2014 Fiscal Year Annual Research Report
変革期のイスラーム社会における宗教の新たな課題と役割に関する調査・研究
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24251008
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Research Institution | Tokyo International University |
Principal Investigator |
塩尻 和子 東京国際大学, 国際交流研究所, 教授 (40312780)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 京子 神田外語大学, 外国語学部, 講師 (00503872)
岩崎 真紀 筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 助教 (10529845)
青柳 かおる 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (20422496)
植村 清加 東京国際大学, 商学部, 講師 (30551668)
辻上 奈美江 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (30584031)
臼杵 陽 日本女子大学, 文学部, 教授 (40203525)
宮治 美江子 東京国際大学, その他部局等, 名誉教授 (40239405)
菊地 達也 東京大学, 人文社会系研究科, 准教授 (40383385)
根本 和幸 東京国際大学, 国際関係学部, 講師 (40453617)
泉 淳 東京国際大学, 経済学部, 教授 (70337476)
池田 美佐子 名古屋商科大学, コミュニケーション学部, 教授 (80321024)
四戸 潤弥 同志社大学, 神学部, 教授 (80367961)
上山 一 筑波大学, ビジネス科学研究科(系), 助教 (80626226)
田浪 亜央江 大阪経済法科大学, アジア太平洋研究センター, 研究員 (70725184)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 宗教学 / イスラーム社会研究 / イスラーム思想研究 / 現代中東事情 / 市民宗教 / 紛争解決 / 宗教間対話 / 比較宗教学 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年目となった26年度には、代表者の塩尻は、11月中旬にウィーン、アンマン、カイロへ出張をした。ウィーンではキング・アブドゥッラー・宗教間・文化間対話・国際センター(KAICIID)が主催する対話会議に出席し講演を行った。エジプト・カイロではカイロ大学文学部日本語学科創立40周年記念シンポジウムに招聘され、1時間の研究発表を行った。 研究分担者の池田美佐子は8月にトルコのアンカラで開催された世界中東学会に参加し研究発表をおこなった。植村清加は8月から9月にかけてフランス各地でムスリム系移民の識調査をおこなった。四戸潤弥はエジプト・カイロ大学で開催された、同志社大学一神教学際研究センターとカイロ大学東洋学研究センターの共同主催による第3回国際会議に参加し、アラビア語で研究発表を行った。そのほか、宮治美江子、臼杵陽、辻上奈美江、上山一、岩崎真紀も科研費を使用して、計9名が海外出張を行い研究論文などまとめた。 26年度は、3名の外国人研究者を招聘した。9月にはトルコからアドナン・アスラン教授、中国から哈宝玉教授を招聘し、公開講演会を実施した。11月にはチュニジアからムニーラ・シャプトー先生を招聘して、”Tunisian Women during the transition's days”のテーマで公開講演会を開催した。いずれも盛会に終始した。内部の研究会も6月と3月に実施し、6月にはジョナサン・マゴネット先生にご発表をお願いした。 26年度の研究発表および研究論文、出版報告の業績報告は、ホームページ(http://www.tiu.ac.jp/org/iiet/kaken-a-islam/)に公開するとともに、研究発表と論文は研究拠点の東京国際大学国際交流研究所の紀要『IIET通信第48号』(2015年3月31日発行、143頁)に掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
3年目の26年度は、海外出張を実施したのは、15名中9名にとどまったが、15人全員が充実した研究を実施した。『IIET通信48号』には、講演会のために招聘した研究者3名と、特別研究員1名を加えて、計11編の論文・研究ノートを掲載することができた。26年度は、4年前に北アフリカで発生した民衆蜂起後のイスラーム国家・地域の政情が安定せず、各地で暴動や混乱が増大する中で、「イスラーム国」による人質事件やシリアでの内戦がますます激化した時期にあたった。本科研のプロジェクトを開始した際に不安視していたことが現実の問題となり、「市民宗教としてのイスラーム」の姿が、予想外に変化し始める時期にあたった。しかし、着実にアカデミックで客観的な立場で研究を進めることによって、本科研の立場は揺らぐことはなく、大きな変化にも十分に対応できたと確信する。本科研の業績は、冷静な判断で本来の基盤的研究を継続することが、変革期のイスラーム研究に対応することができることを、改めて示したものである。 また、本科研の社会への貢献については、代表者及び分担者によって、20件を超える市民集会や一般向けの講演や講義を引き受け、現代イスラーム社会の諸問題に対応したことも、報告しておく。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度は本科研の最終年度にあたり、研究のまとめを目指すとともに、研究業績を社会に還元するという、当初からの研究目的を達成する。 本研究プロジェクトは、これまで十分に研究されてこなかったイスラーム社会の「市民宗教」としての宗教の役割を調査・検討し、民主化の普及と同時に過激なイスラーム運動を引き起した現在のイスラーム社会の変革状況を海外調査をもとに研究するものであり、最終年度となった27年度は、シリアとイラクで台頭した「イスラーム国」などの過激派集団の論理について、宗教学的な検討を加えると共に、歴史的にイスラームが目指してきた宗教社会の在り方を、今日の現実社会のありようと比較検討によって、変革期のイスラーム社会の現実を明らかにすることを第一の目的とする。 そのために過激派の論理を慎重に検討すると同時に、世界各地に移住したムスリム移民の現状を調査・検討する。現在のイスラーム社会の変化には、当該地域の信者だけでなく、欧米各地で生活する移民社会にも大きな問題があることが指摘されているからである。一般市民が主役となる民衆蜂起の成功に対する期待感が膨らむ一方で、民主的社会について他の知識が乏しく、また民主主義に不慣れな地域では、復古主義を掲げるイスラーム過激派の進出が著しく、それぞれの地域で不安定要因となっている点についても、それぞれの社会の現状を調査・検討する。 今年度は6月と12月に内部の研究会を、5月と9月に海外の研究者を招聘して公開講演会を開催する予定である。また、最終年度にあたり、これまでの研究成果を世に公表するために科研参加者による共著を出版社から出版することを計画している。
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