2013 Fiscal Year Annual Research Report
変革期のイスラーム社会における宗教の新たな課題と役割に関する調査・研究
Project/Area Number |
24251008
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Tokyo International University |
Principal Investigator |
塩尻 和子 東京国際大学, 国際交流研究所, 教授 (40312780)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 京子 神田外語大学, 外国語学部, 講師 (00503872)
岩崎 真紀 筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 助教 (10529845)
青柳 かおる 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (20422496)
辻上 奈美江 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (30584031)
臼杵 陽 日本女子大学, 文学部, 教授 (40203525)
宮治 美江子 東京国際大学, 国際交流研究所, 名誉教授 (40239405)
菊地 達也 東京大学, 人文社会系研究科, 准教授 (40383385)
根本 和幸 東京国際大学, 国際関係学部, 講師 (40453617)
泉 淳 東京国際大学, 経済学部, 准教授 (70337476)
池田 美佐子 名古屋商科大学, コミュニケーション学部, 教授 (80321024)
四戸 潤弥 同志社大学, 神学部, 教授 (80367961)
植村 清加 東京国際大学, 人間社会学部, 講師 (30551668)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | イスラーム / 宗教と社会 / 民主蜂起 / 宗教法と現代 / イスラーム倫理 / 国際関係 / 宗教間対話 / 欧米のイスラーム |
Research Abstract |
本科研プロジェクトは、変革期のイスラーム社会における宗教の新しい課題と役割に関する海外調査研究をテーマとするものであり、25年度は2年目となった。25年度は、代表者の塩尻は、カタル、アメリカ、チュニジア、トルコと4か国に出張した。カタルでは第10回ドーハ宗教間対話会議、アメリカでは国際ヒズメット運動平和構築会議に参加して、司会などを務めた。チュニジアでは第14 回チュニジア‐日本 文化・科学・技術学術会議(TJASSST)で人文系のセッションで基調発表を行い、トルコではスレイマン・シャー大学で講演を行った。いずれの場合も司会や講演をおこなったのは「日本人としては初めて」となり、研究者との意見交換も有意義であった。分担者も池田・宮治・岩崎がチュニジアで開催されたTJASSSTに参加し、四戸は中国、オーストリア、オマーンへ、辻上はエジプト、植村はフランス、岩崎もトルコなど、10名が積極的に海外調査に出かけた。 25年度には、6月に4人の外国人研究者(ユダヤ教からジョナサン・マゴネット先生、イスラームからハージェル・ベンハッジュサレム先生、サミール・ヌーハ先生、キリスト教からリアナ・トルファシュ先生)を迎えて、公開講演会を開催し、60名を超える聴衆を集め、熱心な質疑応答が4時間半も続いた。第2回公開講演会に招聘を予定をしていた学者の事情により、来日が叶わなかったために、12月に科研内部の研究会を催した。したがって、25年度は公開講演会1回、東京国際大学国際交流研究所において、研究会を3回(7月、12月、3月)実施し、計6名が研究発表を行った。 25年度の研究発表及び研究論文と出張報告は、ホームページ(http://www.tiu.ac.jp/org/iiet/kaken-a-islam/)に公開するとともに、研究発表と論文は『IIET通信第47号』(国際交流研究所報告、2014年3月31日発行、150頁)に掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2年目を迎えて、代表者も分担者も、積極的に海外調査に赴き、海外で開催される国際会議に参加、現地の専門家と意見交換を活発に行い、大きな成果を得ている。3年前に北アフリカから始まった民主化運動も、政権交代は成功したものの、民主的で安定した社会を築くことができず、反対に強硬派のイスラーム集団が台頭してきている。シリアはいまだに不安定で内戦が続いている。そのような現状の中で、市民宗教のモデルとして、今年度の後半は、トルコを視野にいれて、調査をおこなったが、この点も有益な研究となった。また四戸による中国ムスリムの研究も継続されており、26年度には中国からムスリム研究者を招聘する予定となった。 6月に4人の外国人研究者の一人として招聘したベンハッジサレム先生の発表は日本語に翻訳して『IIET 通信』にも掲載したが、まだ、マスコミも触れていないチュニジアの宗教回帰の問題を直接、伺うことができたことは、有益であった。また12月の研究会で、菊地によるシリアのシーア派(アラウィ派)とドルーズ派についての研究発表は、現実のイスラーム社会を研究する上で、極めて有益であった。このような成果から、本科研は当初の計画以上に進展していると見ることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度は、民衆蜂起後3年を経て、変革期の方向性が定まらないイスラーム社会を冷静に分析するとともに、穏健な民衆的宗教運動が政府との軋轢となっているトルコに注目をして、トルコ社会の分析を他のイスラーム社会の動向と対比する研究も発展させる。その観点から、世界的に注目を集めているヒズメット運動について、調査研究を行い、変革期のイスラーム社会に与える影響について、調査する。また、政治的情勢にもよるが、パレスティナやイスラエルを調査することも予定している。イスラーム教徒移民が増加しつつあるヨーロッパの調査も引き続き行う。 2014年9月に同志社大学で開催される日本宗教学会学術大会において、本科研に「特別パネル」の構成が依頼されたために、トルコからアドナン・アスラン教授を招聘することにしている。アスラン先生の滞在中に、本科研の研究会も開催する。 残り2年となった研究の更なる推進のために、新たに分担者2名(北アフリカ経済専門家とパレスチナ文化研究者)を加え、謝金雇用でアジアのイスラーム社会研究に強い若手研究者を雇用することにする。来年度が最終年度となることを予測して、研究の精度と進度をさらに加速するように努力する。
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