2014 Fiscal Year Annual Research Report
超偏極希ガス磁気共鳴イメージング法による肺機能診断と前臨床評価系の構築
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24300163
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木村 敦臣 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70303972)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 超偏極キセノン / イメージング / 肺機能診断 / 慢性閉塞性肺疾患 / 前臨床評価系 |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究課題にて発見した知見に基づいて、新たに偏極希ガス精製装置を加える事で、申請者が開発した連続フロー型超偏極キセノン製造装置の約2倍の性能向上に成功した。即ち、偏極率が20%程度(理論値は100%)、感度にして約2万倍にも向上した偏極キセノン(HPXe)を定常的にマウスに供給しながら、HPXe MRI肺機能診断を遂行する事を可能とした。また、本手法を、たばこ煙薬液(CSS)およびタバコ煙(CS)を用いて作成した慢性閉塞性肺疾患(COPD)モデルマウスに適用し、換気能およびガス交換能において著明な低下をきたすことを、それぞれ1回換気割合(ra)とガス交換率(fD)というバイオマーカーを用いて明らかとすることができた。 平成25年度において、CSSが惹起する病態に対してピルビン酸エチル(EP)が肺胞保護効果を有する事を既に確認していたが、本年度では、たばこ煙(CS)曝露によるCOPDモデルマウスを用いて、COPD誘発後のEPの治療効果を肺機能の経時的変化の観察を通じて、次の通り確認する事ができた。HPXe MRI肺機能診断結果では、CS曝露開始6週時でガス交換能がコントロール群と比較して有意に低下し、換気能は8週時で有意な低下を観測した。また、平均肺胞径(MLI)による病理評価では、CS群において肺胞の構造破壊がみられ、CS曝露によるCOPDモデルマウス作成プロトコルの有効性を確認した。EP群は、CS曝露6週時で低下したガス交換能及び換気能が、EP投与2週後には両群ともにコントロール群と同程度まで回復した。また、MLIにおいてもCS群と比較してEP群で有意な差がみられ、EPの抗炎症効果を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
独自の知見に基づいて、当初計画の通り連続フロー型超偏極希ガス製造装置の性能向上に成功し、約2倍の感度が向上した偏極キセノン(HPXe)を定常的にマウスに供給しながら、HPXe MRI肺機能診断を遂行する事を可能とし、前臨床評価系を構築する事ができた。また、本評価系を用いて、慢性閉塞肺疾患(COPD)の機能診断における有効なバイオマーカーを見出し、この知見に基づいて新たな抗炎症薬の治療効果を確認することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
100%の偏極率を有する超偏極キセノン製造装置を開発し、HPXe MRIの感度を約10万倍に向上させ、革新的肺機能診断手法を開発するとともに前臨床評価系を構築する。本評価系を用いて、肺疾患の新薬探索を行う。
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Causes of Carryover |
平成24年度において「光ポンピング法にて偏極希ガスを製造する際、有機ガスを消光剤として加えて偏極後、精製・分離する事でインビボでの偏極率を約20%に向上できる」との新たな知見を得た。これは、従来の窒素利用による偏極率を2倍に向上させるもので、他に類を見ない発見であったが、精製条件を低温(-100℃)にする必要があり、計画を延長して精製装置を開発する事としたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
プロトタイプの精製装置完成が平成26年度までずれこんだたため、原料ガスの追加購入を平成27年度に行う必要が生じた。未使用額はガス購入に充てる。
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Research Products
(6 results)