査を重点的に行うことは当然であるが、13人の研究組織のうち、初年度において10人(通算14件)が海外調査に従事したことは、研究が順調に進展していることを示している。 中東地域では、民衆蜂起から2年目を迎え、社会が大きく変動する時期に当たったことも、本研究を推進させるためには好機でもあった。民衆蜂起後のエジプトには岩崎、辻神、塩尻、が現地調査を行い、民主化の過程とイスラーム回帰現象を調査研究した。さらに、イスラーム社会のマイノリティの調査研究や、リビア空爆の国際法からの検討会議参加、中国のモスク調査からイスラーム政策の再検討、など、これまで触れられなかった側面に関しても、ユニークで重要な研究成果があった。 2回の公開講演会についても、6月には、ロンドンのレオ・ベック大学前学長のマゴネット先生を招聘して講演会を開催したが、12月には、リビアとタジキスタンから新進気鋭の若手研究者2名を招聘して、斬新な見解を学ぶことができたこと、さらに2回の内部研究会を開催した点なども、研究の進展が充実した初年度であったことが理解できよう。特に2月の研究会においては、フランス国立科学研究所のアイーダ・ザハル博士を迎えて、レバノン社会の結婚をめぐる実態に関してともに学んだことは、得難い機会となった。同時に実施した宮地による綿密なアルジェリア調査報告も、危険を伴う時期の直前であったが、国内の部族対立とその融和にかかわる貴重な聞き取り調査を行い、現地において長年の知己を得ている研究者にしかできない優れた研究報告となった。 研究従事者13人の1年間の学術業績が、雑誌論文26件、学会発表9件、図書16件という数量に達していることからも、進展の度合いが認識できる。なお、研究代表者は24年度、14回を超える市民講座や公開講演会を受け持った。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に続いて、社会の変革期を迎えているイスラーム世界の宗教、政治、国際関係などを調査検討し、現実社会の中で何が起きているのか、人々の心理や期待、新政権を支える体制や宗教復興現象、欧米のイスラーム移民社会の現実と将来像、マイノリティの現状調査などを、現地調査をもとにして研究し、本科研の中心的テーマである「市民宗教」の実態と変遷を検討する。 25年度は北アフリカ諸国、イスラエル、ヨルダンをはじめ、カタル、バハレーンなどの湾岸諸国、中央アジア、アメリカやヨーロッパを調査する。さらに、昨年度に引き続いて、エジプト、リビア、中国、台湾、韓国なども調査を継続する。 イスラーム教徒の移民が急増しているヨーロッパ各地やアメリカの宗教的動向を調査するとともに、イスラーム地域以外で開催されるセミナーや研究会(アメリカなどを予定)にも参加する。 25年度は研究者相互の研究会を少なくとも2~3回、開催する予定である。また6月に、ユダヤ教、キリスト教、イスラームの研究者を内外から招聘して、「宗教間対話:イスラーム理解」をテーマに公開シンポジウムを開催する。12月にはハーヴァード大学のWilliam Graham教授(クルアーンの世界的研究者)を招聘して、公開講演会を開催する予定である。内部研究会には年間3回を予定し、出張報告も行い、分担者相互の意見交換を活発化させる。内部研究会にも、海外から適切な研究者を招聘する予定である。 なお、研究推進の密度をあげるために、25年度から分担者一人を入れ替えて、新たに文化人類学の専門家を加え、海外調査地域を拡大して、25年度以降のさらなる進展にむけて努力する。
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