2013 Fiscal Year Annual Research Report
血管内治療のためのin vivo流体構造連成解析システムの開発
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24300158
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大島 まり 東京大学, 大学院情報学環, 教授 (40242127)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大石 正道 東京大学, 生産技術研究所, 技術専門職員 (70396901)
保科 克行 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90571761)
山本 創太 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (80293653)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ステントグラフト / 動脈瘤 / 接触解析 / 流体構造連成解析 / 形状モデリング |
Research Abstract |
本研究は、腹部大動脈瘤のステントグラフト血管内治療を対象に、医用画像や計測データから得られた患者個別の情報をもとにin vivoな血流と血管壁およびステントの相互作用を考慮した流体構造連成解析を行うことにより、患者個別に対応した血管内治療を提案することのできるシステムの開発を目的としている。研究は大きく分けて1)医用画像解析、2)構造解析・実験、3)血管内治療シミュレータの構築、の3テーマから成り、最終的にそれらを統合することにより、血流の脈動が血管壁とステントに与える力学的な刺激を解析し、ステントのずり上がりなどを予測できるin vivoシミュレーション・システムを構築する。 2年目の平成25年度は、脈動する血流を想定した流体構造連成解析のフレームワークのもと、研究項目1-2)血管形状変形の時間的・空間的な追跡方法の開発、2-2) ステントの動的力学特性実験、3-2) 流体構連成解析の高速化・3-3) 血流の血管壁とステントに与える影響を考慮した流体構造連成解析の開発を行った。 1-2)血管形状変形の時間的・空間的な追跡方法の開発においては、エネルギー関数を最小化して境界面を推定するSnakesの理論を4次元(空間+時間)に拡張することで実現した。2-2) ステントの動的力学特性実験においては、解析に必要なステントの材料モデルを得るために、実際の治療に用いられているステントを用いて動的力学特性実験を行った。3-2) 流体構連成解析の高速化においては、昨年度に引き続き、強連成に基づく有限要素法の流体構造連成解析プログラムの開発を行い、高速化を実現するためのコードの再編を果たしており、現在、3-3) 血流の血管壁とステントに与える影響を考慮した流体構造連成解析の開発に進みつつある段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目の本年度における達成度もおおむね順調であり、各テーマでさまざまな成果を挙げている。以下に本年度の目標として掲げた事項ごとの成果を述べる。 1-2)血管形状変形の時間的・空間的な追跡方法の開発においては、血管内腔と血管壁の各境界面を推定するために、CT画像から境界情報を抜き出し、その経時変化から内部変形エネルギーとポテンシャルエネルギーで構成されるエネルギー関数を設計した。また、中心線および血管表面の構築にB-Spine関数を導入し、曲率変化の異常値などを適正に保つアルゴリズムを導入した。 2-2) ステントの動的力学特性実験においては、ステントの動的力学特性実験により、材料特性の計測を行った。さらに構造解析ソフトウェアを用いて、血管内腔に設置されたステントが血管の曲げによって血管から外れてしまう現象の再現に成功した。 3-2) 流体構連成解析については、心臓1拍動期に約1週間程度計算時間を要するため、GPGPUを用いて計算の高速化を図っているが、元となるプログラムの精度検証を優先して行う必要があり、多少遅れているが問題ない範囲である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる3年目はほぼ計画通りに研究を推進していく。具体的には以下の項目を行う。 1-3) 臨床からの結果考察:複数の症例に適用し、血流や血管壁の力学的な変化が血管形状の変化にどのような影響を与えているのかをまとめ、手術後の経過予測のための課題をまとめ、検証する。 2-3) 血管壁とステントの動解析:解析に必要なステントの材料モデルを得るために、実際の治療に用いられているステントを用いて動的力学特性実験を行う。実験に必要なグリップや治具を設計し、実験により得られた動的応力―ひずみ関係から材料モデルと材料定数の同定を行う。さらに、境界条件や接触条件を検討し、脈動の繰り返し内圧負荷を模擬した条件下での血管壁とステントの動解析を行い、血管壁とステントの変形特性の違いがステントの移動に及ぼす影響を検証する。 3-3) 血流の血管壁とステントに与える影響を考慮した流体構造連成解析の開発:血流と血管壁の相互作用は強いことから、申請者らは強連成に基づく有限要素法の流体構造連成解析プログラムの開発を行ってきた。このプログラムに対してGPGPUを用いて計算の高速化を図る。GPGPUに関しては構造解析において数百倍から数千倍の高速化が見込まれるが、流体構造連成解析でどれだけの効率化が達成できるか検討する。そして、画像解析と構造解析・実験で得られた知見を流体構造連成解析プログラムに統合し、脈動による繰り返し変形とステントの移動について検証するとともに、動脈・ステント内を流れる血流の影響を評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の交付申請においては、主要な予算として高性能計算サーバ(2,500千円)およびRAIDシステム(1,000千円)の購入を予定していた。計算サーバは流体構造連成解析用にクラスタタイプの大型機の導入を予定していたが、解析の前段階の血管モデル作成において、より高度なパラメータ抽出を行う必要が出てきた。モデル作成に用いるソフトウェアがクラスタのOSであるLinux上では動かないため、Windowsベースのワークステーションを導入した。クラスタ見送りに伴ってデータストレージであるRAIDシステムも導入を見送った。これにより、物品費において約2,500千円の未使用額が生じている。 旅費に関しては、発表に適したセッションが無かったことにより1件の国際学会参加を次年度に見送ったこと、また人件費・謝金については、講師の先生との都合が合わず、インターネット会議で代用したことにより、未使用額が生じた。 平成25年度に達成した流体構造連成解析のプログラム生成においては、現時点では計算効率の最適化および並列化まで達成されておらず、その部分を最終年度である平成26年度に行う。その開発と実装、検証を迅速に行うために、平成25年度に購入を予定していた高性能計算サーバと計算データを蓄積するRAID装置を早期に導入する。計算サーバに関してはここ1,2年のうちに並列化効率の高いGPGPUもしくはマルチコアCPUの価格が低下してきたため、一昨年の購入予定金額よりも低い額での導入を計画している。 旅費に関してはこれまでに多くの結果が得られつつあるため、当初の計画よりも1,2件多い発表を見込んでいる。その他、論文投稿費用などに予算を重点的に配分する計画である。
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Research Products
(14 results)