2012 Fiscal Year Annual Research Report
超偏極希ガス磁気共鳴イメージング法による肺機能診断と前臨床評価系の構築
Project/Area Number |
24300163
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木村 敦臣 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (70303972)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 超偏極希ガス / 生体磁気共鳴計測 / MRI / MRS / 肺機能診断 / 慢性閉塞性肺疾患 / 病態モデル / 前臨床評価 |
Research Abstract |
感度不足という生体磁気共鳴(MRI/MRS)計測に固有の問題を乗り越えるべく、これまで開発を行ってきた連続フロー型超偏極希ガス製造装置の更なる性能向上に成功し、平成24年度において、キセノン由来の生体磁気共鳴信号の約40%増強、即ち5万倍の感度向上を達成した。これは「光ポンピング法にて偏極操作を行う際、希ガスに有機ガスを加えた混合組成として約2-3気圧に加圧し、さらに偏極後希ガスを精製することで感度の基準である偏極率が40%程度(理論値は100%)、即ち感度にして約5万倍にも向上する」との独自の知見に基づき、革新的肺機能診断法開発につながる端緒的な発見であると思われる。 一方、上述の装置改良と並行して、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の病態モデルマウスを作成する手技確立を進めた。マウスのような齧歯類の場合、内因性の抗酸化ビタミン等のため慢性の肺疾患モデル作成は困難であったが、タバコ煙薬液(CSS:Cigarette Smoke Solution)とリポ多糖を組み合わせて気管内投与することで解決でき、COPD薬物療法探索のための有効なモデルである事を確認した。 超偏極希ガスのMRI肺機能診断をタバコ煙薬液誘発ならびに遺伝子改変モデルマウスに適用し、呼吸機能パラメータである換気率(1回の呼吸でどの程度肺中のガスが入れ替わるかを示す指標)、ガス交換率(ガスが肺胞中と血液中とでどの程度入れ替わるかを示す指標)、および灌流(血流速度)の局所定量評価結果をもとにして、特に換気とガス交換率が画像診断指標として有効であることを明らかとした。これらの成果をもとにして、今後COPDモデルマウスに保護薬や治療薬を投与して前臨床評価を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
独自の知見に基づいて同位体濃縮キセノンを使用しなくても当初計画通り偏極率の5倍向上を達成する条件を発見し、超偏極キセノンのMRI肺機能診断の精度向上を図ることできた。また、タバコ煙利用による慢性閉塞性肺疾患(COPD)モデルマウス作成の手技を確立するとともに、換気と拡散に由来する画像診断の有効なバイオマーカーを明らかとし前臨床評価の基盤技術を整備した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の知見をもとにして新たな連続フロー型超偏極希ガス製造装置開発を当初計画に加えて遂行し、感度増強した超偏極キセノンの安定供給体制を確立する。これに基づいて、画像診断における新規バイオマーカーを提言するとともに、革新的MRI肺機能診断および前臨床評価体系を構築してCOPD治療のための新薬探索を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述の通り、独自の知見に基づいて同位体濃縮キセノンを使用しなくても当初計画通り偏極率向上を達成し、高額な希ガスを購入する必要が無くなったために当該助成金が生じた。平成25年度は、新たな連続フロー型超偏極希ガス製造装置開発を予定しており、このために研究費の使用を計画している。具体的には光ポンピングセルの圧力調整装置、および有機ガス分離精製装置の開発である。
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Research Products
(4 results)