2012 Fiscal Year Annual Research Report
キラーおよびヘルパーT細胞をともに活性化するがん免疫療法の開発
Project/Area Number |
24300334
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
西村 泰治 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 教授 (10156119)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
入江 厚 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 講師 (30250343)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | がん免疫療法 / がん抗原 / ペプチドワクチン / キラーT細胞 / ヘルパーT細胞 |
Research Abstract |
強力な抗腫瘍免疫応答を誘導するHLA-II拘束性Th1細胞エピトープの同定(研究担当者:西村、入江)細胞傷害性T細胞(CTL)のみならず、がん抗原特異的なヘルパーT(Th1)細胞をも併せて活性化することは、強力な抗腫瘍免疫を誘導するうえで重要である。本研究では、まずCTLエピトープペプチドを、がん患者に免疫するがん免疫療法の臨床研究で奏功が認められたがん抗原であるLY6KおよびIMP3について、そのTh1細胞エピトープを同定した。まず2種類のがん抗原について、最新のHLA-II結合ペプチド推定アルゴリズムを利用して、日本人集団中で頻度が高いHLA-IIへの結合が期待され、かつそのアミノ酸配列中にCTLエピトープを内包するTh1細胞エピトープを複数推定した。これらの比較的長いペプチド(long peptide, LP)で、日本人集団中で頻度が高い数種類のHLA-II遺伝子を有する健常人、および3名の外科系教授からなる連携研究者の協力を得て入手したがん患者の末梢血単核細胞を刺激することにより、LPに特異的なTh1細胞を誘導できることを確認した。 これらのLPは、樹状細胞による交差抗原提示により、内包されるCTLエピトープに特異的なHLA-A2あるいはA24拘束性のCTLを活性化できることを確認した。さらに、CTLエピトープのみを含むshort peptide(SP)と、これを内包するLPをそれぞれHLA-I Tgmに免疫したところ、SP単独よりもCTLの誘導効率が高いLPが存在し、がん免疫療法におけるLPの有用性が示唆された。また、日本人集団中で比較的に頻度が高いHLA-DR4に拘束されるマウスTh1細胞を誘導する、新規のがん抗原ペプチドの迅速な同定法を、HLA-DR4トランスジェニックマウスを樹立することにより確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CTLのみならず、がん抗原特異的なTh1細胞をも併せて活性化することは強力な抗腫瘍免疫を誘導するうえで重要である。このため今年度は、がん抗原LY6KおよびIMP3由来で既に同定した日本人集団で頻度が高いHLA-II分子に結合して腫瘍免疫を担うTh1細胞を誘導可能なlong peptide(LP)の中から,HLA-A2あるいはHLA-A24拘束性CTLが認識するエピトープを内包するものについて、当該がん抗原特異的にがん細胞を傷害するCTLを誘導できるか否かを検討する計画であった。検討したLPは予想通りに、がん抗原を認識するTh1細胞のみならず、樹状細胞による交差抗原提示機構により、同一のがん抗原を認識するCTLを併せて誘導できることを確認できた。 さらに、CTLエピトープのみを含むshort peptide(SP)と、これを内包するLPをそれぞれHLA-Iトランスジェニックマウス(Tgm)に免疫したところ、SP単独よりもCTLの誘導効率が高いLPが存在することが確認でき、研究計画は順当に達成された。また、日本人集団中で比較的頻度が高いHLA-DR4に拘束される、マウスTh1細胞を誘導する新規のがん抗原ペプチドの迅速な同定法を、樹立したHLA-DR4Tgmを用いて行うことにも成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトiPS細胞より分化誘導した樹状細胞を用いたがん免疫療法の開発(研究担当者:西村) 上記のがん抗原および免疫応答増強分子の遺伝子を強制発現させた樹状細胞を、ヒトiPS細胞から樹立して、in vitroにおける当該がん抗原特異的ヒトT細胞への抗原提示能を十分に繰り返して検証する。さらに、アロ拒絶反応を回避するために、TAP遺伝子を欠損させ内因性のHLA-Iの発現を阻止したうえで、人類集団で頻度が高いHLA-I遺伝子を強制発現させたヒトiPS細胞を作製する。このTAP欠損iPS細胞より誘導した樹状細胞(iPS-Dc)について、アロHLA-I反応性CTLからの免疫逃避と、導入HLA-I拘束性T細胞に対する抗腫瘍免疫応答の誘導能についてさらに詳細に検証し、より有効ながん免疫療法への応用を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の進捗状況に鑑み、平成24年度基金分・570,791円を翌年度に繰越した。この分は翌年度の研究費と合わせて、研究用試薬、プラスチック実験器具、研究用マウス等の購入に使用する計画である。
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