Research Abstract |
本研究の目的は,以下の通りである:南極域を主な活動拠点とするアデリーペンギンは,オゾンホールが発生する南極の春先に,集団で上陸し産卵・育雛を行なう。このため,生体にとって有害な紫外線(B領域の紫外線)の影響を特に眼に受ける可能性がある。本申請課題は,「地球環境の窓」と呼ばれる南極において,生態環境に与えるオゾンホール経由の紫外線の影響評価を目的とし,南極昭和基地周辺のアデリーペンギン営巣地に,持ち運びが可能なラマン散乱分光装置を直接運び込み,生きたペンギン成体の眼組織のリアルタイム分光測定を行なう。このような研究が計画された例は無く,オゾンホール経由の紫外線が生態環境に与える具体的な影響を,世界に先駆けて明らかにし,警告するである。 上記の目的を達成するために,24年度は,ポータブルラマンアナライザーを用いて,鳥眼組織のラマンスペクトル測定が可能かどうか予備実験を開始した。最初に,鳥眼モデルとして摘出した牛眼組織のラマンスペクトル測定を行なったところ,水晶体のコラーゲン分子由来の良好なスペクトルを測定することができた。また,麻酔したマウスの眼のラマンスペクトルが測定可能であることも研究分担者の安藤により確認された。現在,生きた鳥(ニワトリ)の眼のラマンスペクトル測定を25年度から開始するために,飼育設備の立ち上げを行ないつつある。26年度に,南極でのリアルタイムラマンスペクトル測定を行なうために,生きたニワトリによる訓練の準備も併せて進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
砕氷艦「しらせ」が2年連続して,昭和基地への接岸断念したために,昭和基地に関する研究全般に影響が出ている。このため,昭和基地周辺のペンギンコロニーでの実験開始の目処が立たないため,実験実施が26年度になる可能性が高い。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
助成金は,予定通り,その全てをポータブルラマンアナライザー購入に充てた。一方,「しらせ」の接岸断念の影響による実験の一部が取りやめ,又は遅延したため,基金に残余金が発生した。この残余金は,25年度に予定しているニワトリ飼育設備や実験動物購入などにより25年度は速やかに消費される予定である。
|